ネット購入者の約4割が「後払い決済」利用、その利便性とリスクは
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「後払い決済」という選択肢をオンラインショップや、各種の決済アプリなどで見る機会が増えました。スマートフォンの普及によっていろいろなサービスが出てきましたが、近年では買い物の決済の仕組みも大きく変わろうとしています。今回は後払い決済の特徴や、利用するときに気を付けたいポイントについて解説します。
後払い決済とは?
消費者がオンラインショップや通販サイトなどで商品を注文し、購入した商品を受け取った後にコンビニエンスストアや銀行、郵便局などで代金を支払う仕組みです。支払いに使用する請求書は商品に同封される場合と、別送される場合があります。また決済アプリであるPayPayを利用した後払いは、翌月に利用料金が銀行口座から引き落としされます。どのサービスも商品を受け取った後に支払いする仕組みです。
後払い決済の特徴
ネットショッピングなどで後払い決済を利用する時の流れは以下のようになっています。
1)商品を注文、その際に後払い決済を選択する
2)商品を受け取る
3)後払い決済で使用する請求書が到着する
4)請求書を使い、最寄りのコンビニエンスストアなどで支払いする
氏名とメールアドレスの登録だけで利用できるサービスも多く、クレジットカードがなくても後から支払いができるのが特徴です。消費者の利便性が高く購買率が上がるため、導入する店舗が増え、後払いサービスを利用する消費者も増えてきました。
クレジットカードとは何が違う?
一般的に後払いと聞いて思い浮かぶのは、クレジットカードでしょう。後に払う仕組みとしては共通していますが、後払い決済とクレジットカード払いの違いはなんでしょうか。
一つは利用範囲がクレジットカードよりも制限されている点です。主にネットショッピングで利用される後払い決済に比べ、クレジットカードは家賃や公共料金の支払い、実店舗での支払い等幅広く利用できます。
また、後払いは利用上限金額がクレジットカードより低く設定されているのも特徴です。後払い決済で購入できる金額は、高くても10万円程度に設定されていることが多く、クレジットカードのように高額商品の購入には利用できません。
ネット購入者の4割弱が後払い決済を利用している
利用者が増えてきた後払い決済について総務省が調査をしています。総務省の令和4年通信利用動向調査報告書を見てみましょう。
インターネットにより商品等を購入した 15 歳以上の人の決済方法を見ると、「クレジットカード払い(代金引換時の利用を除く)」の割合が 75.9%と最も高く、次いで、「コンビニエンスストアでの支払い」が36.4%になっています。
クレジットカードには及びませんが、後払い決済も一定の利用者がいることが分かります。コンビニエンスストアで支払う人にはクレジットカードを持っていない人も含まれていますが、カードを持っていてもインターネット上でのクレジットカード決済に不安を感じる人も多く、不正利用を避けるために後払いを利用しているケースも多いと考えられます。
「クレカがなくても購入できる」、若者が感じるメリット
後払い決済をよく使っているのはどの年齢層でしょうか。消費者庁が発表した「キャッシュレス決済の動向整理」の調査結果を見ていきましょう。
オンラインショッピングの支払いにおいて、後払い決済の割合が高いのは20代。年齢層が若いほど使用している割合が高くなっています。
また、消費者庁の「キャッシュレス決済の利用状況に関するアンケート」(複数回答可)によれば、後払い決済を利用する利点として挙げられた上位5つの理由は以下の通りです。
1位:クレジットカードを持っていなくても購入できる 29.0%
2位:クレジットカード番号を入力しなくても購入できる 24.7%
3位:注文時に購入金額を用意できなくても支払期限内に用意できれば購入できる 22.9%
4位:キャンペーン等の優遇が受けられる 22.1%
5位:支払い前に商品を受け取って確認できる 21.2%
参照:消費者庁「第46回インターネット消費者取引連絡会 資料1(参考)キャッシュレス決済の利用状況に関するアンケート結果」
これらの理由を見ると、クレジットカードを持っていない人や、購入時にお金が無くても、支払期限内に準備できれば購入できるといった点が重視されていることが分かります。またクレジットカード番号を入力しなくても良いという利便性と安全性の高さも要因になっているようです。
Z世代に選ばれる理由とは
1990年代後半から2010年代前半の間に生まれた世代はZ世代とも呼ばれ、世界的にマーケティングの中心を担うターゲット層として注目されています。この世代は彼らが生まれた頃からインターネットや携帯電話、スマートフォンなどが身近にあり、デジタルネイティブとも呼ばれます。
Z世代の年齢層に後払い決済サービスが好まれているのは、Z世代が後払いサービスを好きだからというよりも、単純に年齢的に大学生や就職して間もないため、クレジットカードを持っている人が少ないということも要因の一つだと思います。
そのため「クレジットカードは持っていないけど、オンラインショッピングをしたい」「手元にお金はないけど○○日後にはアルバイトの給料が入るので支払いができる」といった理由で後払い決済サービスが選ばれていると筆者は考えています。
後払い決済のデメリット
気軽にサービスが利用できる後払い決済サービスですが、デメリットもあります。
1.支払える金額以上の買い物をしてしまう可能性がある
後払い決済サービスはクレジットカードほど与信審査が厳しくないため、収入がない人でも利用できます。そのため、自分で支払える金額以上の買い物ができてしまうことがあります。そうなると支払いが困難な状態に陥る可能性があります。
2.利用金額を管理しづらい
後払い決済の場合、注文をしたタイミングでは手元のお金が減りません。そうなると、何を購入したか、この後どれくらいお金を使えるのか、などの管理が難しくなります。特に複数のサービスを同時に使っていると、支払いサイクルや金額の把握が難しくなる可能性が高くなります。
3.手数料が発生することがある
後払い決済サービスの事業者によっては、サービス利用料や手数料が発生することがあります。そのため手数料分を損しているとも言えます。
例えば洋服などを販売している大手のファッションサイトで後払いサービスを利用すると、1件当たり330円(税込み)の手数料が必要です。また支払いの際、コンビニエンスストアでの支払いは手数料無料でも、郵便局窓口での支払いは手数料が必要といった場合もあります。手数料はサービス会社によって異なるので注意が必要です。
4.カードローンやキャッシングなどの利用を誘発しやすい
後払い決済サービスは利用しやすいので、支払いが重なり、多重債務になりやすい性質を持っています。そのため、後払いサービスの支払いのためにカードローンやキャッシングなどでの借り入れを誘発する恐れがあります。
クレジットカードやカードローンなどの多重債務は「最初は少額だったけれど、どんどん金額が膨らんでしまう」など問題が深刻化することが多いです。気軽に利用できるが故に、リスクは高いと言えるでしょう。
5.販売店が怪しいこともある
インターネット上には悪質なショッピングサイトやサービスもあります。そのようなサイトでは支払いにクレジットカードは使えず、後払いサービスのみの場合があります。これはクレジットカード会社の基準を満たせないため、後払い決済サービスを使っているケースがあるからです。
もしそのようなサイトで買い物をして粗悪品などが届いたとしても、返品や返金をしてくれる可能性は低いのが現状です。そのため、支払い方法でクレジットカードが使えず、後払い決済サービスのみの場合は注意が必要です。
後払い決済の注意点
消費者庁の調査結果から、後払い決済サービスを利用した際に発生したトラブルや困ったことの上位5つを見てみましょう。
1.支払いが遅れてしまった
やはり目立つのは「支払いが遅れてしまった」という項目です。後払い決済では「請求書の発行から14日以内に支払う」という設定が多く、この期日までに支払いを済ませる必要があります。もし支払期日を過ぎてしまうと他社も含めて後払い決済が利用できなくなったり、長期にわたり支払いがないような悪質なケースと判断されれば、弁護士事務所などに債権の回収を委託されたりすることもあるようです。
2.請求書を紛失した
後払い決済は、手元に届く請求書を使って支払います。そのため、請求書を紛失すれば支払うことができません。事業者によってはサイトで再発行できることもあるようですが、請求書の紛失は上記の支払い遅れのリスクに直結します。
3.二重に支払ってしまった
後払いサービスで複数の商品を購入した場合、誤って二重に支払ってしまうことがあるようです。決済業者から返金はされますが、時間を要します。
4.請求額が高額になるなどで支払えなかった
請求額が高額になり、支払いできなかったというケースも多いようです。商品単体ではそれほど高額ではなくても、自分がいくら使っているか分からなくなる程たくさんの品物を購入してしまったり、複数のサイトで後払いサービスを利用して利用金額が膨らんだりしてしまうことで支払いができないケースが発生しています。このように高額になって支払いができないケースは、クレジットカードの多重債務と同じで深刻な事態と言えるでしょう。
5. 未成年の子供が保護者の同意なく後払い決済を利用してしまった
後払い決済の事業者の中には、年齢制限などの利用条件が厳しくなく、電話番号やメールアドレスの入力だけで利用できるようなサービスもあります。決済手続きが簡単なため、本来は親権者の同意を得なくてはならない未成年が後払い決済をしてしまい、支払えないようなケースも目立ちます。未成年者であれば親権者からの申し出で契約を取り消しできるケースもありますが、すでに商品を開封して使用済みのような場合は難しいでしょう。
後払い決済サービスの利用にあたっては、クレジットカードのような本人確認の書類や年収、職業などの情報が必要ありません。そうした手軽さから若い世代を中心に利用が広がっていますが、それゆえにトラブルが若年層まで広がっているとも言えます。なお国民生活センターと全国の消費生活センターに寄せられた後払い決済についての相談件数は、2021年度で約2万件となっています。
まとめ
年々、後払い決済が利用できるサービスが拡大してきました。手元にお金がなくても購入できるという手軽さや、クレジットカードの番号を入力しなくても良いのでセキュリティー上の安心感など、利用者にとってメリットが多いサービスです。
ただし、クレジットカードに比べて与信審査が緩く、多重債務に陥りやすいなどの問題もあります。現在のところクレジットカード会社と後払い決済サービス会社では個人の信用情報の連携はされていませんが、今後どうなるかは分かりません。仮に連携されることになれば、後払いサービスでの支払い遅れなどの情報が原因で携帯電話が購入できなかったり、クレジットカードが作れなかったりというようなことも起きるかもしれません。手軽だからこそ、リスクをきちんと把握して利用しましょう。
後払い決済に関するQ&A
Q.別人宛のNP後払いの請求書が届きました。受取拒否をしても良いですか?
A:賃貸住宅などでは前の住人宛の請求書が届く時があります。その際は未開封のまま受取拒否と記載してポストに投函しましょう。
Q.後払い決済を滞納すると、どうなりますか?
A:支払いができていないと後払いサービスを利用できません。また滞納が続けば弁護士等が介入し、法的手段を執られる可能性があります。