料金値上げで裏目に?オール電化の電気代はいくら?節電術も
「オール電化」の住宅はすべて電気でまかなうため、ガス代がかからなくなりますが、ガスを併用している家庭に比べて電気代はどのくらい変わるのでしょうか。近頃の電気料金の値上げによる影響も気になるところです。
そこで当記事では、オール電化住宅の平均的な電気代について紹介します。また、昨今の電気料金値上げ事情も交え、オール電化で気を付けたいポイントについても触れますので、この機会にオール電化への理解を深めていきましょう。
オール電化の月額平均電気代【世帯別】
関西電力によると、オール電化住宅の世帯人数別の平均電気代は以下の通りです(2021年度)。
1人暮らし:1万777円
2人暮らし:1万3406円
3人暮らし:1万4835円
4人暮らし以上:1万6533円
出典:関西電力オール電化プラン「はぴeみる電」会員の2020年~2021年の年間使用量の平均値
一方、オール電化ではない一般的な住宅での平均光熱費(電気代+ガス代+その他光熱費の合算)は以下のようになります(2021年度)。
1人暮らし:9134円
2人暮らし:1万4824円
3人暮らし:1万6754円
4人暮らし以上:1万7617円
出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編 2021年 世帯人員・世帯主の年齢階級別」
この2つのデータを比較すると、1人暮らしの世帯であれば、オール電化住宅より一般的な住宅の方が若干光熱費が安いことがわかります。一方で2人暮らし世帯以上になると、オール電化住宅の方が光熱費が安いという結果となっています。
なぜオール電化の方が安くなる?
オール電化住宅の光熱費の方が一般的な住宅より安くなる理由として、「基本料金」が関係しています。
電気料金とガス料金にはそれぞれベースとなる基本料金が設定されており、オール電化住宅では、電気に一本化できるため、その分基本料金を抑えられるのです。反対に一般的な住宅は、オール電化住宅からみれば基本料金を二重払いしていることになります。
また、オール電化住宅には「深夜プラン」があり、夜間の電気代を割安にできることも関係しています。
同じ使用量だった場合の電気料金の差は?
仮に電気の使用量が同じである場合、オール電化住宅と一般的な住宅では、どちらの電気料金が安いのでしょう。
以下は、日本生活協同組合連合会の「電気・ガス料金調査」において集計されている、2019年における1カ月間の電気使用量と料金の分布図です。
この分布図をみると、たとえば電気使用量が「400kWh/月」の場合、オール電化の電気料金は1万円以下が多いのに対し、オール電化でない場合の電気料金は1万円以上で分布しています。
つまり電気の使用量が同じ場合であれば、オール電化住宅の方が一般的な住宅よりも電気料金が安くなることを意味します。
ただしこちらは2019年のデータとなります。詳細は後述しますが、電気代の値上げが続いており、今後も値上げが続いていくと、オール電化住宅の方が、支出が増加する恐れがあります。
電気代値上げの影響は?
ウクライナ侵攻に伴う燃料価格高騰や円安の影響などを受け、2022年末頃より、大手電力会社7社から政府に対し、料金改定(値上げ)の申請が行われていました。
結果、厳格な査定を経て、最終的に値上げ幅を圧縮した上で値上げが決行されました。2023年6月1日以降の料金より適用されています。
各電力会社の値上げ率は、経済産業省資源エネルギー庁より、以下のように提示されています。
査定の結果、標準的な家庭における電気料金の値上げ率は、14~42%の幅に収まることとなりました。さらに「激変緩和措置」等の軽減措置が適用されているため、それらを差し引くと、ウクライナ侵攻前の水準を下回るか、同等の水準に抑えられています。
高くても2%の値上げに留まる、安くなるケースも
たとえば、最も値上げ率が高い「北陸電力」を例にすると、2023年6月より電気料金が1万5879円(42%増)に値上げされています。しかし激変緩和措置等の軽減措置が適用され、最終的に1万1323円(2%増)まで値上げ率が抑えられています。※30A(アンペア)で、400kWh(キロワット時)を使用する家庭をモデルとして試算
「九州電力」のように値上げの申請を行っていなかった電力会社では、激変緩和措置等の軽減措置が適用されることで、ウクライナ侵攻前の2022年11月と比べると、電気代が安くなっているケースもあります。
ただし激変緩和措置はいつまで続くか分からない
「激変緩和措置」は、電気代やガス代高騰への対策として、2023年1月より開始された補助金制度です。補助を受ける上で申請は不要であり、電気代から補助分が自動的に差し引かれています。もともとは2023年9月末に終了予定でしたが、エネルギー価格の上昇や円安進行を受けて延長される形となりました。いつまで延長されるかは未確定です。
現在はこの激変緩和措置を含めて値上げの影響が抑えられていますが、仮に終了した場合、激変緩和措置分(2800円程度※)、電気代が値上がりする可能性があります。
※30Aで400kWhを使用する標準的な家庭の試算額
オール電化で気を付けたいポイント
オール電化住宅では、電気の扱い方によって、逆に出費が増えることもあります。
ここではオール電化で気を付けたいポイントを紹介しますので、使い方を意識し、節電を目指しましょう。
時間帯を意識する
オール電化住宅の場合、深夜の割安プランを組んでいるご家庭も多いでしょう。こうしたプランは夜間であれば料金が割安になりますが、その分、昼間は割高となってしまうことがあります。したがって、昼間の電気の使い過ぎには注意しなければなりません。
特に「エコキュート(ヒートポンプ給湯器)」は、深夜の割安な電力を活用して省エネを実現させているため、昼間に稼働させると省エネにならないことがあります。その他の家電も、なるべく日中は稼働させないようにすることが大切です。
「蓄熱暖房機」は電気代が10万円を超えることも
1990年代頃に建てられた初期のオール電化住宅では、暖房設備として「蓄熱暖房機」を採用しているケースが多いです。この蓄熱暖房機は消費電力が大きく、ヒートポンプ技術を用いる「エアコン」のほうが約72%の電気料金削減となるという試算もされています(東京電力エナジーパートナーの試算)。
蓄熱暖房機を使っているオール電化住宅では、ひと月の電気代が10万円を超えているケースも見られるため、電気代を節約するためには、蓄熱暖房機ではなくエアコンに変えたほうがよいでしょう。
省エネを意識して使う
経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」の集計によれば、電力消費が大きい家電の1位はエアコン、2位は冷蔵庫、3位は照明(冬季の場合は給湯器が3位)という結果となっています。
オール電化住宅だからといって、こうした家電の消費電力が少なくなるわけではないため、電力消費の大きい家電こそ、省エネを意識した使い方をすることが大切です。
たとえばエアコンは「設定温度を抑える」「フィルター掃除をこまめにする」などの使い方が省エネに繋がります。冷蔵庫は「物を詰め込みすぎない」「壁から適切な間隔で設置」などの工夫で節電することができます。
各家電の省エネ節約術は、経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」にまとめられていますので、こちらも併せてチェックしてみましょう。
オール電化住宅は、一般的な住宅に比べると、光熱費が安くなることが多いものの、電気料金の値上げが続くと、今後の状況が変わってくる可能性もあります。
政府が実施する「激変緩和措置」もいつまでも続くとは限りません。そうした来るべき時に備える意味も込めて、これまで以上の節電対策を日頃から進めておきましょう。