トランプ関税15%がもたらす物価上昇は家計へも直撃、どう備える?

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米国大統領のトランプ氏は、日本から米国へ輸出される製品の関税を大幅に引き上げ、平均15%程度とする方針を示しました。自動車や食品などが対象となれば、日本企業の米国市場での販売価格は上昇するため、競争力低下による売上減が懸念されます。
こうした動きは企業収益や雇用にも影響し、最終的には日本の家計にも波及しかねません。そこで本記事では、この背景や影響、そして家計の守り方などについて解説します。
米国が関税政策を採用した背景

今回のトランプ関税の導入により、米国は、自国の産業保護や雇用維持を目指しています。その背景にあるのは、主に以下の3つです。
①米国産業の競争力低下と保護主義の高まり
GAFAをはじめとする新興IT企業の勃興に反し、米国製造業の空洞化や貿易赤字の拡大は、長年にわたり課題となっていました。特に自動車や鉄鋼、半導体分野では、日本や中国、ドイツなどとの価格競争が激化し、国内メーカーのシェアが低下しています。
こうした状況を受け、米国政府は国内雇用を守るために輸入品へ高関税を課し、海外製品よりも米国製品を優位にする保護主義的な政策を進めたわけです。この流れは、前回のトランプ政権時代から続く特徴的な経済戦略と言えるでしょう。
②対日・対中貿易の不均衡是正
米国は、長年、日本や中国との貿易で大きな赤字を抱えてきました。例えば、日本とは、自動車・部品・電子機器などで輸入額が輸出額を大きく上回っています。
トランプ政権はこれを「不公平な取引」と位置づけ、関税引き上げを通じて輸入額の抑制と国内生産への回帰を狙っています。今回の日本向け15%関税構想も、その延長線上にあると言えるでしょう。
➂政治的アピールとしての関税政策
関税政策は、単なる経済施策に留まらず、国内向けの政治的アピールとしても活用されています。米国では、産業保護の姿勢を示すことで、製造業の盛んな州や労働者層からの支持を得やすくなります。トランプ大統領は、選挙戦でも「外国からの不当な競争から米国を守る」と繰り返し強調しており、関税は有権者へのメッセージ性も強い政策手段となっています。
15%関税の意味とは?

追加関税として新たに設けられた15%は、全品目に一律でかかるわけではありません。これまで無税だった主要輸出品にも新たに課される追加関税であり、その影響は数字以上に大きいものとなります。
トランプ関税前の日本製品への関税率
JETROによると、これまで、日本から米国へ輸出される多くの品目は、関税がゼロ、あるいはごく低い税率で取引されてきました。例えば、自動車は2.5%、自動車部品や電子機器などは無税のものが多く、全品目ベースの加重平均関税率は1%台に留まっていました。
このため、日本企業は関税負担をほとんど意識せず米国市場で競争できていたのです。
15%関税が加わるとどう変わるのか
今回の方針では、これまで無税だった品目にも最大15%の関税が課されます。特に、自動車や部品といった輸出額の大きい品目に適用されれば、加重平均で見た実質的な関税率は現状の数倍に跳ね上がる可能性があります。
正確な数値はまだ公表されていませんが、単純平均ではなく輸入額を加味して計算する加重平均で見ると、その負担増は相当な規模になると考えられます。こうした関税が価格転嫁されれば、米国での販売価格上昇やシェア低下に繋がる恐れがあり、日本企業にとっては大きな経営リスクとなるでしょう。
追加関税が国内経済に及ぼす影響

トランプ関税の導入による日本企業の米国市場での競争力低下は、企業収益の低下はもちろんのこと、日本国内の企業活動や雇用、地域経済にも波及します。
企業業績への影響
15%の関税により米国向け輸出が落ち込むと、まず、日本企業の売上高が減少します。とくに米国への輸出依存度が高い業種では、国内販売だけでは減った分を補えないため、利益率が大きく下がることになるでしょう。
例えば、自動車メーカーが米国での販売台数を減らせば、その減収分は直接決算に響きます。さらに、米国市場での競争力を維持するために価格を据え置こうとすれば、関税分を企業が負担することになり、その分利益が削られます。
こうした追加関税分の負担は、大企業だけには留まりません。関連する部品メーカーや原材料供給業者も、輸出が減れば製造ラインの稼働率を下げざるを得なくなるため、仕入れや発注が減ります。
従って、一次下請け、二次下請けの企業にまで、売上減少の連鎖が広がります。さらに、業績悪化によって新規投資や研究開発への予算が削られれば、長期的な競争力にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
このように、追加関税による米国市場での不振は、単なる販売減少に留まらず、国内の産業構造や技術革新のスピードまでも鈍らせる可能性があるのです。
雇用・地域経済への波及効果
輸出減少による企業業績の悪化は、必然的に日本国内の雇用にも影響を及ぼします。まず、大手メーカーが米国向け生産を減らせば、日本国内の工場の稼働時間やシフトを短縮する必要が出てきます。
これが続けば、まず契約社員や派遣社員など非正規雇用の削減が行われ、次いで正社員の配置転換や早期退職制度の実施といった形で正規雇用者の雇用全体が縮小していくことになるでしょう。特に、製造拠点が地域経済の中心にある地方都市では、その影響は深刻です。
また、生産縮小は雇用だけでなく、地元の関連サービス業にも波及します。例えば、工場で働く従業員が減れば、周辺の飲食店や小売店の売上が落ちるため、不動産需要の減退や地域税収の減少にも繋がります。従って、関税の影響は一企業の問題に留まらず、地域社会全体の経済循環を弱める要因にもなりかねません。
加えて、将来への不安が広がると、各家庭は支出を抑える傾向を強めます。これが、さらなる国内消費の停滞を招くと、輸出不振と内需低迷が同時進行する悪循環に陥ってしまいます。
このように、トランプ関税は単なる国際貿易上の問題ではなく、日本国内の雇用や地域活力にも直結する重大な経済課題となります。
家計の対策
トランプ関税は日本の家庭に直接課されるものではありませんが、たとえば為替に影響が生じれば、輸入品や生活必需品の価格がじわじわと上がるなど、間接的な影響は避けられません。特に、海外原材料を使った食品や日用品、電化製品などは、値上がりの可能性があります。
こうした状況に備えるには、まず毎月の支出を見直し、値上げの影響を受けにくい国産品や代替品を採り入れることが有効です。また、まとめ買いや特売の活用、ポイント還元の利用、光熱費の節約といった小さな工夫を積み重ねることで、生活コストの上昇をある程度抑えることができるでしょう。
ただし、残念ながら家庭でできる直接的な対策は、今のところほとんど見当たりません。しかしながら、間接的な影響に備え、今のうちから生活コストを抑える準備はしておいた方が良いでしょう。
結局、誰が一番損をするのか

最後に、このトランプ関税によって誰が一番損をするのかについて考えてみます。
一番損をするのは米国の消費者
トランプ関税の最大の負担者は、実は、高い関税を課された輸入品を購入する米国の消費者です。関税は企業が一時的に負担したとしても、最終的には販売価格に転嫁されるため、消費者が支払わなければなりません。
この対象品目が広がれば、日用品から家電・衣料まで、多くの商品やサービスの価格が上昇します。さらに、関税により外国からの輸入製品が値上げされれば、国内製品もそれに追随した結果、物価全体の上昇を招くかもしれません。
こうした状況に賃金の伸びが追いつかなければ、実質購買力は低下し、生活水準が押し下げられてしまいます。結果として、トランプ大統領による関税政策は、守るはずだった米国内の産業以上に、米国の消費者全体の家計を直撃する可能性が高いのです。
そして世界全体に波及する
米国経済の停滞は、世界経済に連鎖的な悪影響を及ぼします。米国は世界最大の輸入国であるため、消費の減速は、中国、カナダ、メキシコ、日本など主要貿易国の輸出減少を招きます。
世界貿易機関(WTO)の予測でも、米国発の需要縮小は世界貿易量を押し下げる可能性が指摘されています。日本の場合、上述のように、米国向け輸出企業の売上減や株価下落を通じて経済全体に影響が及び、最終的には雇用や賃金、家計の消費活動にも波及することが想定されます。
従って、日本の家計でも、物価や景気変動という形で負担を強いられることは避けられません。そのため、今のうちから改めて支出などを見直し、関税ショックを吸収できる体制を作っておくと良いでしょう。