結婚しない選択もアリ?と思ったら20代から考える老後の6つのこと

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監修・ライター
「将来、“おひとりさま”で自由に生きていくのもありかもしれない」といった価値観を持つ人が増えています。では、老後の生活費や、健康維持、孤独への備えなど、「独身を前提としたライフプラン」について大まかにでも思いを巡らせてみたことはありますか?
本記事では充実した“おひとりさまライフ”を送るために、今から考えておきたい6つのことを紹介します。
1.独身で老後を過ごすには生活費はいくら必要?
おひとりさまで老後を迎える場合、生活費は家族による補完がなく、自分ひとりですべて賄う必要があります。
総務省が2024年に実施した「家計調査」によれば、65歳以上の単身女性の平均支出は月額で約15万6000円です。このうち住居費は約1万3000円と少なめですので、賃貸暮らしを想定するなら20万円はみておいた方がよいでしょう。
収入については、厚生労働省が2023年に公開した「年金制度基礎調査」の結果によれば、65歳以上の未婚女性の年金受給額は月平均で約11万7000円です。
また65歳~74歳では、年金のほかに毎月およそ6万6000円~8万4000円の収入を働くなどして得ていることが分かります。したがって、毎月の収入は18万3000円~20万1000円となります。
生活費を約20万円、老後の生活が65歳~90歳までの25年間続くとして、不足額を計算してみましょう。
74歳までの10年間(年金に加えて働くなどして月収18万3000円と仮定)
(20万円-18万3000円)×12カ月×10年=204万円
75歳からの15年間(公的年金受給のみによる月収11万7000円と仮定)
(20万円-11万7000円)×12カ月×15年=1494万円
合計:204万円+1494万円=1698万円
この1698万円に加えて、医療費と介護費を考慮します。個人差が大きいため一概にいくらとは言えませんが、介護施設への入居を想定するなら1000万~2000万円を上乗せして準備できると理想と言われています。
まとめると、“おひとりさま”の老後資金は2700万円~3700万円ほどが目安と言えそうです。
2.20代におすすめのお金の備えと資産形成

老後に向けた資産形成は早く始めるほど有利です。まずは少額でも良いので、投資の習慣を身につけましょう。
選択肢としては、NISAでの積立投資またはiDeCoがあります。iDeCoは原則として60歳になるまで資産を引き出せませんので、20代で始めるならNISAがおすすめです。
例えば25歳から65歳までの40年間、年利4%で月1万円ずつ積み立てた場合、約1243万円になります。同じ条件で2000万円を目指すなら月々1万6000円ほど、3000万円を目指すなら毎月2万5000円ほどの積み立てが必要です。もし毎月3万円積み立てられたら、40年後には3728万円となります。
【毎月の積立額と40年後の資産額】年利4%の場合
なお、NISAの積立額はいつでも変更できます。昇給などで余裕ができてきたら増額も視野に入れ、無理のない範囲で長くコツコツ積み立て続けることが資産形成のポイントです。
3.健康リスク・医療保険との向き合い方
おひとりさまの場合は特に、病気やケガをした時への備えも大切です。
医療保険に加入しておけば、入院や手術などの費用をカバーできます。また就業不能保険は病気やケガで働けなくなった時の生活費を保障してくれます。
保険を検討する時はあれもこれもと保障を厚くしたくなりますが、20代のうちは病気にかかるリスクもそう高くありません。備えはもちろん必要ですが、保険に多くのお金をかけるより、貯蓄や運用で手元の現金を増やす方が、柔軟性は高まります。
そもそも、何より健康の維持を最優先に考えたいところです。医療費を抑えられる上、定年後も健康であれば働けるため、生活費の足しにもなります。
体調管理や生活習慣の見直しも、老後への備えのひとつです。
4.住まいは賃貸?持ち家?それぞれのメリット・デメリット

持ち家というと「自分で買った家」をイメージしがちですが、独身の老後では「親の持ち家=実家」も選択肢に入ります。65歳以上の単身女性の住居費が低かったのも、実家暮らしの人が多いためだと考えられます。
この点を考慮して、賃貸と持ち家(自分で買った家/実家)のメリットとデメリットを簡単に整理してみましょう。
賃貸のメリットは、ライフスタイルや価値観、収入の変化に応じて住み替えやすい点です。一方、継続的な家賃の支払いにより、家計の負担が大きくなる恐れがあります。
自分で家を買う場合はローンを完済すれば家計の負担がぐっと軽くなる点がメリットです。デメリットは、定期的なメンテナンスが必要な点と、住み替えにくさが挙げられます。
最後に、実家暮らしは住居費の負担が小さい点がメリットです。ただし、親の介護など別の負担の発生を想定しておく必要があります。
【住まい別のメリット・デメリット】
人生は何が起こるか分かりません。結婚や介護施設へ入居する可能性を踏まえると、賃貸の方が身軽に動きやすいと言えるでしょう。
住まいの購入を考えるなら、住みたいエリアを早めに定めて不動産価格の相場を把握し、年金生活に入る前(完全リタイア)までにローンを完済できるよう逆算した行動が重要です。
とはいえ、今すぐにはどうするか決められないかもしれません。そうした方は将来の選択肢を広く持てるよう、ひとまず貯蓄や投資に励んでおくのも有効だと言えるでしょう。
5.終活・支援サービスで「頼れる仕組み」を持つ
さて、“おひとりさま”の老後は「いざという時に頼れる人の不在」が大きな不安となりがちです。高齢化が進む昨今では、行政や民間がさまざまな支援サービスを提供しています。中でも終活支援サービスと、地域包括支援センターが代表的です。
終活支援サービスでは、遺産や介護・延命治療の希望、遺言作成、葬儀などについての相談を受け付けています。
また、各自治体にある地域包括支援センターは、高齢者の生活を総合的に支えるための相談窓口です。保健師や社会福祉士などの専門家が連携しながら、高齢者が安心して生活を営めるようサポートしています。
今の20代の方が高齢者となる40年後、50年後には、こうしたサービスはさらに充実していくと考えられます。高齢者を支援してくれるサービスがあるということを、まずは知っておきましょう。
6.孤独の防ぎ方、生きがいの設計
ひとりで過ごす老後は、自由でありながら孤独とも隣り合わせと言えます。
孤独感を和らげるには、やはり趣味や地域のコミュニティなどを通じた人との繋がりの確保・維持が大切です。
とはいえ、20代の今から老後の趣味や交友関係を作るといっても、現実的にはなかなか難しいでしょう。
そこで、現段階では「定年後も働ける程度の健康の維持」を目標にすることを提案します。健康であれば仕事もでき、趣味として楽しめることの幅も広がるためです。仕事や趣味により、人との接点も持ち続けやすくなります。
実際、年齢を重ねてから新しい趣味を見つけて仲間をつくる方も大勢いらっしゃいます。気力や体力をできるだけ維持し、活動の可能性を狭めない意識を持ちましょう。
まとめ
最後に、本記事の要点を振り返っておきましょう。
・おひとりさまの老後資金は2700万円~3700万円ほどの準備が理想
・老後資金の積み立ては早く始めるほど有利
・経済的・心理的な不安を軽減するためには健康維持の意識も大切
20代にとって老後はまだまだ先の話ですが、“おひとりさま”の自由な老後生活を謳歌するために、今からできることもあります。積み立てを始める、生活習慣を見直すなど、小さなことでも行動に移していきましょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします