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これから注目されるグリーンファイナンス、ESG投資との関係は?

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

これから注目されるグリーンファイナンス、ESG投資との関係は?

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近年、「グリーンボンド」や「グリーンローン」などグリーンファイナンスの発行が増えています。この記事ではグリーンファイナンスの仕組みと、ESG(環境・社会・企業統治)投資との関係について解説します。

グリーンファイナンスとは

グリーンファイナンスとは、地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど、環境分野での取り組みに特化して資金を調達する債券(グリーンボンド)や借入金(グリーンローン)のことをいいます。

また、環境・社会・経済に良い影響を与える投融資は「インパクトファイナンス」と呼ばれ、地球環境への貢献が期待される金融(ファイナンス)の一種です。

2022年7月、三井不動産は「東京ミッドタウン八重洲」に投資するための資金として800億円のグリーンボンドを発行しました。発行額800億円という額は、国内不動産会社として過去最高となります。

三井不動産は2021年11月に策定した「脱炭素社会の実現に向けたグループ行動計画」を資金調達面からも進めているのです。

グリーンファイナンスとESG投資の関係

ESG(環境・社会・企業統治)投資として注目されているのが、SDGs債に対する投資です。SDGs債は、発行体の持続可能性(SDGs)戦略の中で環境・社会問題に取り組むために発行されますが、元利払いに関する一般的な信用力は、発行体が発行する他の一般債と同じになります。

日本証券業協会によると、SDGs債には以下の5つがあります。

1.グリーンボンド
2.ソーシャルボンド
3.サスティナビリティボンド
4.サステナビリティ・リンク・ボンド
5.トランジションボンド

それぞれのSDGs債の詳細は、日本証券業界のページをご覧ください。

つまり、グリーンボンドはSDGs債の一つなので、ESG投資の一種といえるのです。

グリーンボンドとは

グリーンファイナンスの中でも代表的なのが「グリーンボンド」です。企業や地方自治体が、国内外の地球環境を改善するグリーンプロジェクトの資金調達のために発行する債券を「グリーンボンド」といいます。グリーンボンドは自己申告型で、法的な要件はありません。

ただ、調達した資金を追跡管理して透明性を確保するとともに、グリーンプロジェクト以外への資金流用などの不正行為(グリーンウォッシュ)を防止しています。グリーンボンドの種類は、以下の4つです。

  • グリーン債
    グリーンプロジェクトの資金調達のために発行される債券で、償還は特定の財源ではなく、発行者のキャッシュフロー(お金の流れ)全体から行われます。
  • グリーンレベニュー債
    グリーンプロジェクトの資金調達のために発行される債券で、償還は調達した資金を充当した公的なグリーン事業のキャッシュフロー、公共施設利用料、充当対象に関連する特別税等から行われます。
  • グリーンプロジェクト債
    グリーンプロジェクトの資金調達のために発行される債券で、償還は、資金が割り当てられた単一または複数のグリーンプロジェクトのキャッシュフローから行われます。
  • グリーン証券化債
    グリーンプロジェクトに関連する複数の資産(貸付債権、信託受益権、リース債権を含む)を担保とする債券です。これらの資産から生み出されるキャッシュフローを償還の原資とします。

グリーンボンドは、2007年に欧州投資銀行が再生可能エネルギーや省エネルギー関連のプロジェクトを対象に債券を発行したのが始まりです。その後、国際開発金融機関が「グリーンボンド」という名称で同種のプロジェクトを対象とした債券を発行するようになりました。

日本では2014年に日本政策投資銀行が初めてグリーンボンドを発行。2016年には野村総合研究所が民間企業で初めて発行しています。そして、以下のようにグリーンボンドの国内発行額や発行件数は大きく伸びています。

〈国内企業等によるグリーンボンドの発行実績〉 
出典:環境省「グリーンファイナンスポータル」(2022年7月18日時点)

グリーンボンドは何でも買いから選別の時代に

グリーンボンド
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発行は増えているものの、2022年になって世界の債券市場でグリーンボンドは低迷しています。代表的なグリーンボンドの指数である「S&Pグリーンボンド・セレクト指数」は、2021年1月のピーク時から約20%下落しています。

低迷の要因としては、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにしたエネルギー価格の高騰で、環境債を多く発行する電力会社の収益悪化が懸念されるようになったからです。また、発行額の増加に伴い、一般債よりも有利な条件で発行されるケースも減少。「何でも買い」の時代は終わり、投資家はグリーンボンドを選別するようになっています。

また、世界的に金利が上昇していることも、グリーンボンドの逆風になっているのです。

グリーンローンとは

グリーンローンは、金融機関がグリーンプロジェクトのために提供する融資です。融資金はグリーンプロジェクトにのみ使用され、調達した資金の行方は管理されているため、グリーンプロジェクト以外の目的に使用されることはありません。

グリーンローン市場も急拡大しています。2014年に世界で3億ドルだったグリーンローンの組成額は、2021年には311億ドルにまで大きく伸びているのです。

 
出典:Environmental Financeデータベースの2022年7月19日取得データを基に環境省作成

グリーンファイナンスでESG投資は今後もさらに伸びていく

ESG
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国際的に脱炭素化、CO2排出削減が叫ばれ、日本も2050年までにカーボンニュートラルな社会を目指すなど、環境問題への取り組みは今後ますます重要になります。

企業においてもCO2排出量の抑制が必要となり、グリーンプロジェクトがこれまで以上に増加するでしょう。

また、サステナブル(持続可能)な社会の実現という企業の使命の一環として、環境問題の解決に向けた投資を行う「ESG(環境・社会・起業統治)投資」の拡大が見込まれ、企業のCO2排出削減のための資金調達手段、投資対象としてグリーンファイナンスは拡大していくと考えられています。