共働きするなら扶養内とフルタイムどっちが得?働き損にならないためには
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今回は夫婦で共働きをする場合に、妻の働き方をどうすべきか?というご相談です。夫の扶養の範囲内で働くのがお得か?それとも扶養に入らないでフルタイムで働く方がメリットがあるのか?働き損にならないためにはどっちがよいのか、よく相談を受けます。それでは具体的に見ていきましょう。
30代女性からの相談
「初めまして、回答よろしくお願い致します。現在夫の収入のみで生活をして手取り月20万円です。夫は国民健康保険です。子供が大きくなっているので共働きにする予定ですが、夫の扶養内で働くか、フルタイムで働いて妻のみ社保手取り月15~20万円のどっちがいいか悩んでいます。
夫の収入だけの場合、就学援助制度でほぼ無料になっています。また、医療費は子供のみ無料です。夫38歳、妻35歳、息子15歳、娘14歳」。
扶養内パートか、フルタイムかどっち?
今回、働き方を判断する上で重要な要素となる点を整理します。
✓現在は夫の収入のみで生活。これから妻も共働きを考えている
✓夫が自営業等で国民健康保険(組合等の健康保険ではない)
✓所得水準など一定の条件の人が対象となる就学援助制度を利用している
結論からお伝えしますと、扶養の範囲にこだわることなく社会保険に加入し、手取り15万~20万円で働くことをおすすめします。もちろん、生活する上で何を重要視するか?によって判断基準は変わりますが、今回は上記質問で分かる範囲内での回答である点を前提とさせてください。
妻が社会保険に加入するメリット
現在は夫の所得を基準に国民健康保険に加入しています。自営業者などが加入する国民健康保険は会社員や公務員が加入する健康保険(組合や協会けんぽ)制度とは異なり、「被扶養者」という概念がありません。会社員などの健康保険の場合は一定収入以下の配偶者や子供は「被扶養者」として保険料の負担なく、保険証をもらうことができます。
一方、国民健康保険の場合は家族の人数が増えればその分、保険料も増える仕組みになっています。よって、妻が社会保険に加入する働き方を選ぶことで、夫が国民健康保険、妻が会社を通して組合などの健康保険と、それぞれ別々の加入となります。妻が国民健康保険から外れることで、その分保険料が下がります。
そして社会保険上は原則収入の多い方が「世帯主」として子供を養っているとみなされます。今回はご夫婦の手取りがほぼ同じなので、収入ベースでは妻の方が多くなるかもしれません。もしそうなれば、子供2人も妻の健康保険の被扶養者として加入することができ、子供2人分の保険料は不要となります。また、国民健康保険も夫のみの加入となり、人数が減るため、さらに保険料が下がることが見込まれます。
<現在>
国民健康保険 |
健康保険(組合・協会けんぽ) |
・自営業 ・健康保険のない事業所で勤務等 |
・会社員や公務員 |
・被扶養者という概念がない ・人数が増えれば保険料も増える 家族全員が被保険者(4人分の保険料) |
・被扶養者という概念がある ・被扶養者は保険料負担なし
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<FPが提案する理想のスタイル>
国民健康保険 |
健康保険(組合・協会けんぽ) |
夫のみ被保険者(1人分の保険料) |
妻が被保険者 子供2人は被扶養者(子供分は保険料ゼロ)
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※子供を被扶養者とできるかどうかは会社の組合等に確認する必要があります
税金面や就学援助制度を考慮すると「扶養の範囲」での働き方がよいが・・・
社会保険に加入し、手取り15万円~20万円で働くことになると妻自身、一定の所得税や住民税を負担することになります。また夫の税金を計算する上で控除されていた配偶者控除も適用できなくなります。
あくまで概算ですが、夫の所得税・住民税の負担が年間5万円ほどアップする可能性があります。ただし、妻が手取りで15万~20万円ほど収入を得ることを考慮すれば、家計ベースではそれほど大きな負担増にはならないと思います。
また、一定所得以下の世帯などを対象に給食費など学校に関係する費用負担を支援してくれる「就学援助制度」を受けていますが、この制度は小学生と中学生が対象です。15歳と14歳という子供たちの年齢を考えると、もともと残り1~2年で就学援助制度の対象外になってしまいますし、もし夫婦で共働きすることで早めに対象外になったとしてもあまり大きな影響はないと思われます(しかも共働きで収入が増えるので)。
※配偶者特別控除も適用されない場合を仮定しています
「働き損にはしない!」世帯収入を増やすことを最優先に
夫の手取り月20万円で子供が2人就業支援制度を受けているという状況から、家計は厳しい状況であることが推察されます。そこで妻が働くことを検討していますが、妻が一定の収入以下に抑えて夫の扶養内で働く方が社会保険や税金の負担という観点からは有利です。
ただし、社会保険に加入しながらしっかり収入を得た方が、家計ベースでみると断然よいでしょう。なお、妻が社会保険に加入することで、将来の年金額が増えるといった効果も期待できます。
今後、お子様が高校や大学等の高等教育に進学する際は、住民税非課税世帯など一定の所得水準以下の世帯などを対象にした「高等教育の修学支援新制度」があり、授業料等減免と給付型奨学金の対象になる可能性があります。その場合、扶養の範囲で働くことを優先した方が家計にとってトータルでプラスになることも考えられます。お子様の教育方針なども考慮する必要があります。
繰り返しになりますが、仕事内容や生活リズムなど「お金」以外の要素もしっかり考慮して、損しない働き方はどちらか判断してくださいね。