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国の社会保険制度、低評価の声が多いが実はとても助かる仕組みです

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

国の社会保険制度、低評価の声が多いが実はとても助かる仕組みです

年金、健康保険……批判の声が多いがなぜ若い人ほど不公平感を感じるのか

年金制度、健康保険制度、いずれも批判の声が多い仕組みです。ちょっと前には健康保険制度の高額療養費制度の見直しについて批判が高まり、引き上げは延期されることになりました。

年金制度についても少し前に、若い世代の審議会委員が、SNSで強烈なバッシングを受け、炎上騒動となりました(恐怖や暴力を伴う個人攻撃はいかなる理由があっても許されません)。この時寄せられたレスには誤解による悪意が多く含まれているようでした。

若い世代ほど社会保障制度に不信感があるのはある意味当然かもしれません。自分自身は負担が多いばかりで、給付で助けられることがほとんどなく、制度のメリットを実感しにくいからです。

年金制度から若い世代が給付を受けるケースは「障害年金」と「遺族年金」がありますが、多くの方は受け取ることがありません。「老齢年金」は原則65歳からですからあまりにも遠い先のことです。

健康保険は、若い世代でも病気やケガとなれば給付を受けることができますが、病気になる確率が相対的に低いため、若者は負担以上の給付を受けることがまずありません。

社会保障制度の「収支」を示した国のグラフ資料がありますが、「未成年時」と「老齢期」にほとんどの給付を受けることが分かっています。言い換えれば健康で働き盛りの「現役世代」は負担の方が多く、どうしても不公平感が高まってしまうのです。

世界的に見ると優れた日本の社会保険制度

給付と負担のバランスについて不満をあげるだけでなく、制度的に劣っているとか破綻しているというような批判もあります。

SNSや動画配信など、ネットで流れてくる情報だけ見ていると、日本の社会保障制度は世界的にも劣っているように見えます。しかし、意図的に切り取った拡散情報も多く見受けられますので注意が必要です。

実際のところは日本の社会保障制度は悪いものではありません。

健康保険制度、日本の場合は皆保険制度(誰でも加入する)の仕組みにしていることで、「医療保険がカバーされていない」という人は基本的にいません。

アメリカの場合だと、民間保険の加入有無が医療費負担を左右します。医療ドラマでは、入院する時に保険の有無や確認を治療の前に行われる姿がよく描かれます。指を切った時「医療技術的には治せるが、あなたはその医療費を払えるのか、それを確認するのが先だ」となるわけです。これは果たして日本より優れた仕組みでしょうか。

年金保険制度、日本の制度は世界トップクラスの長寿国であり、健康寿命も世界的にトップの国(74歳)でありながら、主要先進国では早い給付開始となっています(標準が65歳)。

実は健康寿命が66歳位の国で、公的年金開始を67歳としている国もあります(アメリカの例)。本当に劣悪な年金制度であるなら、日本の年金は給付スタートを74歳としているはずです。

「年金積立金が足りない」という人もいますが、日本の積立準備額は世界2位です(1位はアメリカ)。先進国、新興国問わずほとんどの国は年金積立金はほぼゼロだったりします。

いや、日本より充実した社会保障をうたう国もあるじゃないか、という人もいるでしょうが、そうした国の多くは日本よりも高い負担を現役世代が行っています(高負担高福祉)。例えば社会保障が充実しているとして比較されるデンマークの国民負担率は約6割ですが、日本は45.8%です(2024年度)。

日本の場合は負担も中位、給付も中位の中負担中福祉になっていると言えます(アメリカは35%弱となっており低負担低福祉です。自分のリスクは自分で備える国となります)。

日本の社会保障制度、確かに問題はゼロではありません。しかし世界的にみれば、日本の社会保障制度は実は「うまくやっている」制度なのです。

病気、失職、子育て、老後、生活の困ったシーンを支える

社会保障制度の大事な役割は、困った時にどう私たちを支えてくれるのかということです。

などなど、人生のいろんなシーンを社会保障が支えてくれています。

普通に働いている時には「負担ばかりでダメな制度だ」と思っていても、もし生活に困ったことがあったら、検索をしてみてください。もしかすると、社会保障制度があなたを支えてくれるかもしれません。その時はぜひ、制度の支えを頼って、生活の建て直しや療養に努めてください。

——あなたが「年金とか健保とか負担ばかりで何もいいことないじゃん」と思っているなら、それは健康で元気に毎日を送れている、という幸せの証なのかもしれません。視点を変えて考えてみてはどうでしょうか。