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マイナンバーカードの保険証利用で負担増のなぜ?背景と理由は?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

マイナンバーカードの保険証利用で負担増のなぜ?背景と理由は?

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政府が積極的に導入を後押ししているマイナンバーカード。マイナンバーカードには、健康保険証の機能を付けることもできます。通称「マイナ保険証」と言われており、マイナンバーカードのさらなる普及のために、政府肝いりで始められた取り組みです。このマイナ保険証を巡ってちょっとした騒ぎになっていることをご存じでしょうか。マイナンバーカードを保険証として使うと、従来の保険証より余計に診療費を払わなければならないのです。なぜこんなことが起こったのでしょうか?

4月から初診料、再診料ともに上乗せ

マイナ保険証への切り替えは、専用ホームページからオンライン申請で行えるため、もう既に、従来の健康保険証からマイナ保険証に切り替えた人もいるのではないでしょうか。もしそうなら、次病院に行った際に、ぜひ明細書を確認してみてください。以前と比べて、若干ではありますが、徴収額が増えているはずです。

この4月からマイナ保険証を使って病院などを受診した場合、初診時に21円、再診時に12円、調剤に9円が上乗せされて請求されています。さらに、マイナ保険証ではなく従来の保険証を使った場合でも、2024年3月まで初診時に9円の追加負担が生じます。

この件は、共同通信が3月28日にスクープしたことで明らかになりましたがネット上では、「かえって高くなるなら、マイナ保険証になんか切り替えるわけがない」「使ったら医療費値上げされるマイナ保険証なんて誰が使うんだ?」「マイナンバーカードを普及させる気があるのか」など、非難囂々でした。

ネット上でこうした意見が出るのも当然です。政府がマイナ保険証を推進している理由は、マイナンバーカードの普及拡大のため。普通に考えれば、マイナンバーカードを保険証として利用すると支払額が割引になる、あるいは何らかのポイントが付与されるなどの政策になるはずです。

ところが、マイナ保険証を利用すると、かえって支払額が増えるというのでは、利用者にとってはデメリットでしかありません。

何故こんなことになってしまったのか?

「SICK」と書かれた積み木とコイン
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マイナ保険証の利用者の窓口負担が増えることの理由を端的に言えば、システム利用料や保守サポート料の患者への転嫁です。マイナ保険証を導入するには、専用の端末を用意したり、専用のシステムを導入したりする必要があります。もちろんそれらには費用がかかります。

政府は2023年3月までに、すべての医療機関でマイナ保険証の導入を目指していますが、今年1月時点で準備完了施設数は15.7%、運用開始施設数に至ってはわずか10.9%です。普及が進まない一番の理由は、システム利用料や保守サポート料といったランニングコストが高いことにあります。

ランニングコストにはこれまで税金が投入されてきた経緯がありますが、それにも限界があるということで、厚生労働省はマイナ保険証を導入した医療機関に対して、診療報酬を余計に受け取れるように今年4月から診療報酬を改定しました。

その結果、マイナ保険証を導入した医療機関は患者1人あたり、初診時70円、再診時40円、薬局の調剤時30円の診療報酬を追加で受け取れるようになりました。これによって、患者の窓口負担が初診時に21円、再診時に12円、調剤に9円が上乗せされて請求されることになったわけです。

背景には何がある?

医師による医療情報交換
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こうしたことになった背景には、何があるのでしょうか。政府は当初、2021年10月までのマイナ保険証の全国普及を目指し、医療機関に対して「オンライン資格確認関係補助金」の給付を実施しました。1つの医療機関につき、約20~100万円の補助金が給付されるというものです。

しかし、いざシステムを導入してみると、補助金では賄いきれないほど高額な見積もりが多発しました。結局、費用を負担した医療機関も少なくありません。さらに、月々5000円ほどのシステム利用料がかかることは医療機関に事前告知されていませんでした。

こうした混乱の中で、「状況が整理されるまでは導入しない方が良いのでは」という認識が医療業界の中で生まれ、マイナ保険証の導入機運が一気にしぼんでしまいました。マイナ保険証には、「就職・転職・引越をしても健康保険証としてずっと使える」「確定申告の医療費控除が簡単にできる」などのメリットがあり、将来的には医療費抑制も期待できることから政府も何とかして普及させたいところです。そこで、患者側にシステム導入費やシステム利用料を転嫁するという、今回の決定となったわけです。

今回のような経緯もあり、マイナンバーカードの保険証機能の普及は想定より進んでいません。ただ、マイナンバーカードには多くの利点もあり、導入がより進めばさまざまな点で生活が便利になるでしょう。さらにもう一歩、普及が進むためにも政府にはより良い対策を期待したいところです。