2万種超えの仮想通貨、ビットコイン1強の時代は果たして続く?
監修・ライター
2023年、ビットコインの価格が大きく上昇しています。米国や日本の株式だけでなく、インフレで上昇している金や原油などの商品(コモディティー)を大きく上回る上昇率となっているのです。
ビットコインを含む仮想通貨は2万種類を超え、現在も増え続けています。その中でも知名度や時価総額でビットコインは抜きん出ていますが、今後もビットコイン1強の時代は続くのでしょうか。仮想通貨の現状とビットコインの今後の動向について解説します。
仮想通貨のビットコイン(BTC)は2008年に誕生
仮想通貨(暗号資産)は、ネット上でやり取りできるデジタル通貨であり、日本円や米ドルなどの法定通貨とは異なる特徴があります。紙幣や硬貨のような物理的な形を持たず、デジタルデータとして存在するからです。また、仮想通貨は高度な暗号技術とブロックチェーン技術によって保護されています。これにより、データのコピーを防ぐことができるのです。
ビットコインは、2008年に「サトシ・ナカモト」という人物によって提案され、その後運用が開始された仮想通貨です。ブロックチェーン技術を利用しており、公的な発行主体や管理者の裏付けなしにネットワークを介して価値の保存や移転ができます。ビットコインは仮想通貨の中でも時価総額が最も大きく、仮想通貨の代表格として知られています。また、ビットコインから分裂や派生した通貨も多く存在し、仮想通貨市場の基軸となっているのです。
ビットコインが誕生してから15年が経ちますが、現在、仮想通貨は2万種類以上あり、全体の時価総額は100兆円を超えています。かつては規制の動きや混乱があった仮想通貨の世界も、現在はビットコイン、ビットコイン以外の仮想通貨を総称したオルトコイン、そして法定通貨と連動するステーブルコインの大きく3つに分かれています。
今年に入って、ビットコインの価格が上昇しています。2023年10月3日時点の価格は2万7000ドル台半ばで、2022年末と比べて6割以上高くなっています。この上昇率は日経平均株価(約2割)や米国のS&P500種株価指数(約1割)を大きく上回っているのです。金融緩和の下で起きた仮想通貨のバブル時期(2021年)と比べれば、価格は半分以下ですが、米国の仮想通貨交換所FTXトレーディング(2022年11月)の破綻後からは随分と持ち直している傾向が見られます。
仮想通貨を選ぶときのポイント
ビットコイン以外の仮想通貨の総称を「オルトコイン」といいます。リップル(XRP)やイーサリアム(ETH)などが代表的ですが、それ以外にも2万種類以上のオルトコインが存在するといわれています。
2万種類以上ある仮想通貨ですが、日本国内の取引所で購入できるのは、金融庁が許可した26銘柄のみです。海外の取引所と比べると格段に少ないですが、金融庁が許可しているという安心感はあるでしょう。
ではどのようなポイントで選ぶべきでしょうか?
用途や将来性を考える
仮想通貨はさまざまな目的で発行されるので、用途や将来性を考えることが大切です。例えば、決済手段に使われる代表的な仮想通貨は
- ビットコイン(BTC)
- ライトコイン(LTC)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
などがあります。
また、送金手段に使われる代表的な仮想通貨は
- リップル(XRP)
- ステラルーメン(XLM)
などが挙げられます。
その他にもNFTゲームで使われる
- サンド(SAND)
メタバースに関係する
- イーサリアム(ETH)
- エンジンコイン(ENJ)
なども有名です。
時価総額などの流動性を見る
発行された仮想通貨の量と価格を掛け合わせた金額が時価総額です。信頼性の高い通貨は時価総額や流動性も高いため、換金しやすいというメリットがあります。仮想通貨には「草コイン」と呼ばれ、時価総額は低いものの、値動きが大きい銘柄もありますが、ハイリスク・ハイリターンの投資対象なので、特に仮想通貨初心者にはおすすめできません。ただ、草コインを扱うのは海外の取引所が多く、日本の取引所ではほとんど扱われていません。
ビットコインやイーサリアム、リップルといった銘柄が時価総額上位の銘柄です。
今後、仮想通貨淘汰の時代になるか
仮想通貨の時価総額は100兆円を超えていますが、その3分の2をビットコインとイーサリアムの2種類が占めています。そして、SEC(米証券取引委員会)は、ビットコイン以外の仮想通貨を株式や債券のように登録制にし、証券取引所のような場で取引することを考えています。
そうなると仮想通貨として価値があるのはビットコインのみになり、そのほかの仮想通貨には規制が強まり、淘汰の時代がやってくる可能性があるのです。
SECが仮想通貨の規制を強めようとしているのは、昨年のFTXトレーディングの破綻があったからです。FTXは世界2位の規模を誇る取引所でしたが、2022年11月に破綻しました。FTXトレーディングの破綻ではユーザーが資金を引き出せなくなっただけでなく、ビットコインやイーサリアムの価格が急落しました。
仮想通貨の業者が本来守るべき規制をすり抜け、投資家の資金を危険にさらしていることをSECは問題視しているのです。一方、ビットコインは証券ではなく貴金属やエネルギーなどの「商品(コモディティー)」と米商品先物取引委員会(CFTC)は定義しています。仮想通貨の規制の流れは強まりつつも、ビットコインの存在には商品(コモディティー)としてのお墨付きが既に与えられているのです。
世界最大の資産運用会社「米ブラックロック」のラリー・フィンクCEOは、ビットコインを「デジタルゴールド」と呼び、金(ゴールド)と同じようにインフレヘッジの資産として有効と述べています。インフレ時代の投資先として、ビットコインが今後さらに注目される可能性は高くなっているといえるでしょう。
まとめ
米ブラックロックのフィンクCEOは、ビットコイン現物に投資するETF(上場投資信託)をSECに申請しており、承認されればビットコイン1強の時代が続く可能性は高くなります。しかし、もともとビットコインは、政府や銀行などの介入がなく、低コストで個人が送金できる新しい手段として作られたものです。ビットコインの現物ETFが認められることでより多くの資金が集まる可能性は高くなる一方、金融商品として規制が強化されるリスクもあります。ビットコインが金や原油のように商品(コモディティ)としてSECの監視下に入らず、決済手段として生き残るかどうかに注目したいところです。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。