個人の所得に影響!基礎控除や給与所得控除、2020年1月からの税制改正
国の状況や政府の方針により毎年見直される税制。今回は、政府が重要政策のひとつとして2019年4月から施行した「働き方改革」をふまえ、さまざまな形で働く人を応援する観点の改正となる、基礎控除、給与所得控除、扶養親族がいる場合の控除について見ていきます。
2020年1月から、基礎控除や給与所得控除が具体的にどのように変わるのか、私たち個人の所得にどう影響してくるのかを解説します。
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税制改正って何がどう変わるの?
2020年の税制改正大綱によると、所得税の計算に関係する基礎控除、給与所得控除の額が下記のように改正されます。
【基礎控除】
合計所得金額 |
基礎控除額 |
|
改正後 |
改正前 |
|
2400万円以下 |
48万円 |
38万円 |
2400万円超2450万円以下 |
32万円 |
|
2450万円超2500万円以下 |
16万円 |
|
2500万円超 |
- |
|
基礎控除とは、サラリーマン、公務員、自営業者など全ての納税者に対して一律で適用される控除です。改正前に比べると、合計所得金額2400万円以下の場合、基礎控除額は10万円引き上げられました。
しかし、上の基礎控除の表のように、合計所得金額が2400万円を超えると段階的に32万円、16万円と減額の改正となっており、2500万円を超えると基礎控除がゼロとなります。
つまり、高所得になるほど、基礎控除額が減ることになります。
【給与所得控除】
給与等の収入金額 |
給与所得控除額 |
|
改正後 |
改正前 |
|
162万5000円以下 |
55万円 |
65万円 |
162万5000円超180万円以下 |
その収入金額×40%-10万円 |
その収入金額×40% |
180万円超360万円以下 |
その収入金額×30%+8万円 |
その収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 |
その収入金額×20%+44万円 |
その収入金額×20%+54万円 |
660万円超850万円以下 |
その収入金額×10%+110万円 |
その収入金額×10%+120万円 |
850万円超1000万円以下 |
195万円 |
|
1000万円超 |
220万円 |
給与所得控除とは、給与所得者すなわちサラリーマンや公務員の収入に対して控除されるものです。こちらは、基礎控除とは逆に一律10万円引き下げられました。
また、給与所得控除を受けることができる給与収入の上限が、改正前は年収1000万円だったのですが、改正後は年収850万円となりました。併せて給与所得控除の上限額も220万円から195万円に引き下げられました。
個人にどう影響するの?
上記の表の通り、年収が850万円までは基礎控除と給与所得控除でプラスマイナスゼロとなり、改正前と改正後では大きく影響しません。しかし、年収850万円を超えると実質増税になることは間違いありません。その増税幅は、年収2400万円を超えるとさらに大きくなります。
配偶者や扶養親族がいる場合は?
年収850万円を超えると実質増税といいましたが、特別障害者に該当する人や23歳未満の扶養親族がいる人、特別障害者が扶養親族にいる人に対しては、その負担が増えないよう、新しく所得税額調整控除という控除が創設されました。
控除額の計算式は以下の通りです。
●(年収-850万円)×10% = 控除額(上限15万円)
上限が15万円ということは、年収1000万円を超えるとその控除額は一律15万円になるということです。
また、配偶者・扶養親族の合計所得金額要件も併せて見直されています。
改正前の配偶者や扶養親族の所得要件は「合計所得金額38万円以下」でしたが、改正後は10万円引き上げられて48万円以下という要件になりました。
しかし給与所得控除が10万円引き下げられているため、給与所得控除と基礎控除の内訳が変わっただけで、年収ベースで103万円以下であることは変わりません。つまり、これまで「パート勤務の配偶者は合計所得金額38万円以下(年収103万円以下)で扶養」という条件が、改正以降は「合計所得金額48万円以下(年収103万円以下)」に変わりますが、「103万円の壁」は依然として存在し続けます。
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基礎控除や給与所得控除の税制改正まとめ
今までみてきたように、2020年の税制改正では、年収や家族構成により、増税になる世帯も出てくるでしょう。その場合、事前に家族の年収をチェックしておき、場合によっては働き方をどうするか検討する必要があります。
また、年末調整を行う職場の負担も増えてきます。税の三大原則「公平・中立・簡素」というものがありますが、どんどん複雑化しているのが現状です。今後の流れとして政府はますますマイナンバー制度の浸透を進めていく方針です。そうすることで年末調整などの負担も減り、また確定申告も不要になる時代がくるかもしれません。