円安続いても外貨預金のメリットはある?外国株や投資信託は?
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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、外貨を利用した手軽な資産運用の代表格、外貨預金に関する30代男性からのご相談です。円安が続いていますが、米ドル建ての外貨預金を今やるべきか気になっているとのこと。メリットやデメリット、リスクの考え方について見ていきましょう。
30代男性Aさんからの相談内容
米ドル建ての外貨預金が気になっています。円安になる前に作っておけば良かった…と思う日々ですが、外貨預金はどのような人に向いているのでしょうか?米国株の投資信託も為替の影響を受けることを考えると、外貨預金よりも投資信託での運用を優先した方が良い気がしています。外貨預金のメリットなどを教えてもらいたいです。
日本の円安が続いている背景
2019年12月以降、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るいました。その影響で2020年3月に世界中の株式市場で大幅な値下がりが発生し、一部では「コロナショック」ともいわれました。
このコロナショックからの経済危機を避けるため、世界中で金融緩和が行われ、マーケットに資金が流入し、値下がりした株価は上昇しました。また需要に対して供給が追い付かず、世界的にインフレ状態になり物価が上昇しました。
インフレ対策のため、欧米各国では利上げが行われた一方、日本ではマイナス金利が継続されていました。その結果、欧米との金利差が拡大し、対外的に円の価値が下がったため円安になり、そのまま円安状態が続いています。
外貨預金の4つの特徴
さてご相談にあった外貨預金とはどのようなものでしょうか?ここでは日本の銀行でできる外貨預金についてご紹介します。
1.日本円ではなく、アメリカドルやユーロなど通貨を選択して預けます。日本円で預ける方法と同じですが、通貨を選択し、外貨専用の口座を作成します。
2.日本円を預入通貨に両替し、口座に入金します。出金の際は日本円または預入通貨での引き出しもできます。
3.外貨預金のメリットは円預金よりも高い金利です。2024年4月を例にとってみると、預入期間1年の日本円の定期預金金利が0.025%であるのに対し、米ドル建て預入1年の定期預金の金利は4.500%となっています。この金利差は非常に魅力的です。
4.預入時よりも円安になっていれば、為替差益を得られます。例えば1ドル110円で預け、引き出し時のレートが1ドル150円だったとすると、1ドルあたり40円の為替差益が発生します。
外貨預金の3つのデメリット
日本円よりも高い金利が期待できる外貨預金ですが、デメリットもあります。
1.両替手数料が必要です。日本円⇒海外通貨、海外通貨⇒日本円と、預入時と引き出し時に両替手数料が必要です。銀行による違いや、窓口利用かネットバンキングかで異なりますが、窓口で手続きする場合は1ドルあたり1円の手数料を設定している銀行が多いようです。
2.預入時よりも円高になると、為替差損が発生することがあります。もし1ドル150円で預け、1ドル110円で払い出しとなった場合、1ドルあたり40円の為替差損が発生します。
3.外貨預金はペイオフの対象外です。仮に銀行が破綻した場合、日本円での預金なら1金融機関で預金者1人あたり元金1000万円とその利息が法的に守られていますが、外貨預金には法的な保証がありません。
どの金融商品にも同じことが言えますが、当然外貨預金にもデメリットがあります。特に為替変動の影響は場合によっては無視できないこともあるでしょう。そのため外貨預金はあくまでも余裕資金で行うことをおすすめします。
円安の今からドル建て外貨預金を始めるメリットはあるか?
Aさんは「円安前に始めれば良かった」ということですが、今からでも遅くはないと思います。2024年4月現在、1ドルは150円前後で推移していますが、このレートが円安だったかどうかの将来的な判断はわかりません。ひょっとしたら3年後は1ドル180円で「3年前の2024年4月の1ドル150円は、今より円高だった」ということも十分にありえます。また反対に1ドル110円になっていて為替差損が発生している可能性も考えられます。
いずれにしても為替レートの変動は予想できないので、日本円と分散して金融資産を保有するというのは、長期的な視点で見るとリスクヘッジの方法として有効でしょう。
また投資信託ではなく、預金を使うメリットとして、「預入金利が確定していること」が挙げられます。定期預金などの金利は預入期間中に変動しませんが、投資信託の運用率は約束されたものではないので、マーケット状況が悪ければ運用成績がマイナスになる可能性があります。
ただしマーケットが好調な場合、預入金利よりも投資信託のリターンの方が高いことも多いので、海外マーケットを対象にした投資信託と外貨預金を組み合わせるのも良いのではないでしょうか?
外貨預金がおすすめな人
金融資産に余裕があり、余裕資金を運用したい人に外貨預金は向いているでしょう。上述したように外貨預金は為替変動の影響を大きく受けるため、変動幅にもよりますが、預入時よりも円高になっていれば為替差損が発生します。そのため、ある程度日本円の資産を確保できており、「為替の状況が落ち着くまで外貨のままで保有しても問題ない」という人には向いているでしょう。
投資先が海外市場の投資信託
投資先が海外市場の投資信託は、為替レート変動の影響をそのまま受ける「為替ヘッジなし」という商品と、為替レート変動の影響を少なくする「為替ヘッジあり」の2種類に分かれます。
どちらもメリットとデメリットがありますが、為替変動のリスクを取ってでも高いリターンを目指すのであれば「為替ヘッジなし」が良いでしょう。逆に為替変動のリスクをなるべく低くしたければ、ヘッジコストが必要なため運用効率が下がりますが、「為替ヘッジあり」の商品が良いでしょう。
ちなみにネット証券で売上ランキングの上位を占めている投資信託は、大部分が海外株式を対象にし、なおかつ為替ヘッジをしていない商品です。
まとめ~外貨預金は資金分散先の一つに~
外貨預金の特徴を整理します。
1.日本円よりも金利が高い
2.為替の影響を受ける
3.両替手数料が必要
4.ペイオフの対象外
上記の4つの特徴を考えると、円安対策で外貨預金をするという選択は十分にありえると思います。ただし「為替が不利に動いた場合でも外貨預金が頼り」という状況は避けたいので、あくまでも余裕資金の分散先の一つという状態が望ましいでしょう。
また為替レートはシーソーのようなもので、どちらにレートが傾くかは予想できません。外貨預金・ドル建て保険・海外市場に投資する投資信託など、いずれの商品も為替レートの変動の影響を受けます。資産運用上のリスクを下げるため、日本円との分散や投資のタイミングの分散、投資商品の分散など「長期・分散・積み立て」で、外貨も含めた資産運用を計画されることをおすすめします。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。