今アメリカでZ世代も注目のスタートアップってどんな会社?
日本もアメリカもスタートアップ流行りの昨今。米労働統計局などの発表によると、スタートアップが誕生しても、その半数以上が数年以内に消えていくそうです。一見華やかそうですが実情は栄枯盛衰が激しいシビアな世界のよう。そんな生まれては消え、残っていくのは一握りのスタートアップ業界。本場のアメリカ現地から「今年もっとも注目されているスタートアップ」を紹介します。
米ビジネス誌による「米最良スタートアップ」
Z世代やミレニアル世代を中心に、日米共に、起業もサービス利用もスタートアップ流行りの昨今。
3月、米労働統計局の発表を基にした「注目すべきスタートアップ」が米ビジネス誌で紹介されました。『フォーブス』の記事「America’s Best Startup Employers(アメリカの最良スタートアップの雇用主)」によると、この国ではスタートアップ企業が誕生しても、5年以内に半数以上が廃業に追い込まれているそうです。
まさに栄枯盛衰が激しく、不確実な世界(業界)を物語っていますね。
そんな生まれては消え、残っていくのは一握りというシビアなスタートアップ業界。とは言え、画期的でイノベーティブなアイデアと資金(投資家)を集めることができさえすれば、誰でも起業できるのがスタートアップ。
発展途上にある会社は自分の力を発揮しやすく、またすでに成熟した伝統的大企業にありがちな古いしきたりもないため、今でも継続して在宅勤務を認めたりホリデーも取りやすいなど、Z世代など若い世代を中心に就職先としてもスタートアップは魅力的なようです。
先の「今年の注目すべきアメリカのスタートアップ」を発表したフォーブス誌の記事は、市場調査会社スタティスタ(Statista)と提携したものです。対象は従業員数が50人以上の企業で、雇用主の評判や従業員の満足度、成長率という3つの基準に基づきランク付けされました。
それによると注目度第1位に、エネルギー産業&資源分野のコモンウェルス・フュージョン・システムズ(Commonwealth Fusion Systems)が選ばれています。
2018年にMIT(マサチューセッツ工科大学)プラズマ科学および核融合センターのプロジェクトの一つとして立ち上がりました。核融合技術への投資としてビル・ゲイツやグーグルなども出資し、調達額は18億ドル(約2400億円)以上と報じられています。
革新技術により、無制限に生成できる持続可能なクリーンエネルギー源に期待が寄せられているからこその、堂々1位と言えるでしょう。
核融合と聞くとなんだか難しいことのように聞こえますが、日本のメディアでもこのスタートアップは紹介されています。核融合について問われたCEOのボブ・マムガード氏のコメントでは、このようなもののようです。「コップ1杯の水が東京ほどの都市を1年間動かす燃料になり得るもの」。
未来に必要なクリーンエネルギー業界を背負った新興企業と言えそうです。
▼コモンウェルス・フュージョン・システムズYouTube
ちなみに2位以降は、インシュアテック(InsurTech、保険技術)分野のコーヴァス・インシュランス(Corvus Insurance)、そしてEV用バッテリー・エネルギー貯蔵技術開発のアワー・ネクスト・エナジー(Our Next Energy)、さらにエドテック(EdTech、教育技術)系で地上光学・赤外線天文学のための研究組織、ノアラボ(NOIRLab)などがランクインしています。
このリストを見る限り、圧倒的にアメリカ西海岸、特にシリコンバレーのあるサンフランシスコを拠点にしたスタートアップが多い事が解ります。
東海岸発はシリコンアレーと言われているニューヨーク発のハイテク企業も一部ランクインしているものの、近年の特徴としてボストンなどマサチューセッツ州の企業も比較的多くなっているのが特徴です。
また、未来を創造するエネルギー資源系やテクノロジー系の急成長が目覚ましい点にも注目です。
検索数の伸び率から選ばれたトップ・スタートアップ
ほかにも、さまざまなランク付けがされています。
例えば、分析会社エクスプロディング・トピックス(Exploding Topics)は、過去5年間の検索数の伸び率の視点を加味した、「今年もっとも成長するであろう米国内25のスタートアップ」を発表しています。
「今年もっとも成長するであろう米国内25のスタートアップ」のリストを見る
この5年間で733%も検索数が増加したスタートアップとして、ゼロティア(ZeroTier)が1位に選ばれました。ゼロティアとは、5分以内で簡単にVPN接続ができるオープンソースソフトを開発していて、創業は2015年です。
2位に、創業2年のクレイドルワイズ(Cradlewise)が選ばれています。検索数は1328%アップと爆上がり中。特に昨年の伸び率は目覚ましく、20年のタイム誌の「2020年の最高の発明(The Best Inventions of 2020)」の100社の1つに選ばれました。
このスタートアップは、乳幼児を持つ新米ママ&パパに大人気。安眠を促す乳幼児用クリブ(ベビーベッド、バシネット)をエンジニア夫婦が開発。赤ちゃんが泣くとゆりかごのように自動的に揺れるシステムやスマホでモニタリングができるソフトを提供しています。
▼クレイドルワイズYouTube
以上のように、さまざまな視点からアメリカでは多くのスタートアップが今注目されていると言えるでしょう。
これら上位のスタートアップの多くは社会に必要とされ、その注目度から5年後も生き残っている可能性が高いと思われます。とは言え、今後はまた別の新たなアイデアを基にしたスタートアップが次々と誕生するでしょうから、まさに生き馬の目を抜く世界で切磋琢磨している新興集団と言っていいでしょう。