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若いうちから始めたい資産運用、今気をつけておきたい事とは?

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

若いうちから始めたい資産運用、今気をつけておきたい事とは?

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成人年齢が18歳に引き下げられ、高校生でも資産形成について教わる時代になりました。将来に備えて若いうちから資産運用することは大切です。ただ、お金についてきちんと理解しておかないと思わぬ損失がでる恐れもあります。この記事では若い世代が資産形成を考えるときのポイントと、注意点について解説します。

高校でも資産形成について教わる時代

2022年度から高校の新学習指導要領が始まり、資産形成を学校で教わる時代がやってきました。

社会人になって初めて保険やNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの資産運用を始めようと思っても、何から始めればいいのか悩む人も多いでしょう。

そして、知識の習得の仕方もわからない、あるいは、やろうと思いつつも放置している方も多いのではないでしょうか。ところが、これからの高校生は学校の授業でこれらを学ぶことになるのです。

高校の資産形成の内容

これまで家庭科の「お金」に関する授業は、どちらかというと消費生活における注意点に焦点が当てられてきました。たとえば、「買い物をするときにどんな点に注意したらよいか」「短期的にも長期的にも収入と支出のバランスを保つことの大切さ」といった内容だったのです。

一方、新学習指導要領は、さまざまな金融商品への理解を含め、より主体的な資金計画を立てることができるような内容になっています。さらに、進学、住宅取得、退職などのライフイベントだけでなく、病気や失業などのリスクにどう備えるかを考え、生涯を通じた計画を立てることができるよう配慮されているのです。

金融庁では、金融経済教育を推進するため、社会人・大学生・高校生を対象に、金融取引の基礎知識に関するガイドブックを発行し、広く配布しています。金融知識・判断力(金融リテラシー)を習得するために、このガイドブックを一読することをおすすめします。

「基礎から学べる 金融ガイド」

「資産形成」で押さえておきたいポイント

札束と机と椅子
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「お金の知識」には税金や保険、年金などさまざまな種類がありますが、私が注目しているのは、学習指導要領の「貯蓄、民間保険、株式、債券、投資信託などの基本的な金融商品の特性(メリット・デメリット)や資産形成の視点について触れるべき」という部分です。

日本の家計は、現金・預金の保有割合が高くなっています。2021年末に家計金融資産は2000兆円を超えましたが、その内、現預金は1092兆円と実に半分以上を占めているのです。

しかし、低金利下の今、銀行に預けるだけでは、お金を「守る」ことはできても、「増やす」ことはできません。

ですから、リスクを理解した上で、自分のニーズに合った金融商品の保有を検討した方がいいのです。こうした観点から、高校の家庭科の授業では、まず資産形成の必要性と各商品の基本的なメリット・デメリットを教えるのです。

また、成年年齢が18歳になったということは、高校生でも18歳の誕生日を迎えた瞬間に成人として行動できることを意味します。

このことを考えると、高校生のうちから金融知識・判断力(金融リテラシー)を身につけることが望ましいといえます。

現代の社会では、生涯を通じてさまざまな金融商品と関わっていくでしょう。そのため、金融リテラシーは、私たちがより自立した、安全で豊かな生活を送るために必要なものだといえます。

大きなリターンを期待しようとすると、ついリスクの高いFX(外国為替証拠金取引)や仮想通貨などの投機的な投資に目が行きがちですが、まずは資産運用の基本である「長期・積立・分散投資」を学ぶことが必要。なぜなら元本割れのリスクをある程度抑えながら、長期的なリターンを期待できるからです。

長期・積立・分散投資では、1回の投資で多額の資金を投入するのではなく、長期間にわたって時期をずらして一定額を投資していきます。投資では、長期で運用することによって、投資で得られた利益がさらに運用されて増えていく「複利効果」が期待できます。「投資期間」と「複利」には関係性があり、投資期間が長くなるほど複利効果も大きくなるのです。

また、限られた投資対象に資金を集中させるのではなく、債券や株式などの金融商品、投資地域などを分散させ、バランスよく持つこともポイントです。こういった資産運用の知識をできるだけ若いうちから身につけることができれば、適切な運用ができる期間が延び、資産形成に有利に働くのです。

成人年齢の引き下げで気をつけたいこと

成人年齢の引き下げ
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若いときから資産形成をすることは大切ですが、「投資詐欺」が増える可能性があることには注意が必要です。人生経験が少なく、この手の詐欺の知識がない若者をターゲットにした詐欺は、今後ますます増えていくと思われます。

「FX(外国為替証拠金取引)で儲けませんか?あなたに損はさせません」そんな誘い文句に騙され、お金を取られてしまった被害者が増えています。現に、FX取引に関する国民生活センターへの相談件数も年々増加しています。

FX取引(外国為替証拠金取引)の相談件数

2018年 577件
2019年 751件
2020年1587件
2021年2172件
出典 独立行政法人国民生活センター


悪質業者が勧誘の際にアプリやSNSを駆使し、より多くの人に接触しやすくなっていることが原因のひとつと考えられています。

最近は、自分たちの老後に不安を感じた若い世代が、その不安を解消するために貯蓄をするケースが増えています。その中で、確実に、早く、少しでも多くの資産を増やす方法を求めてしまうかもしれません。

そこに付け入ってくるのが詐欺師です。正しい金融知識を学び、資産形成の基本は「長期・積立・分散投資」であることを、しっかりと理解するようにしてください。