パートも取得可能!?意外と知らない「有給休暇」もらえる日数は?
有給休暇を会社から付与されていても、休むことで職場や同僚に迷惑をかけるのではないかと気兼ねしたり、そもそも職場の雰囲気が有給休暇を取りづらい風土になっていると感じている方も少なくないでしょう。
厚生労働省の調査によると、令和3年の有給休暇平均取得率は58.3%でした。50%を下回っていた10年ほど前よりは改善されていますが、世界各国と比べると、ドイツ93%、イギリス84%、フランス83%、アメリカ80%と、日本はまだまだ取得率が低いといえます。
出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」、エクスペディア「2021年の世界16地域における有給休暇取得状況の比較」
そこで今回は、有給休暇の基本的なことや、どんな条件でいつから何日もらえるのかなど、有給休暇について知っておきたいことをまとめました。新社会人はもちろん、今働いている社会人でも意外と知らない有給休暇について理解を深めてください。
有給休暇とは
有給休暇とは正式には「年次有給休暇」といい、一定期間勤続した労働者に対して心身の疲労をリフレッシュさせるため、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。会社によっては、「有給」「有休」「年休」などとも呼ばれています。
給与をもらいながら休むことができる、すなわち、取得しても給与があるので「有給休暇」といわれています。つまり有給休暇を取得して会社を休んでも賃金は減額されません。
有給休暇は、正社員だけでなく一定の条件を満たしたパート・アルバイト、契約社員に対しても付与されます。
また、2019年の働き方改革により労働基準法が改正され、年5日の有給休暇取得が義務化されました。違反した企業は、6カ月以下の懲役もしくは一人当たり30万円以下の罰金が科せられるので、企業側も従業員に有給取得を促しています。これにより日本でも有給休暇の取得率は上昇傾向にあるのです。
有給休暇はどんな条件でいつからもらえる?
有給休暇が付与されるのは入社日(雇入れの日)から半年後です。
労働基準法において、以下の2点を満たしていれば年次有給休暇を取得することができると定められています。
【有給休暇付与の要件】
- 半年間継続して雇われている
- 全労働日数の8割以上を出勤している
正社員やパートの人が6カ月間継続して勤務し、その間の全労働日数の8割以上出勤していれば有給休暇が付与されます。全労働日数8割以上とは、全労働日に対する出勤率のことで以下の計算式で求められます。
出勤率 = 実際に出勤した日数 ÷ 全労働日数
実際に出勤した日数には、出社日以外にも業務上のケガや病気で休んでいる日数や、産前産後休暇・育児休業・介護休業を取得した日数も出勤したものとみなして取り扱う必要があります。また会社都合の休業期間などは、原則として、全労働日から除外します。
有給休暇の付与要件に雇用形態は関係なく、パート勤務であっても、6カ月継続して勤務し全労働日数の8割以上出勤していれば、週の労働日数に応じて有給休暇が付与されます。詳しくは後述します。
有給休暇の日数はどうやって決まる?
前項の要件を2つ満たせば、雇用形態に関係なく有給休暇が付与されますが、具体的にどれくらいの日数をもらえるのか気になりますよね。有給休暇は、長く勤めれば勤めるほど付与される日数も増えていく仕組みになっています。
正社員とパート・アルバイトで付与される日数が違いますので、それぞれの雇用形態の勤続年数でどれくらい付与されるのか具体的にみていきましょう。
正社員の付与日数
フルタイムで働く正社員の場合、半年間勤務すれば10日間の有給休暇が付与されます。その後勤続年数が長くなれば年々付与される日数は増えていき、6年6カ月以上継続勤務すると毎年20日の有給休暇が付与されます。
【通常の労働者の付与日数】
出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法39条」
例えば入社後半年間勤務した場合、有給休暇が10日間付与され、その1年後も継続して勤務していれば、さらに11日間付与されます。もしその間有給休暇を使っていなければ、入社1年6カ月後には21日間の有給休暇を所有していることとなります。
パート・アルバイトの付与日数
週の所定労働日数が4日以下、週の所定労働時間が30時間未満のパートやアルバイトの雇用形態で勤務する労働者の場合でも、下表のとおり有給休暇が付与されます。
【週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数】
出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法39条」
例えば週3日のパート労働者でも所定労働日数が年間121日以上であれば、入社後半年後には5日間の有給休暇が付与されます。
また、パート労働者であっても、週の所定労働日数が5日以上、かつ1年間の所定労働日数が217日以上あるか、労働日数にかかわらず週の所定労働時間が30時間以上の労働者については、前述の正社員同様の日数が付与されます。
有給休暇には期限があり、付与されてから2年間で消滅してしまいます。例えば先ほどの正社員の場合、入社後2年6カ月後に付与される有給休暇は12日間に増えますが、今まで使っていなかった21日間と合算して33日間になるわけではありません。最初の6か月で取得した10日間分の有給休暇が消滅してしまうのです。したがって2年6カ月後に取得できる有給休暇は23日間となります。
その他有給休暇について知っておきたいこと
その他にも有給休暇取得の義務化や、繰り越しの条件や期限について詳しく見ていきます。
有給休暇取得が義務化
2019年4月の働き方改革(労働基準法の改正)により、全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。
使用者すなわち企業は年次有給休暇を10日以上付与されている正社員、派遣社員、契約社員、パート・アルバイトなどの労働者に対して毎年5日間の有給休暇を確実に取得させなければいけません。
この有給休暇取得の義務化の背景には、同僚や上司への気兼ねなどにより、有給休暇取得をためらうことなく、促進させることが狙いとされています。
有給休暇が付与されないケース
有給休暇の付与は出勤率8割以上が条件です。出勤率が8割に満たなかった年があればその年は有給休暇が付与されません。
しかし、出勤率が8割に満たない年でも継続勤務年数には含まれるので、次の年出勤率が8割以上となれば継続勤務年数に応じた有給休暇が付与されます。
有給休暇の繰り越しの条件と期限
付与された有給休暇を使い切らなければ、翌年に繰り越すことができます。ただし、前述したように有給休暇には期限があり、労働基準法により付与された日から2年間と定められています。よって2年以内に取得しないと有給休暇は消滅してしまいます。
そして繰り越せる最大日数は20日間です。継続勤務が6年6カ月以上の場合、毎年20日間付与されるので、繰り越された20日間を加算すると最大で保有できる有給休暇は40日になります。
毎年5日間の取得義務があるので、最大で保有できる日数は35日と間違えやすいのですが、繰り越した有給休暇は古い順に消滅(失効)していき最大20日間繰り越せるので、次の年新たに付与される有給休暇と併せると最大40日間保有できることになります。
休む理由はなんでもいい
有給休暇を取得する理由について、法律上会社へ伝える必要はありません。多くの場合「私用のため」としています。もし上司や先輩から取得する理由を聞かれても答える義務はありません。「私用のため」とだけ伝えて休むことができます。
休みたい日は労働者が決め、会社はそれに従う
有給休暇を取得する日は労働者が自由に決めることができます。会社は労働者から有給休暇取得の申し出があった指定の日について希望に従う休暇を与える必要があります。
企業が休暇日を変更する権利もある
休みたい日を自由に決められるとはいえ、労働者が一斉に同じ日の有給休暇取得を申請してくると業務に支障を来します。会社側は事業の正常な運営が妨げられると判断した場合は、労働者の休暇日を変更する権利「時季変更権」が認められています。
ただし忙しいからというだけの理由ではこの権利は認められません。繁忙期などに一度に数人の方から休暇取得の申請があった場合など明らかに業務に支障を来す場合にのみ時季変更権は認められています。
使用者が労働者にしてはいけないこと
有給休暇を取得する際、使用者は労働者に対して取得する理由を聞いたり、不利益になることをしたりしてはいけません。有給休暇取得に関して以下のような行為はしてはいけないことになっています。
- 有給休暇取得の理由を聞き取り、理由によって拒否する
- 有給休暇を労働者が希望する日程で取得するのを拒否する(ただし、従業員の有給休暇取得によって事業の正常な運営が妨げられる場合、企業は「時季変更権」で日程を変更させることができるため、例外もあります)
- 有給休暇の取得によって、給与面や昇進面で不利な扱いをする(有給休暇を取得すると賞与が減るなど)
まとめ
今回は有給休暇の付与日数や取得に関するルールについて解説しました。特に以下の点について理解を深めていただければと思います。
- 半年以上継続して勤務すれば有給休暇が付与される
- パート労働者でも条件を満たせば有給休暇が付与される
- 毎年5日間は有給休暇取得が義務化された
- 翌年に繰り越せる有給休暇は20日間
- 最大で40日間の有給休暇を保有できる
日本でも働き方改革により有給休暇の取得率が上がりつつあります。有給休暇は国が決めた労働者の権利なので、会社や上司に遠慮する必要はありません。
コロナ禍でテレワークやオンライン会議が急速に普及しました。効率よく働くという文化が生まれつつあるので、このまま有給休暇はその年のうちに100%消化できるような企業文化が増えてほしいと願います。ビジネスとバカンス、メリハリをつけた働き方で仕事と生活をうまく両立していきましょう。
有給日数についてのQ&A
Q.うちの会社には有給休暇や育児休暇のような休暇制度はないといわれました。企業により従業員の扱いは違うのでしょうか?
A.有給休暇も育児休暇も労働基準法で定められています。要件を満たせば必ず利用できる制度なので、いくら会社がそのような主張をしたとしても、一定の要件を満たした全ての労働者に取得する権利があります。
Q.会社から「年休は最低でも5日間取ってください」と言われています。この5日間については、有給残日数のカウントには含まれないのでしょうか。
A.有給休暇は取得しなければ翌年に繰り越しできます。繰り越せる最大日数は20日間で、翌年の付与も20日間であれば併せて40日間となります。会社は毎年最低でも5日間従業員に有給を取得させる必要があるので、その5日間を使えば繰り越せる有給は15日間と思われがちですが、古い休暇から使っていきますので、一昨年の有給を繰り越している人は今年の付与された20日分を使わず一昨年の休暇から強制的に5日間使います。よって、今年の分の20日間は丸々翌年に繰り越すことができ翌年の有給残日数は40日間となります。