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25歳からiDeCo、60歳での受取額はいくら?節税額も試算

ふやす 白浜 仁子

25歳からiDeCo、60歳での受取額はいくら?節税額も試算

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最近耳にすることが増えてきたiDeCo。この制度は、老後資金を準備するものですが、注目される理由は、税金の軽減効果が高いことです。では、どのくらい恩恵が受けられるのでしょうか。また、将来受け取れる金額は?ここでは、iDeCoを始めることで得られる税金の軽減効果や最終的にもらえる金額について深掘りしていきます。

iDeCoの掛金額の平均はいくら?

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」。老後のためにコツコツ積み立てていく制度です。積み立てできる金額は、加入する公的年金の種類や勤務先の年金制度の有無など立場によって上限額が決められています。

たとえば、会社員(企業年金なし)の場合は、月額2万3000円、会社員(企業年金あり)の場合や公務員は月額1万2000円、自営業者は6万8000円などです。iDeCoは、原則60歳まで払い出しができないため、無理のない金額で積み立てできることがポイントです。

では、みなさんはいくらずつ積み立てているのでしょうか。国のiDeCo公式サイトで公表されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況 (2024年2月)」によると、iDeCoの加入者は、現在324万人います。加入者全体で見た場合の掛金の平均額は、月額1万6045円です。

立場によって掛金の上限が異なりますので、自営業や会社員、公務員別の掛金平均額は次のようになります。

自営業者の掛金平均は3万円弱と会社員より高めです。これは、掛金上限が6万8000円であるからですが、そうはいっても、上限の半分程度であることが分かります。会社員は、企業年金がない会社の方は、上限が2万3000円と高いため企業年金ありの方より掛金の平均値も5000円ほど高くなっています。公務員は、会社員より平均値が抑えられているようです。iDeCoの掛金をいくらにするか迷う場合は参考にすると良いでしょう。

また、掛金は最低5000円から始められ、年に1回変更することも可能です。続けられるか不安な人は、最低額から初めて、家計に無理がないようなら途中で金額を増やすのも良いかもしれません。

また、子どもの教育費やマイホーム購入資金の準備などでお金がかかる時期は掛金をゼロにして、余裕ができてから再開することも可能です。ライフイベントに合わせて老後資金の準備を進めていきましょう。
 

25歳から60歳までの節税額・運用益をシミュレーション

投資で資産を増やす
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iDeCoの掛金はすべてが所得控除の対象となります。そこで、収入に対して納める所得税や住民税が軽減される効果と、運用して得られた利益に税金が掛からない効果を見ていきましょう。所得税率は、所得が増えると徐々に高くなり5~45%と幅があります。住民税(所得割)は一律10%です。運用益に掛かる税金は、通常20.315%となっています。

では、25歳からiDeCoを始めて、60歳で受け取ると掛金はいくら増えて、税金はいくら節税できるのでしょうか。以下の条件で見ていきましょう。

掛金月額1万円と2万3000円について概算で見ていきます。

<掛金月1万円(年間12万円)の場合>

➀掛金に対する税軽減効果(1年あたりの税金の軽減額)
年収400万円に対する税率は、所得税5%、住民税10%が目安です。つまり、

(掛金年額)12万円×(所得税)5%=6000円
(掛金年額)12万円×(住民税)10%=1万2000円
合計1万8000円

と計算され、1年間で1万8000円分の税負担が減ることになります。
25~60歳の35年間iDeCoに加入した場合、

1万8000円×35年=63万円

となり、「毎月1万円積み立てることで、60歳までに63万円」の税軽減効果が受けられます。

②運用益の非課税効果
次に運用の利益が非課税になる効果と、受取額についてです。

掛金は、総額420万円(年間12万円×35年)です。3%で運用できたら、35年間で利益が317万円得られる計算となります。

(掛金)420万円+(利益)317万円=737万円

つまり、60歳時には737万円に増えているということになります。

本来なら、利益に税金20.315%が掛かりますが、iDeCoは非課税です。非課税で受け取れることにより、課税される場合と比較して約64万円多く受け取れることになります。

<掛金月2万3000円(年間27万6000円)の場合>

➀掛金に対する税軽減効果(1年あたりの税金の軽減額)
年収400万円に対する税率は、所得税5%、住民税10%が目安です。つまり、

(掛金年額)27万6000円×(所得税)5%=1万3800円
(掛金年額)27万6000円×(住民税)10%=2万7600円
合計 4万1400円

と計算され、1年間で、4万1400円分の税負担が減ることになります。
25~60歳の35年間加入した場合は

4万1400円×35年=144万9000円

となり、「毎月2万3000円積み立てることで、60歳までに144万9000円」の税軽減効果が受けられます。

②運用益の非課税効果
掛金は、総額966万円(年間27万6000円×35年)です。

3%で35年間運用できたら利益が729万円得られる計算となります。

(掛金)966万円+(利益)729万円=1695万円

つまり60歳時には1695万円に増えているということになります。

通常は、利益に税金20.315%が掛かりますが、iDeCoは非課税です。非課税で受け取れることにより、課税される場合と比較して約148万円多く受け取れることになります。

所得税率は、累進課税で徐々に上がります。今回は、年収400万円でずっと変わらない前提となっていますが、徐々に年収アップということもあるでしょう。年収が増えるとiDeCoの掛金に対する税軽減効果はさらに高まります。また、運用利回りが高くなれば、それだけ資産を大きく増やすことができ、利益に対する非課税も大きくなります。

iDeCoの税控除による還付金の受け取り方 

金色のコイン
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iDeCoに掛金を出すと、全額所得控除の対象となり税金の負担が減ります。では、具体的にどのように税金が戻ってくるのか確認していきましょう。

まず、所得税からです。会社員は年末調整、自営業者は確定申告で手続きをします。会社員は、年末調整の時に、扶養の申請や、生命保険料控除の書類を提出して控除を受けているのではないでしょうか。

iDeCoも同様に、秋頃に届くiDeCoの控除証明書を職場に提出します。その時に記入する書類は、「給与所得者の保険料控除申告書」です。「小規模企業共済等掛金控除」という欄に記載します。職場に提出すると、年末調整で所得税が再計算され、給与等に上乗せされて還付を受けることができます。確定申告の場合も記載するのは「小規模企業共済等掛金控除」欄です。還付は1カ月程度で、税務署に申請した口座に振り込まれます。

次に住民税です。住民税は、今年の所得を基に計算した税を翌年の6月以降に支払います。そのため、所得税のように税金が戻ってくるのではなく、これから支払う住民税が安くなるということになります。

iDeCoの受け取り方法は2つ

最後に、iDeCoを受け取る時の税金について解説します。iDeCoは、60歳以降75歳までの間に請求して受け取りを始めます。一括でまとめて受け取る方法や、年金として毎月受け取る方法が選択でき、通常は併用も可能です。

ここで知っておきたいのは、出口での税金の考え方です。

一括で受け取る場合は、税務上、退職金と同じ取り扱いです。そのため、受取時の税計算では、退職所得控除が適用されます。前項でのシミュレーションのようにiDeCoに35年間積み立てた場合の退職所得控除額は、1850万円です。

最初の20年間は1年積み立てるごとに40万円の控除、20年を超えると1年あたり70万円の控除額が積み上がる計算となります(40万円×20年+70万円×15年=1850万円)。

毎月2万3000円を35年間積み立て、3%で運用できた場合は受取額が約1695万円でしたので、退職所得控除内に収まっている。つまり、税金は掛からずに受け取れるということになります。もし、もっと大きく増えていた場合は、退職所得控除を超えた分を半分にして税金を計算するので、給与などの税金の計算よりずいぶん優遇されています。

また、年金で受け取る場合に受けられる控除は、公的年金等控除です。控除額は年金額によって異なりますが、60歳から受け取る場合、最低でも毎年60万円は差し引けるようになっています。なお、退職所得控除や公的年金等控除は、その他の退職金や年金も考慮しながら控除されます。受け取りは先のことになりますので、実際はその時の税法やライフプランを考えて選択していくことになるでしょう。

まとめ

ここまで、iDeCoについてみてきました。ポイントをまとめます。

iDeCoを利用する場合は、今回のシミュレーションを目安のひとつとして、ライフプランに合わせて掛金を考えてみてください。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

iDeCoに関するQ&A

Q:個人年金保険に加入しているのですが、iDeCo(確定拠出年金)に入ることはできますか?

A:加入可能です。個人年金保険は民間の保険会社が提供するもの、確定拠出年金は国が提供する制度のため全く異なるものです。

Q:職場に、企業型確定拠出年金があります。マッチング拠出で掛金の上乗せをしていますが、iDeCoにも加入できますか?

A:マッチング拠出と、iDeCoへの拠出は同時にできません。どちらかを選択しましょう。