ストリーミング&IPTV先進国アメリカの最新視聴スタイルは?
スマートフォンで何でもできる時代になり、若い世代を中心にテレビや動画のコンテンツでさえ、スマホで観るのが習慣化されつつあるようです。今回は旧来のテレビ放送に取って代わりつつあるストリーミング配信サービス(インターネットTV=IPTV)について、ストリーミング先進国アメリカから報告します。
若者はテレビを観ない?
今の世の中、あらゆることがスマートフォンでできるようになりました。便利な時代になり日本もアメリカも自宅にもはや「テレビ、ラジオ、電話機、カメラ」などがない家庭が増えています。
テレビに関して言えば「テレビ離れ」が叫ばれて久しい昨今です。特に日本もアメリカも若者を中心にテレビ自体を観ない人は増えているようです。
米ビジネスインサイダーは、テレビを所有していない家庭は2009年の1.3%から2015年の2.6%と2倍以上に増えたと報じています。2017年の情報なので、最近はもっと増えているかもしれません。高齢者を中心に多くの人がテレビ(メディアプレーニュースによるとテレビ所有者のうち4人中3人がスマートテレビ)を所有しているのは事実ですが、筆者の周りを見渡してみても、特に若い世代の人がテレビを持っていません。それを実感したのは2010年代初頭です。私自身もテレビを持たない生活から10年以上が経ちました。
日本のある調査でも、Z世代の4分の1以上(実家暮らしを除く)が「家にテレビがない、置いていない」ということです。NHK放送文化研究所の調査でも、Z世代の半数近くが「一週間で一度もテレビを観ない」という結果でした。その代わりに、スマホ片手に(倍速で)動画(経営者が発信するビジネス系コンテンツなど)をよく観るとのこと。
とは言いつつ、テレビは現代においても伝統的な主要マスメディアの一つであることは間違いなく、テレビ局が制作したコンテンツ(映像番組)の多くは質が高く影響力も多大です。
そしてそのような番組も最近ではストリーミング/動画配信サービス(インターネットテレビ、ストリーミングテレビ)で観られる機会が増えてきました。日本ではABEMA、TVer、Rakuten TV、U-NEXTなどが旗振りとなり、インターネットを介して無料で配信されるテレビ番組や映画コンテンツも増えつつあります。決まった時間にテレビの前に拘束されることなく、スマホで気軽に視聴できるとあり、テレビでのリアルタイム視聴にもどかしさを感じる若者は今後さらに増えていくでしょう。
ストリーミング/動画配信サービスの本場アメリカでは
2020年以降はコロナ禍のロックダウンやステイホームで、世界中の人々のライフスタイルが一変しました。Netflixに代表されるさまざまなストリーミング/動画配信サービスへの需要がさらに高まったのです。
ストリーミング事業の本場、アメリカでの始まりは90年代とされています。最初のライブストリーミングは90年代、シビア・タイヤ・ダメージ(ガレージロックバンド)のコンサートで、オンデマンド型のサービスも90年代初頭には開始されました。そして世界に向けた最初の音声配信の一つは、1995年9月5日のESPNスポーツゾーンによってストリーミングされたシアトル・マリナーズとニューヨーク・ヤンキースの野球試合だという情報があります。日本に比べると歴史が長い分、サービスも多種多様に広がり人々の生活にすっかり浸透しています。
2000年代に入りMicrosoft、Netflix、Apple、Amazon Prime Video(当時はAmazon Unbox)、Huluなど実に多くの米企業が次々にストリーミング・サービスを開始しました。
今や世界中にユーザーがいるYouTubeがアメリカでローンチしたのは日本より2年早い2005年2月14日のことでした。サービス誕生秘話として、共同創業者ジョード・カリム氏がその前年、スーパーボウルのハーフタイムショーでジャネット・ジャクソンが胸を露出し物議となったハプニングからインスピレーションを得たと語っています。当時はいくつかの珍事件の動画をネット上で容易に見つけることができなかったため、ビデオ共有サイトであるYouTubeを思いついたそうです。
またほぼ同時期に、アメリカではテレビ番組もインターネット経由での視聴ができるようになり始めました。
有料のストリーミング=テレビ配信プラットフォーム、YouTube TVがスタートしたのはYouTubeのローンチから12年後の2017年と割と最近です。
世界190ヵ国で配信され、有料会員が2億4700万人以上(2023年9月現在)とされるNetflixにしても、もとはDVDのレンタルと販売が主な事業内容でした。ストリーミングコンテンツの提供をアメリカで開始したのは2007年(日本でのサービス開始は8年後の2015年)。今では収益と時価総額において、世界最大のストリーミングTVネットワーク(動画配信サービス)に大成長しています。
このようにアメリカではストリーミングの歴史が長く文化が成熟しているため、現在ではここで書き切れないくらい各社さまざまなサービスがあり、ニュース、映画、料理、子ども、スポーツ、音楽などジャンルが細分化されています。諸種のコンテンツ(有料、無料含む)があり、無料サービスでは観られない映画やドラマはあるが、コンテンツ自体は充実。有料サービスも月ごとのサブスクライブ費はさまざまです。
一体どのくらいの人がストリーミングサービスを利用しているでしょうか。米ピュー研究所の調査では(2017年時点)、アメリカの成人の28%がテレビ視聴の主な手段としてストリーミングサービスを挙げる中、年齢区分ごとに見ると若い世代では割合が高く、18~29歳の10人中6人(61%)が主な視聴方法としてストリーミングサービスを挙げました。
会員数が多いトップ10
オンデマンド型とライブ型混合。会員数はグローバルを対象にしたおよその数。見積もりやおよその数も含んだ順位は以下の通りです。
1. Netflix: 2億4715万
2. Amazon Prime Video: 2億以上
3. Disney+: 1億5020万
4. Max: 9510万 * 旧HBO Max
5. Paramount+: 6340万
6. Hulu : 4850万
7. Peacock: 2800万
8. ESPN+: 2600万
9. Apple TV+ : 2500万
10. Starz: 1579万
参照: digitaltrends
これ以外にYouTube TV、fubo、Sling、Plutoなど、人気のサービスは数え切れません。加えてCNN、FOX、ABCなど各主要局がそれぞれのニュース番組をストリーミング配信しています。またメジャーリーグを観るならmlb、音楽を聴くならSpotify、Pandora、iHeartRadio、アニメならCrunchyroll、子ども番組ならPBS Kids、日本関連ならNHK Worldなど、視聴者のライフスタイルや目的に応じてさまざまなサービスが細分化されています。
普段は無料の配信サービスで事足りる人も、イベントがある時(例えばワールドカップ、アカデミー賞など)、前評判の高いドラマシリーズがリリースされた時、自分が観たいコンテンツがある時だけ有料サービスをスポット的に契約する人も多いです。
NBCニュース(2023年12月5日付)によると、アメリカの典型的なユーザーは1社ではなく3社のサービスを毎月契約し、10人に1人は5社以上のサービスを契約するヘヴィユーザーだといいます。また毎月支払っている金額は平均50ドル(約7230円)ということです。日本からすると随分と高い金額に感じるかもしれませんが、それぞれのコンテンツ内容がとても充実し、映画でもスポーツでもオンデマンドで自分が観たい時にいつでも観られる便利なプラットフォームに月平均50ドルというのは、今のアメリカの物価情勢からすると妥当な金額かもしれません。
最近は本当に数え切れないくらいのサービスがあり、まさに百花繚乱です。ただユーザーの多くは5社も7社も同時に契約できるわけではないため、各社が1ドル代から新規契約の人向けのプロモーション価格を提供したり、数社が一緒になったパッケージ価格も提供されています。ストリーミングサービスが台頭する前のケーブル全盛期のように、大手電気通信会社VerizonはNetflixとMaxを加えるプランをたった+10ドル(約1440円)の追加料金で観られるキャンペーンを実施するなど、コンテンツプラットフォーム各企業はあらゆる施策を講じています。この業界はこれからもさらに発展し、ユーザーをますます楽しませてくれるでしょう。