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「保険で貯蓄」は本当に有効?メリットデメリットをFPが考察

そなえる 中村 賢司

「保険で貯蓄」は本当に有効?メリットデメリットをFPが考察

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生命保険を大きく2つに分けると、掛け捨てタイプと積み立てタイプがあります。積み立てタイプの生命保険で代表的な商品は、終身保険、年金保険、養老保険です。

この中でも加入する人が多く、人気が高いのは「終身保険」です。この終身保険で老後資金や教育資金を積み立て、貯蓄しているという人が多くおられます。

しかし、本当に貯蓄代わりとして終身保険を利用することは有効なのでしょうか。今回はそんな保険で貯蓄をするということのメリット・デメリットについて解説していきます。

貯金代わりにおすすめの生命保険って?掛け捨てと違う貯蓄型保険とは

1.終身保険の仕組みと「低解約返戻金型」

家族でそなえる
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終身保険とは、ある一定期間保険料を払い込むことで一生涯保障が続くタイプの保険のことをいいます。一生涯保障が続くので、その名称が「終身保険」となっています。ということは人間いつか寿命がくるので、必ず遺族がその保険金を受け取ることができるわけです。

保険会社側からすると必ず遺族に保険金を支払わなければいけないので、その支払い準備を会社内部で行っています。ですから、終身保険を途中で解約すると、その会社内部で積み立てていた準備金が「解約返戻金」として戻ってきます。つまり、終身保険は掛け捨てではなく、貯蓄タイプの保険に分類されるわけです。

その解約して戻ってくる戻り率を「返戻率」といいます。四半世紀前のバブルの頃、終身保険の返戻率はとても高かったのですが、最近は低金利の影響で返戻率はとても低くなりました。

それでも銀行預金に預けているよりは増えるので、貯蓄代わりとして終身保険に加入する人はたくさんおられます。

一般的に保険料の払込期間を長くすれば保険料は安くなり、払込期間を短くすれば高くなります。保険料が高くなる分、トータルで支払う保険料は低く抑えられますので払込期間が短い方が返戻率は高くなります。

その払込期間中、解約返戻金の額を低く抑えたタイプを「低解約返戻金型終身保険」といいます。

従来の終身保険に比べ、払込期間中の解約返戻金を低く設定しているため、保険料は安くなります。よってトータルで支払う保険料も安くなり、従来の終身保険より解約返戻金の返戻率が良くなります。実際貯蓄代わりとして終身保険に加入している人は、このタイプがほとんどです。

2.終身保険で貯蓄するメリット

貯蓄
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銀行預金が「0.001%」という今の低金利時代、払った額のおよそ1.1倍戻ってくるときくととても魅力的ですね。保険会社の予定利率にもよりますが、おおむね0.5%~1.0%位の年利率となっています。バブルの時代はこの予定利率が今よりもはるかに高く、この時期に加入した終身保険は支払った保険料の約2倍の解約返戻金が受け取ることができました。いわゆる「お宝保険」ですね。

よく「預金は三角、保険は四角」といわれます。

縦軸を金額、横軸を時間としたグラフで考えてみましょう。貯金は右肩上がりに増えていきます(三角形)が、保険は加入直後から一定の保障が受けられます(四角形)。

預金と保険でそれぞれ毎月一定額を積み立てた場合、積み立てている途中にその方が亡くなった場合、預金は積み立てた額しか戻ってきませんが、保険は積み立てた額以上の保険金が遺族に対して支払われます。

保険で貯蓄する魅力は、このように保障が付いている点にあるかもしれません。

また今の低金利時代に金利が固定される保険を選択したくないという方は、「利率変動タイプ」の終身保険や「変額保険タイプ」の終身保険に加入すると良いでしょう。今後の金利上昇やインフレにも対応するので安心ですね。

3.終身保険で貯蓄するデメリット

保険で貯蓄する際の最大の注意点は、短期間での解約は元本割れしてしまう、言いかえれば損をしてしまうということです。契約してからある一定期間、どこの保険会社も解約控除という手数料を取ります。

また、純粋な貯蓄ではないので保障部分に保険料の一部が充てられてしまいます。保険料がまるまる貯蓄に回らないことは注意すべき点です。

また、先ほどもお話したとおり、低金利時代の今、固定金利タイプの終身保険で貯蓄をすると、今後の金利上昇やインフレに対応することができません。これもまた大きなデメリットといえるでしょう。

将来の金利上昇やインフレを懸念される人は、利率変動タイプや変額タイプの終身保険を選択するか、保険以外の資産運用を検討した方が良いでしょう。

4.学資保険の代わりになる終身保険

学費
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今までみてきたようなメリットやデメリットを考慮しながら、終身保険を「学資保険」代わりに選択する人もたくさんいます。

低金利の影響で学資保険の返戻率もどんどん悪くなっていますので、この終身保険のメリットを活かせば充分学資保険の代わりになると思います。

学資保険代わりに終身保険を契約する場合、払込期間は短く設定するよう心掛けてください。

お子さんが0歳の時に契約して、まだ教育資金がかからない10歳で払い終える設定をしている方が多いようです。また前述した「低解約返戻金型終身保険」を選択したほうが返戻率が良いので、そちらを選択すると良いでしょう。

しかし、これも前述したように途中で解約した場合は元本割れをしますので、払い込んでいる間に解約をするかもしれないと不安に思われる人は、通常の学資保険を選択した方が良いでしょう。

またもう一つメリットとして、毎月の保険料が同じ位の学資保険と終身保険を比較すると、一般的に終身保険の方が死亡保障が高く設定できます。生命保険の加入金額が不十分と思われる人は、学資保険よりも終身保険を選択すると良いでしょう。

5.ファイナンシャルプランナーからのアドバイス

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今までみてきたように、終身保険で貯蓄をすることも充分メリットはあります。ただし掛け捨ての保険よりも保険料は割高なので、今後のライフプランやマネープランをよく考えてどちらを選択するか検討してください。

終身保険はあくまでも生命保険なので、今の生命保険の加入状況や貯蓄をする目的などを明確にして、加入額を決めてください。

純粋に貯金がしたい場合は、終身保険ではなく銀行預金で貯金をすることをお薦めします。今後の日本経済を考えたとき、金利が上昇することは十分に考えられます。銀行預金であれば、いつでも預け替えができるので、今後の金利が上昇した場合は高い金利の預金に預け替えることもできます。

しかし一度保険を選択すると後に戻ることはできません。将来を考えると、金利上昇やインフレをキャッチアップできないことは大きな損失です。

保険は保険、貯金は貯金、投資は投資、とそれぞれの目的を明確にして目的別に分けて考えるようにして、家計をやりくりすることをお勧めします。