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離婚歴がある時の相続、誰が相続人?よくあるトラブルを防ぐには

桑田 悠子

離婚歴がある時の相続、誰が相続人?よくあるトラブルを防ぐには

【画像出典元】「Sayuri I/Shutterstock.com」

こんにちは。相続専門税理士の桑田です。今回は離婚と相続をテーマに、よくあるトラブル事例と、それを防ぐ方法を徹底解説します!ご両親が離婚されている方、ご自身や配偶者が離婚されている方、必見の内容です。ぜひ、最後までご覧ください。

相続人はだれ?

早速ですが、クイズです!次の家族で、お父さんが亡くなると、だれが相続人となるでしょうか?

筆者作成

正解は、前妻との子供ゆうこさんと、後妻の花子さんです!法定相続分は、1/2ずつで、最低限保証されている相続できる権利である遺留分は1/4ずつです。

次に、こちらの家族で、同じくお父さんが亡くなると、だれが相続人となるでしょうか?

筆者作成

正解は、前妻との子供ゆうこさん・後妻花子さん・後妻との子供健さんです。法定相続分は、花子さん1/2、ゆうこさん・健さん1/4ずつです。遺留分は、花子さん1/4、ゆうこさん・健さん1/8ずつとなります。

つまり、相続人となるのは、次の①+②です。

①「配偶者」枠:亡くなったときの配偶者が該当します。もし、亡くなったときに、離婚しており、だれとも再婚しておらず、配偶者がいない場合には、この枠に該当する人はいません。
②「配偶者以外」枠:次の順位で、相続人が決まります。1位が子供、2位が親(又は祖父母)、3位が兄弟姉妹です。

1位の子供には、前の配偶者との子供も、新しい配偶者との子供も、該当します。法定相続分も平等です。新しい配偶者の子供の方が、前の配偶者との子供より、多く相続できるということはありません。

なお、新しい配偶者に、前の配偶者との間の子供(連れ子)がいた場合においては、養子縁組をしていない限り、その連れ子は相続人にはなりません。先ほどの例で言うと、花子さんに前夫との子供がいても、養子縁組しない限り、その子供は、相続人とはならないのです。

このように、離婚が伴う相続は、相続人の関係性が複雑となる傾向にあります。
相続人と各人の相続できる割合を確認することが、第一ステップです!

よくある遺産分割トラブル

遺産相続や関係図
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相続人が分かったところで、次は遺産を分けるお話です!

遺産の分け方には、2種類あります。

遺言書と遺産分割協議です。それぞれの特徴とトラブル例を見ていきましょう!解決策も記載していますので、ご覧ください。

(1)    遺言書のトラブルと解決方法

遺言書の存在は大きいです。法的に効力のある遺言書があっても、遺言に載っている人全員が同意すれば、遺言書の内容とは違う分け方を話し合いで決めることができますが、1人でも同意しなければ、遺言通りに分けなければいけません。それほど、効力のあるものなのです。

筆者作成

そのため、ご家族関係が複雑な方には、遺言作成をお勧めしますが、中途半端な遺言を作成すると、かえって相続争いの引き金となることがあります。そこで、下記ポイントは必ずご確認ください。

1つ目は「公正証書」で作成することです。公正証書の遺言とは、公証役場で2人以上の立会人と一緒に、公証人が作ってくれる遺言書のことをいいます。正確には出張も可能なので、公証役場以外でも作成可能ですが、分かりやすく言うと、前述の通りで、安全性と確実性が非常に高い遺言書です。自分で書く「自筆証書遺言」でも、記載方法が法的に正しく、作成当時の意思能力を何らかの方法で明らかにできれば、実際に相続が起きた際に、その遺言書で遺産を分けることができますが、素人で作成するのは、少し骨が折れます。

筆者作成

しっかり調べて作成できる方は、自分で作成して、法務局で保管してもらうことで、紛失リスク等を防ぐことができますが、私は公証役場で作成する遺言公正証書をお勧めします。私も月に1回ほどは、お客様と一緒に公証役場へ行き、遺言公正証書の作成の立会人をしております。

2つ目は、各相続人の遺留分を確認することです。遺留分とは、相続人に最低限与えられている相続する権利で、法定相続分の1/2(1/3の場合もあり)が割合です。遺言作成の段階から、遺留分を侵害していないか?は確認しましょう!

なお、生前に遺留分を放棄する制度もありますが、放棄する人自身が家庭裁判所に申し立てを行い、許可を得ることが必要で、諸要件もあるため、使いやすい制度ではなく、あまり登場しないのが実情です。

そのため、遺留分の放棄が難しそうだけれど、特定の人に多く遺したい場合は、次の3つの対策を検討ください。

①    生前贈与をして10年経過させて、遺産に持ち戻されることを防ぐ(ただし、遺留分を持つ人に損害を加えることを知って行った生前贈与は、10年より前に贈与した場合でも、持ち戻されることがあります)。孫など相続や遺言で財産を取得しない人への生前贈与も効果的ですが、実質的に相続人への贈与とされるリスクがあります。
②    養子縁組で法定相続人を増やす。
③    生命保険に加入することで、遺留分を計算する基礎となる財産を減らす。
どういうことかというと、生命保険金は、保険会社から保険金の受取人へ支払われるものなので、亡くなった方の財産ではなく、受取人固有の財産なのです。相続税を計算する際には、特例的に、亡くなった方が保険料を支払っていた場合には、計算対象としますが、遺留分の計算には、原則的に含まれないのです。

それぞれ、注意すべきこともありますが、まずはこの3つを頭に入れてください。実行の際には、必ず専門家にご相談くださいね。

この他にも、注意すべき点は様々ありますが、今回は、公正証書と遺留分について、お話しました!

(2)    遺産分割協議のトラブルと解決方法

遺言書がない場合には、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行わなければいけません。この遺産分割協議で1番トラブルになるのは、花子さん・健さんと、ゆうこさんの仲が良くない場合です。

連絡も取りたくないという関係性だったとしても、財産一覧を共有して、お互いが納得できる分け方を決める必要があります。ご自宅が財産のほとんどを占める場合、最悪のケースでは、ご自宅を売却しなければいけません。これを防ぐことのできる可能性のある方法は、遺言書の作成や家族信託です。ただし、先ほどお話したように、中途半端な遺言書は、かえって争いの種になりますので、専門家に相談し、検討した上で作成してください。

離婚を伴う相続は、今回お話したこと以外にもトラブル例が多く、複雑になりやすい傾向にあります。相続税の面からも、生前からしっかり対策をしておきましょう!