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「サイドFIRE」するならいくら必要?必要資金をシミュレ―ション

ふやす 白浜 仁子

「サイドFIRE」するならいくら必要?必要資金をシミュレ―ション

【画像出典元】「stock.adobe.com/Joaquin Corbalan」

経済的自立をし、早期リタイアを実現する生き方「FIRE」が知られる一方で、最近は「サイドFIRE」というスタイルも注目されています。今回は、このサイドFIREについて、FIREとの違いや利点、実現に向けていくら必要なのか、どのように計算したら良いか、シミュレーションも行いながら見ていきましょう。


 

サイドFIREとは?FIREとの違い

サイドFIREを紹介する前に、まずはFIREについて簡単に確認していきましょう。FIRE(Financial Independence Retire Early)とは、経済的に自立をして早期に退職することをいいます。

これは米国発祥の金融理論で、早期に生活費の25倍を貯め、その資金を年利4%で運用して利益分で生活すれば元本を減らさずに暮らしていけるという考え方で、労働は伴いません。とはいえ、裕福に暮らすことを目指すものではなく、倹約を意識しながら仕事以外の人生を楽しもうとする生き方です。

例えば、毎月の生活費が20万円かかっている人の場合で考えてみましょう。1年の生活費240万円×25年で6000万円を貯め、それを4%で運用すれば、毎年、生活費に相当する240万円が利益として得られるというわけです。ただ一般的に、人生の早期で6000万円を貯めるのはかなりハードルが高いことだと思います。そこで、もっと現実味がある方法が、今回のテーマとなる「サイドFIRE」。サイドFIREは、ちょっとした副業をしながらFIREするというスタイルです。

サイドFIREを目指す利点

ウォーキングするカップル
【画像出典元】「stock.adobe.com/Monkey Business」

「サイドFIRE」では、継続的に最低限必要な収入を得ながら生活するため、準備資金がFIREに比べて少なくてよいのが利点です。つまり、先例のように月20万円の生活費が必要でも、副業で月10万円を得ることができれば、サイドFIREまでに不足する月10万円の生活費×12カ月×25年分の3000万円を準備すれば良いことになります。

さらに、サイドFIREに向けて、今のうちから通常の仕事にプラスして月10万円を稼げるようにできるなら、3000万円の準備も早期に達成できます。「家族と過ごす時間をもっと作りたい」「田舎で畑仕事をしながら自給自足の生活をしたい」「好きな音楽や釣りといった趣味を中心に人生を送りたい」など、FIREを目指す理由はそれぞれ。FIREではなくサイドFIREを目標とすることで実現性が高まり、若いうちから自分の理想とする生活を始めることができます。

サイドFIREにはいくら必要?30代独身でシミュレーション

ここではサイドFIREまでにいくら必要か、シミュレーションしてみましょう。

サイドFIREをするのに必要な資金は、次のような計算になります。

・不足する1年間の生活費
(生活費15万円ー副収入5万円)×12カ月=120万円

・サイドFIREに必要な資金
120万円×25年分=3000万円

Aさんの場合、給与から5万円貯蓄できるため、副収入の5万円と合わせて毎月10万円を積み立て、3000万円を目指すことになります。預貯金で積み立てた場合は、金利がほぼゼロのため25年程度かかります。しかし、仮にサイドFIRE時の目標利回りと同じ4%で運用できたとすると、8年短縮でき、17年で3000万円が見えてきます。その場合、AさんのサイドFIREは47歳でスタートとなるわけです。

次は夫婦でサイドFIREする場合を考えてみましょう。サイドFIREに必要な資金は、次のような計算になります。
・不足する1年間の生活費
(生活費30万円―副収入6万円)×12カ月=288万円

・サイドFIREに必要な資金
288万円×25年分=7200万円

Bさん夫婦は、給与から毎月20万円が貯蓄できるため、副収入の6万円と合わせて26万円を積み立てます。預貯金で積み立てた場合は、7200万円の準備に23年程かかりますが、こちらも4%で運用できれば、17年弱で達成し、Bさんは52歳でサイドFIREが実現できます。

しかし、忘れてはならないのは子供の学資です。授業料以外に塾代や習い事、部費なども必要になります。また、BさんがサイドFIREを迎えるときに子供は大学入学目前の18歳。これから多額の学費が掛かる時期を迎えます。そのため、先例のAさんよりもう少し踏み込んでサイドFIREに向けた準備を考える必要があります。

例えばBさん夫婦が一般的な会社勤めだと想定すると、高校卒業までの学費や塾代は今後の昇給分でやり繰りする、さらにFIREまでにボーナスから大学の費用を準備しておく、などといった方法が考えられます。仮に子供が私立文系に進学することを想定して500万円準備すると、資産運用を考慮しなくてもボーナスから年間30万円ほど貯めると、BさんがサイドFIREする17年後に学費が準備できます。

サイドFIREの注意点

RISK
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サイドFIREは、副収入を得ることが前提です。よってそれが実現できるようにしておくことが注意点と言えます。収入が継続的に得られるよう健康にも配慮したいところです。また、FIREは年利4%の運用を目指すものですが、投資はリスクを伴うため、必ずしも右肩上がりに増えるものではありません。大きく目減りする年もある可能性を心得ておきましょう。

資産が減るリスクを考えると、すべてを投資に回すのではなく、元本確保タイプの金融商品も保有して、全体で4%を目指すことも検討したいところです。また、インフレについても注意が必要です。生活費が月に20万円必要な場合でも、物価が2%ずつ上昇してしまうと、1年後の生活費は20.4万円、10年後には24万円も必要になります。

他に考慮しておきたい項目としては、

・生活費以外に掛かる特別費(車の買い換え費用や車検、冠婚葬祭や家電の買い替えなど)
・株式や債券、投資信託で運用して利益が出た場合の税金(源泉分離課税)

などが考えられます。仮にアパート経営など不動産投資の運用を行う場合は、固定資産税や修繕費の支払い、確定申告で納税することも考慮し4%の運用を検討する必要があります。なお、不動産投資で収益があると所得全体(総所得)が増えるため、その所得をもとに計算される国民健康保険料の負担も増えます。これらの影響がある可能性にも注意が必要です。

まとめ

FIREの考え方は諸説ありますが、今回はよく言われている「25倍・4%運用」という点に焦点を当てて見てきました。仕事が好きな人、もっと違うことがやりたい人、その中間の人。いろいろな生き方が選択できる時代になりました。この記事が将来への考え方・選択肢の一つとして参考になりましたら幸いです。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。