電力大手7社、6月から電気料金を大幅値上げ!なぜ全社でないの?
監修・ライター
5月19日、かねてから電気料金の値上げを要請していた電力大手7社の訴えが認可されました。これを受け、6月1日使用分からの電気代が値上がりします。最も値上げ利幅が小さい東京電力でも平均で15.9%、最も値上がり幅が大きい北陸電力に至っては平均39.7%も電気料金が値上がりしてしまうのです。
なぜこのタイミングで電力大手各社は値上げに踏み切ったのでしょうか。そして、ただでさえ電気代が高騰する夏を、どのように乗り切ればいいのでしょうか。家庭の中で最も電気代のかかるエアコンの賢い使い方とともにお伝えします。
北陸電力は約4割も値上げへ
経済産業省は5月19日、北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の電力大手7社から出されていた電力料金の値上げ要請を正式に認可しました。
6月の使用分からの各社の値上がり幅は次の通りです。
北海道電力=平均23.22%
東北電力=平均25.47%
東京電力=平均15.9%
北陸電力=平均39.7%
中国電力=平均26.11%
四国電力=平均28.74%
沖縄電力=平均33.3%
最も値上がり幅の大きい北陸電力では、標準的な電気使用量の家庭で、月額2548円値上がりする試算です。また、今回、値上げ幅が最も小さかった東京電力でも標準家庭で月額881円値上がりする試算となっています。
電力会社の値上げは今回が初めてではありません。2022年4月、電力大手各社は2016年の電力自由化以降、最も高い水準で値上げをしています。食料品をはじめとする日用品も昨年から相次いで値上げされる中、このタイミングで電気代が大幅値上げとなると、生活に窮する方が増えるのも自然なことではないでしょうか。SNSでもこのニュースに関連して、「電気代が高すぎる」「数年前と比べて電気代が倍になった。理由はなに?」「6月にまた電気代値上げ。もう無理だ」などの声が聞かれます。
値上げの直接の理由はLNG価格の高騰だが…
電力大手の相次ぐ値上げの理由は、燃料価格の高騰です。電力大手各社は値上げの理由を「火力発電の主力燃料であるLNG(液化天然ガス)の価格の高騰」としています。たとえば、北海道電力は値上げの理由を次のように説明しています。
「世界的な燃料価格や卸電力市場価格の高騰、円安の進行により、電力供給コストが電気料金収入を大きく上回る状態が続いており、当社の収支・財務状況は悪化しています。」
ほかの電力大手のプレスリリースでも、使っている言葉は違いますが、その内容はほぼ同じです。確かに、ロシアによるウクライナ侵略などをきっかけに世界中でLNGの奪い合いが展開されており、価格の高止まりが続いています。電力会社にとって、LNG価格の高騰は相当に痛いことでしょう。ただし、電力大手各社の値上げには、プレスリリースには書かれていないもうひとつの理由があります。
北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力。今回、値上げをする各社を並べてみて、あることに気がつきませんか?それは、関西電力、中部電力、九州電力が入っていないという点。日本の電力大手は10社ありますが、今回はそのうちの7社しか値上げを発表していません。値上げをしない電力会社のうち関西電力と九州電力に共通していること、それは原発が稼働している会社であるということです。
関西電力は美浜原発、大飯原発、高浜原発が、九州電力は玄海原発がそれぞれ稼働中です。東京電力の電力構成は、火力発電が77%、再生可能エネルギー発電が14%、原子力発電は0%。一方、九州電力の電力構成は、火力発電が36%、再生可能エネルギー発電が19%、原子力発電は36%です。値上げをする7社の原発はすべて運転停止中で、火力発電の依存度が高く、主燃料であるLNGの価格高騰が経営悪化に直接影響しています。その結果の値上げというわけです。
つまり、今回の電力会社の値上げの理由の一つに、「原発を再稼働できない」こともあるのです。
なお、中部電力の浜岡原発も運転停止中ですが、企業努力の結果、「今のLNG価格の水準が続けば黒字を確保できる」とし、今回の値上げは見送っています。
電気代、どのように抑えればいい?
さて、すぐにはLNG価格の下落の見通しが立たず、かといってさまざまな意見がある中、すぐに原発が再稼働されるわけはないでしょう。そうした中、この夏、日本中のさまざまな地域で電気代の高騰が予想されます。暑くなる時期を前にして特に心配になるのがエアコンの電気代です。7月から8月の電気代がどのくらいになるか今から心配という方も多いでしょう。
電気代の高騰が心配だからと言って、近年の猛暑にエアコンを使わないと命の危険に関わります。大切なことは、より効率的にエアコンを使うことでしょう。筆者が過去にエアコンの専門家に取材したところによると、消費電力に最も影響が大きいのは、エアコンを何度に設定するかということ。体に無理のかからない範囲で、設定温度を上げるのが、電気代の抑制には一番効果的だといいます。
また、エアコンと言えばよく論争となるのが、「つけっぱなしがいいか、小まめに消す方がいいか」ということ。これについては、「冷えたから消す、暑くなってきたから付ける」よりも「つけっぱなし」の方が電気代は安くなるそう。たとえば、テレワークを8時間行うのであれば、小まめに消すよりもつけっぱなしの方が電気代は安くなります。同じ理屈で、就寝時もエアコンをつけっぱなしにすることをその専門家は推奨していました。とはいえ、数十分ならまだしも、何時間も外出するのにエアコンのつけっぱなしはNGだそうです。
夏を前にした電気代の値上げを受け、通常通りの夏を過ごしてしまうと、考えてもみなかったような高額な電気代が請求されてしまう可能性もあるでしょう。本格的に暑くなる前に、さまざまな節電方法がテレビやネットメディアで紹介されると思います。この夏は、自分に合った節電方法を見つけて、できるだけ電気代を安くしたいところです。