新型コロナの入院給付金が大きく見直し、どの条件なら受け取れる?
監修・ライター
新型コロナウイルスの新規感染者は収束傾向にありますが、今なお多くの人が感染しています。新規感染者の中には、軽症もしくは全く無症状にもかかわらず、仕事を休まなければならない人も少なくありません。
有給休暇が使える人はまだ良いのですが、有休を消化しきってしまった人、そもそも有休がない人、働かなければその日の収入がない人の中には収入が大きく落ち込んでしまった人も多いでしょう。
そんな人にとっての頼みの綱であった「新型コロナ入院給付金」の給付条件が、9月末から大きく変わりました。「新型コロナ入院給付金」とは、民間の医療保険に自己加入した人の中で、対象の保険に加入している人が給付されるものです。
この給付金の給付条件はどのように変わって、どのような条件を満たさないと給付金を受け取れないのでしょうか。
入院しなくても支給されていた「入院給付金」
新型コロナウイルス感染で療養した方の中には、仕事を休まなければならず、その間の収入が途絶えてしまった人も少なくありません。アルバイトやパート、自営業の多くはその日に働かなければその日の収入は得られません。そんな人にとって、頼みの綱が「新型コロナ入院給付金」でした。“でした”としたのは、入院給付金の給付条件が2022年9月26日から大きく変わったからで、これまで給付金を受け取れていた多くの人が新条件では受け取れなくなるからです。
「新型コロナ入院給付金」とは、新型コロナウイルス感染により療養した場合に支給される給付金のことです。いくら支給されるのかは、契約している保険会社やプランによって異なり、たとえばオリックス生命保険ですと、入院給付金日額5000円の場合、10日間の療養で計5万円の給付金が支給されていました。
「入院給付金」という名前ですが、9月25日までは「新型コロナウイルス感染で医療機関に入院した」「医療機関の事情で、自宅などで治療を受けた」のいずれかの条件を満たせば給付金が支給されていました。つまり、保健所から「新型コロナウイルス感染により療養をしていました」という証明書が発行されれば、入院しようがしまいが、すべての人に給付金が支給されていたわけです。いわゆる「みなし入院」でも支払い対象でした。
SNSなどでは、「保険が使えたら働けない間の分が保障されると聞いて、ひと安心しました」「入っている保険、コロナの給付金がもらえて助かった」など、入院しなくても給付が受けられることに「助かった」といった声が多数寄せられていました。
9月26日以降は「重症化リスクが高い人」に限定
しかし、今年9月26日以降、給付を受けられる基準が非常に厳しくなりました。これまでは、入院しようがしまいが、保健所の証明書さえあれば誰でも給付金が支給されていました。これが、新基準では支払い対象を「重症化リスクが高い人」に限定。具体的には、「医療機関から入院が必要と判断された人」「65歳以上の高齢者」「妊婦」「治療薬の投与などが必要な人」のいずれかを満たす必要があります。
この大幅な基準見直しが行われたのは、新型コロナウイルスの爆発的な流行で急増する支払い負担に保険会社が耐え切れなくなったことが理由です。生命保険会社が加入する生命保険協会によると、加盟42社の8月の支払い件数は102万件を超えました。これまで最高だった今年6月の72万件より約30万件も増えています。それに応じて支払金額も激増。支払金額は951億円と過去最多を更新しました。昨年まではどんなに多い月でも100億円から200億円だったことから、保険会社の負担の大きさは相当なものだったことが分かります。
新型コロナウイルスの収束がいまだ見通せない中、保険会社各社は「これでは会社が持たない」と、支払い基準の大幅な見直しを余儀なくされたわけです。SNSなどでは、「高齢者に限定されるのはおかしい」「不利益変更ではないのか」といった反発の声が現役世代を中心に寄せられていますが、「ない袖は振れぬ」というのが生命保険会社の偽らざる心境ではないでしょうか。
日本において、民間の医療保険は、あくまで公的医療保険を補完するものでしかありません。ただでさえ物価高や電気代の高騰などで、生活が厳しくなっています。さらに、10月1日から多くの日用品も値上げされました。こうした中、この機会に私たち一人ひとりが、どのようなリスクに備えて入っている保険なのかを改めて見直しても良いのかもしれません。なお、9月25日までに新型コロナ検査で陽性になった人には、26日以降に請求しても給付金は支払われます。