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オール電化とガス併用、結局どっちが安いの?コストを比較してみた

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オール電化とガス併用、結局どっちが安いの?コストを比較してみた

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ガスを使わないオール電化住宅。「エコで、家計の節約になる」と言われることも多いですが、本当に安いのでしょうか。今回は、オール電化と電気ガス併用どちらがお得なのかについて、基本料金やエネルギーコストなどを比較しながらシミュレーションしていきます。

オール電化にしようか迷っている方、もしくはオール電化から電気ガス併用に戻そうかと考えている方は参考にしてみてください。

オール電化のメリット・デメリット

IHクッキングヒーターで料理
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まず電気代の比較をするまえに、オール電化特有のメリット・デメリットを知っておきましょう。

オール電化のメリット

・基本料金を一本化できる
・安全性が高い
・災害時の復旧が早い
など

オール電化住宅の場合、電気会社との契約に一本化でき、ガス会社へ基本料金を支払わなくて済むことが一つのメリットです。火やガスを使用しないため安全性が高く、火事などの災害が生じにくいのも強みと言えるでしょう。災害時の復旧が早いのも強みです。例えば、2011年の東日本大震災時、電気は約1週間程度で9割以上の世帯が復旧しましたが、ガスの復旧には1カ月以上かかりました。

オール電化のデメリット

・初期費用が高い
・停電に弱い
・日中に電気代が割高になりやすい
など

オール電化用の設備となる「エコキュート」や「IHクッキングヒーター」は本体価格や設置費用が高く、初期費用として100万円以上の出費が発生することもあります。停電に弱いこともデメリットであり、電気が止まるとキッチンのコンロやお湯を使うことが一切できなくなります。また、オール電化向けの電力プランは夜間帯は割安であるものの、日中は割高に設定されているケースが多いため、日中自宅にいることが多い人の場合は不利になりやすいです。

ガス併用のメリット・デメリット

ガスコンロの火のアップ
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次に、ガスを併用した場合には、どのようなメリット・デメリットがあるかを見ていきましょう。

ガス併用のメリット

・初期費用が安い
・停電に強い
・時間帯に縛られない
など

ガス給湯器やガスコンロは10万~20万円程度で揃えられるため、オール電化用の設備よりも初期費用が安いことがメリットです。停電にも強く、電気がストップしても火を使って料理ができるため、いざという時に心強いです。時間帯に縛られない点もメリットであり、ガスであればお風呂のお湯を日中に焚いても、夜間に焚いても、一般的にコストは変わりません。

ガス併用のデメリット

・基本料金の支払いが二重になる
・火災のリスクがある
・お手入れが面倒
など

ガスを併用する場合、電力会社とガス会社両方と契約しなければならず、手間がかかります。また基本料金も二重に支払うため、コスト面でも不利となります。火やガスを使うため、火災や爆発のリスクが生じます。また、ガスコンロ周りなどは、汚れが付着しやすく、お手入れに手間がかかることもデメリットです。

基本料金の比較

電球と電卓
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電気やガスを契約すると、ベースとなる「基本料金」が発生します。基本料金は、その月に電気やガスを一切使わなかったとしても、支払わなければならない料金です。

それぞれの基本料金を表にまとめると以下のようになります。

図表※九州電力 オール電化向けプラン「電化でナイト・セレクト
※九州電力「従量電灯B」の料金
※一般財団法人日本エネルギー経済研究所 LPガス月別(九州局)
※九州ガス ガス小売供給約款

よってオール電化の場合と、電気・ガス併用の場合の基本料金はそれぞれ以下の通りです。
・オール電化:1888.80円
・ガス併用:1850.72~2846.72円

オール電化の場合、ガスの基本料金は不要となるため、家の広さやガスの種類によっては割安といえるでしょう。

ガス併用の場合は、電気(従量電灯B)の948.72円+LPガスの1897円といったように、電気とガス両方の基本料金を支払う必要があるため、割高となりやすいです。

エネルギーコストの比較

電気とガスの「エネルギーコスト」を比較する場合は、ガスを電気としての単位に変換し、1kWhあたりのエネルギーを発生させる上でどの程度コストがかかるかを計算します。

一般的な基準とされている、1kWh=860kcal、LPガスの熱量を2万4000kcal/㎥(1kw=約0.036㎥)、都市ガスの発熱量を1万1000kcal/㎥(1kw=約0.078㎥)をベースにシミュレーションすると、それぞれのエネルギーコストは以下の表のようになります。

図表

※九州電力のオール電化向けプラン電化でナイト・セレクトの料金より
※九州電力の従量電灯Bの料金より
※一般財団法人日本エネルギー経済研究所のLPガス月別(九州局)より、8706円/10㎥÷10×0.036㎥で算出
※九州ガスのガス小売供給約款より、料金表Aの単位料金(1㎥あたり)253.3769円×0.078㎥で算出

1kWhあたりのエネルギーコストを比較すると、電気の方がガスより安いです。「電気(オール電化向けプラン)」の夜間が14.48円と最も安く、「電気(従量電灯B)」でも120kWhまでであれば18.28円ですみます。

ガスについては、「都市ガス」は19.76円と安めですが、「LPガス」は31.34円となりこの中では最も高くなります。

オール電化とガス併用の光熱費比較

郊外の大きな一軒家
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関西電力によると、オール電化住宅での平均電気代は、以下のように集計されています(2021年度)。

1人暮らし:1万777円
2人暮らし:1万3406円
3人暮らし:1万4835円
4人暮らし以上:1万6533円
出典:関西電力オール電化プラン「はぴeみる電」会員の2020年~2021年の年間使用量の平均値

一方、電気とガスを併用した一般的な住宅の平均光熱費(電気代+ガス代+その他光熱費の合算)は以下の通りです(2021年度)。

1人暮らし:9134円
2人暮らし:1万4824円
3人暮らし:1万6754円
4人暮らし以上:1万7617円
出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編 2021年 世帯人員・世帯主の年齢階級別

この2つのデータを比較すると、1人暮らしであればオール電化よりもガス併用の方が光熱費が安いことがわかります。一方、2人暮らし以上になると、オール電化の方がガスを併用する場合よりも光熱費を抑えられるようです。

ただし数字的に大きな差とはいえず、使い方などで逆転することはありえる範囲といえるでしょう。

選択のポイントは?

↔の選択に迷う男性
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最後に、オール電化とガス併用のどちらにすべきか、選択のポイントや選び方について紹介します。

地域的な事情を考慮して選ぶ

九州に住んでいる人は「九州電力」、東京や関東圏に住んでいる人は「東京電力」のように、地域によって使える電力会社は変わり、料金体制も異なります。同じようにプロパンガスも地域によって料金相場が変わり、都市ガスに関してはそもそも使用できない地域も多いです。

オール電化が有利になる地域もあれば、ガス併用の方がお得な地域もありますので、まずは、お住まいの地域で使える電力会社やガス会社を調べ、その地域での料金をシミュレーションした上で検討してみるのが確実です。

ライフスタイルで選ぶ

オール電化の場合、夜間は割安、昼間は割高の料金プランを組むことが多いです。エコキュートのようなオール電化設備も、料金の割安な夜間を利用して稼働するような作りとなっています。

そのため、日中自宅にいることが多く、オール電化設備や電化製品を多用する生活をすると、オール電化の利点が失われ、電気代の出費が必要以上に増えてしまう可能性があります。

一方で、昼間は仕事などで毎日外に出ており、電気を使うのは夜のみという方であれば、オール電化が向いているでしょう。

安全性で選ぶ

安全性で選ぶのであれば、火を使わないオール電化の方がガス併用より安全といえます。ガス併用だと、ガスコンロの消し忘れなどで自宅が全焼するケースもあり、災害のリスクは高めといえます。

ただし、オール電化でも漏電などが原因で火災などが発生するトラブルはありますので、災害リスクがゼロではないことは覚えておく必要があります。

以上、オール電化とガス併用のコストについて比較しました。

基本料金やエネルギーコストでみるとオール電化の方がガス併用よりも安くなりやすいです。しかしオール電化は使い方(時間帯など)によって電気代が変動しやすく、また初期費用も高額になりやすいため、総合的にみると必ずしもオール電化の方が安いとは限りません。

また安全性の面など、コスト以外の面のメリット・デメリットもあるため、ご自身が何を重視するかをよく整理した上で、どちらにするかを検討してください。