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お金に詳しい県、2位は香川、1位は?今必要な金融リテラシーとは

ふやす 内山 貴博

お金に詳しい県、2位は香川、1位は?今必要な金融リテラシーとは

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高校の家庭科授業で金融教育が始まるなど、私たちの金融リテラシーを高めるための取組みが注目されています。

金融リテラシーとはお金の知識と判断力のことです。例えば生命保険の契約でいえば、保険の知識だけでなく、様々な選択肢から適したものを選べるかどうか。さらには日本人が苦手としている投資についてもリスクやリターンを理解し、適した運用を行うことができるか。こういったことが求められています。皆さんは平均より高い金融リテラシーを有していると自信を持って言えますか?

金融中央広報委員会は3年に一度、大規模な「金融リテラシー調査」を行っており、今回は同調査から都道府県別の特徴などを紹介します。こういった調査結果を参考に、これからどのように金融リテラシーを身に付けるべきなのか、ぜひ参考にしてください。

金融リテラシー調査、都道府県ランキングは?

金融リテラシー調査において都道府県別のデータをサンプルに様々な調査が行われ多方面から分析されていますが、今回は「金融リテラシークイズ(5問)」の結果を紹介します。

皆さんは以下5問、何問正解できるでしょうか?

正解は ①4 ②2 ③3 ④2 ⑤3 です。
いかがでしたでしょうか?以下は解説です。

①:「クレジットカードの分割払いの多用」はできるだけ避けたいものです。
②:「教育・住宅・老後」が三大支出と言われています。
③:金利が上昇している場合、運用は金利上昇の恩恵に与れるように変動に、借入は返済額負担が増えないように固定金利にするのが原則です。
④:1年あたり2万円の支払利息が生じ、返済しなければ単純に5年で残高が2倍となります。しかし、複利計算で利息にも利息が付くため、5年未満で2倍になることが推測できます。
⑤:格付会社は国債の格付けなどを行うため相談窓口ではありません。

全国3万人を対象にした結果は以下です。

正解率は半分程度ですね。②~④に至っては不正解の人の方が多い結果となっています。このスコアが高かった都道府県ベスト3は以下です。

この3県について、他のデータやアンケート結果などを分析してみると、「家庭で金融教育を受けた人の割合」の2位が島根県、3位が奈良県となっていました。同調査では年齢が高くなるほど金融リテラシーが高くなることが指摘されていますので、「各家庭で、親や祖父母から子供や孫へ、お金のことについて積極的に話をすることが金融リテラシーを高めることにつながるのでは?」という見方もできそうです。

年収が高い人は金融リテラシーが高い?

高年収のビジネスマン
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金融リテラシーに関するクイズ5問の結果について、都道府県別に紹介しましたが、次は年収別に見てみましょう。金融リテラシー調査ではその他、正誤問題が全部で25問実施されています。その結果、全体の正答率が55.7%だったのに対し、年収が1500万円以上の人の正答率は68.9%に達しており、大きく全体を上回りました。では、年収が高い人は金融リテラシーが高いと言えるのでしょうか?

投資経験の有無で調査対象者を分けた場合、投資経験のある人の正解率が67.1%、無い人の正解率は45.9%と大きく差が出ています。年収が高い人は比較的高学歴の人が多いため、学歴が金融リテラシーに関係するという見方もあります。また投資をする人はそれだけ経済的に余裕があるので、結局は収入の高さが有利に働くのかもしれません。いろんな推察ができますが、筆者は少し違う見方をしています。

金融リテラシーを高める上で大切なものは?

筆者は以前、同調査の2016年版および他の調査結果や海外調査などを包括的に分析し、研究したことがありますが、その研究結果によると以下2点が分かりました。

まず、金融リテラシーを高めるカギの1つは実際に「経験」をすることです。住宅ローンを組む、保険の契約をするといった経験を通して金融リテラシーを高めることができます。これは金融リテラシーに限った話ではありません。

例えば、あるスポーツについて「上達する方法」、「正しいフォーム」といった書籍等を見ているだけでは上達しません。実際にプレーするからこそ上達します。お金のことも同様に、実際の取引に触れる機会が学ぶ機会となり、金融リテラシーの向上に寄与します。

よって、先の「高収入」の人の正答率が高い理由の1つは様々な経験をしていることが関係しそうです。収入が多い人ほど資産運用や保険、様々な提案を受ける機会、税金などの手続きをする機会、つまりお金に関するイベントとたくさん向き合うことが多いでしょう。投資経験の有無などは最たるものです。投資をする人は、配当金や株主優待をもらったり、いつ解約すべきか?などを判断したりと、お金について考える機会が増え、それらが経験となっていきます。

あわせて、「比較する」ことも重要です。提案されるままではなく、自分自身で一度ゆっくり他の選択肢と比較することを意識してみてください。いろんな気付きがあり、どんどん金融リテラシーが高まるはずです。

参照)筆者論文「Solutions to Improve Financial Literacy andRoles of Financial Advisors in Japan」

FPが考える、今必要とされる金融リテラシーとは

スマホで情報を得る男性
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金融リテラシー調査を参考に、金融リテラシーを高める方法についても触れました。では、これからの時代を生き抜く上でどのようなお金の知識、そして判断力が求められるでしょうか。その1つとして「情報の取り方」を意識してください。

FPとしてお金の相談に対応する中で最近とても多いのが、「アクティブファンドは買うべきじゃないですよね」「医療保険は入ってはいけないのですよね」と何かに対して偏った見方をしている人が多いということです。

その多くはSNS、YouTube等で見聞きした情報が大きく影響しているようです。今はこれらの便利なツールのおかげで、様々な情報に気軽にアクセスできます。その一方で、専門家ではない人も自由に意見を発信しており、発信者がタレントなど著名であればあるほど影響力も大きいのです。

発信される情報や意見はあくまで発信者の考えであり、それが受け手側全員に当てはまるとは限りません。またこれは専門家の意見の場合にも同様のことがいえます。専門家として情報の質は高くても、中には偏った意見、こだわりの強い見解も見受けられます。

今後も1つのテーマに対して玉石混交、様々な情報に触れることになるでしょう。「発信者が好きな人だから賛同する」「分かりやすかったから従う」のではなく、1つひとつ冷静に反対の側面から考えてみたり、別の意見と照らし合わせてみたり、様々な方法で皆さんなりの情報の取り方を確立してください。

それが結果としてお金に関する「経験」となり「比較」になります。こういうプロセスを踏むことで、これからを生き抜く上で必要な金融リテラシーを身に付け、そして高めることができるでしょう。