離婚して母子家庭に。家計の注意点と手当・支援制度が知りたい!
目次
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は34歳会社員女性のYさん。7歳の息子さんと実家で暮らしているシングルマザーの家計簿です。ひとり親のために用意された公的支援制度を紹介したうえで、家計管理のポイントをご紹介します。
34歳会社員女性Yさんの相談内容
先月離婚をしました。養育費は話し合いの結果、元夫が月額4万円を子供が18歳になるまで可能な限り払ってくれることになりました。これまでは元夫の転職が多かったことや、私が働いていない時期もあり、少し貯めては生活のために貯金を切り崩すようなことが多く貯金があまりできていません。
養育費はできるだけ全部貯金していこうと思っています。児童扶養手当は手続き中ですが昨年収入が少なかったので4万5500円受け取れそうですが、来年は減額される見込みです。子供が中学生になるまでに実家を出て、自分で部屋を借りて生活していきたいと考えています。家計のことで気をつけることなど教えてください。
Yさんの家計簿は…?
収入は給与の手取りが16万3000円、養育費4万円、児童手当1万円、合計額が21万3000円。今月は収入の約47%の10万円貯金できました。現在の貯金額は65万円です。
ひとり親のための手当を確認しよう~主要なもの4選
シングルマザー、シングルファーザーのための様々な公的支援が準備されています。まずは経済的な支援をご紹介します。
経済的な支援
児童扶養手当
「ひとり親」に支払われる手当。親の収入によって支給金額が異なり、一定以上の収入があると支給対象から外れます。ひとり親でなくても、父親・母親に重度の障害がある場合など親が揃っていても対象となる場合があります。
18歳までの子を持つ「ひとり親」家庭が対象となり、障害を持つこどもの場合には20歳未満までの家庭が対象となります。手当は子供が18歳になる年度の3月31日まで支給され、奇数月に2カ月分ずつ振り込まれます。
【窓口】住民票のある自治体の福祉課、子育て支援課
※金額は2024年4月分以降の額(毎年度変動)
母子父子寡婦福祉支援貸付金
ひとり親家庭の父母に対し、子供の進学にかかる費用や、自分の資格取得、引っ越し費用などを貸し付ける制度です。資金の種類や貸付方法によっては無利子で貸付を受けられます。貸付金の種類は自治体により異なります。20歳未満の児童を扶養しているひとり親、寡婦、父母のいない児童、ひとり親家庭の児童が対象となります。
【窓口】住民票のある自治体の福祉課、子育て支援課
医療費の支援制度
ひとり親家族等医療費助成制度
ひとり親の、親と子供の医療費の一部を自治体が助成する制度です。「乳児(こども)医療費助成制度」は子供の医療費が助成の対象ですが、ひとり親の場合には子供だけではなく親の医療費に対しても助成されます。助成内容は、自治体によって異なります。
【窓口】住民票のある自治体の窓口
参考:福岡市ひとり親家庭等医療費助成制度
住まいの支援
Yさんはお子さんが中学生になるまでに実家を出て暮らしたいとお考えですので、住まいについての支援も確認しておきましょう。
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業(住宅支援資金等貸付)
自立に向けて、住宅の借り上げに必要となる資金を貸してもらえる制度です。貸付対象者は児童扶養手当受給者(同等の所得水準の人も含む)で、自治体などが指定する自立支援プログラムの策定を受けて取り組んでいるなどの条件があります。
【窓口】都道府県や指定都市の担当課
まずは利用できるものがないか制度の確認を
上記の様々な支援制度の利用については、自分で申請手続きを行う必要があります。制度の概要を確認し、利用できる可能性がある場合には問い合わせて利用するようにしましょう。
シングルマザー、シングルファーザーが利用できる制度が、こども家庭庁の暮らし応援サイト「あなたの支え」にまとめられています。支援が一覧にまとめられていますので、利用できる制度がないかご確認ください。
こども家庭庁:カテゴリ別支援事業一覧
公的保障を確認し、民間保険の見直しも
Yさんは離婚というライフプランの変化がありました。今までは「がん保険」とご自分の老後資金のための「養老保険」に加入されていたとのことです。これから1人でお子さんが自立するまでお子さんの生活を支えていくことを考えると、Yさんが働けなくなった時やお子さんが自立する前にYさんが亡くなってしまった時の保障などを検討する必要があります。
Yさんが亡くなった際に遺族が受け取ることのできる「遺族年金」、病気やけがで生活や仕事が制限されるようになった際に受け取れる「障害年金」の公的な保障内容を確認した上で保険を検討することが大切です。
ひとり親のための医療費助成制度などを利用することで医療費については自己負担の上限も大きく軽減されます。ライフプラン変化後の公的保障を踏まえた上で民間の保険を選ぶことをおすすめします。
死亡保険金受取人を指定する際の注意点
離婚後に死亡保障のある保険に加入されていた場合、死亡保険金受取人を「配偶者」から「子」に変更されるケースがあります。この際、「子」が未成年の場合は子供の「親権者」または「未成年後見人」が保険金請求手続きを行うことが必要になります。
自分が亡くなった時に子供の養育を誰に任せたいかなど十分検討し、請求手続きなどを事前に保険会社等に確認し、死亡保険金受取人にも保障内容を伝えておくことが大切です。保険に加入しただけで安心せず、大切な人を守るためにしっかり受け取れる準備をしておくことをご検討ください。
家計管理についてのアドバイス
今月は収入の約半分の月10万円を貯金できたとのことです。児童扶養手当は所得によって金額が変わります。児童扶養手当の所得額には、養育費の8割が加算されるため、養育費の金額や今後のYさんの収入によっては児童扶養手当の受給額が減額されたり、支給停止になったりすることもあります。
仮にこれからお子さんが12歳になるまでの5年間、月額10万円の貯金を継続できるとすると
10万円×12カ月×5年=600万円
を貯めることができます。
月2万円収入を増やすことができれば、12万円貯金ができることになります。家賃を支払った上で貯金ができるように、ご実家で生活する間に基本の生活費をコンパクトにおさえる習慣作りを意識してください。生活費を安定させることができれば、貯蓄力がつき自信も湧いてくると思います。住まい、スキルアップの支援なども詳細を確認し、利用されることをおすすめします。
子育てを支援する「児童手当」も2024年10月からは18歳まで支給されるなど、以前より手厚くなっています。今後も公的な制度の変化にアンテナを立てて確認を続けることを忘れないようにしましょう。
アドバイスを受けたYさん談
こども家庭庁がどんなことをするところか知りませんでしたが、シングルマザーが利用できる制度が思いのほか多くあり、母子家庭向けの就労支援も複数あるようだったので詳細を確認してスキルアップを図りたいと思います。
離婚を決めた決断を、あとで自分が良かったと思えるようにしていきたいです。まず、子供と2人で自立できるよう最低月10万円の貯金を継続していこうと思います。
保険についても母子医療等、医療費の助成制度の内容を踏まえた上で見直しを早急に行いたいと思います。死亡保険金受取人も受取時にどのような手続きが必要か、手続きの内容をよく理解していなかったので家族と相談して検討しようと思います。
今回、受取人のこともそうですが、自分一人で考えていても解決できないことが多いことに気がつきました。自分でできないことは抱え込まず相談しながら決めていこうと思います。
家計簿診断を終えて
生活の中で大切にしていることとして「子供の前では泣かないようにする」とありましたが、お金や子育て、生活のことなど不安に感じることも多いと思います。どうぞおひとりで抱え込まず頑張りすぎないようになさってください。
結婚、離婚、出産など特に女性は男性に比べてライフプランの変更の機会が多いかもしれません。ライフプランの変更により、基本の社会保障の内容が大きく変わります。変更の都度、必要な手続きを確認し、手続きや申請の漏れがないように気をつけたいですね。