老後資金にはドル建て生命保険とiDeCoどっちが向いてる?
目次
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は老後資金の貯め方としてiDeCoとドル建て(外貨建て)終身保険のどちらが良いか?という質問について回答いたします。
結論からお伝えすると、iDeCoの方が老後資金の貯め方として総合点は高いと思います。ただし、それ以外の家計の状況次第という点を補足させてください。
iDeCoと外貨建ての終身保険で迷う30代女性Yさん
<相談内容>
iDeCoをはじめようか悩んでいたところ、生命保険の担当さんからドル建て終身の生命保険をすすめられました。iDeCoは手数料がかかるけれど節税になります。ドル建て生命保険は一般の生命保険料控除(所得控除)の対象となりますが、すでに一般生命保険の控除額が最大になっているため節税にはなりません。老後資金を貯めるにはどちらがおすすめでしょうか?(Yさん 30代女性)
総合的にiDeCo(イデコ)が優位
総合的に見て、ドル建て終身の生命保険よりはiDeCoの方がおすすめです。iDeCoは個人型の確定拠出年金で60歳まで引き出すことができないため、老後までじっくり資産形成を行うことができます。それ以外にもiDeCoの優位な点はいくつかあります。
①ハイリスク、元本保証(ローリスク)などさまざまな投資対象がある
②定期的な見直しが可能
③掛け金のみならず、見直し時や受取時の税務面
相談者のYさんは30代です。年金スタートの65歳までまだ30年以上時間があり、超長期投資となります。Yさんの投資に対する知識や、どれだけリスクを許容できるかといった視点を養っていくには十分な時間といえるでしょう。
iDeCoは元本保証型タイプの金融商品をはじめ、さまざまな投資対象があるため、安全性重視や成長性重視といった具合に、Yさんの方針に応じた運用が可能です。例えば50%は安全性を優先し、残り50%はハイリスク・ハイリターンのものを選ぶといった方法も可能です。
徐々に積み立てを行い、iDeCoに慣れていけば、知識や経験値も増えますし、年齢に応じて投資に対するスタンスも変わっていくと思います。老後へのビジョンもより明確になっていくでしょう。そういう場合には、今まで投資してきた金額やこれからの積立額を、よりYさんに適したものに見直すことをおすすめします。
例えば、「積み立ては時間分散効果が大きく、そのおかげでリスクを抑えることができる」と感じたのであれば、安全資産を減らすことが1つの方法としてあります。逆に「投資できる残りの年数を考慮すると、徐々にリスクを抑えていこう」という考えに及ぶ可能性もあります。これがiDeCoの優位点となる①と②です。
そして③です。Yさんは節税を意識されていますが、iDeCoは掛け金が全額所得控除として所得税・住民税の負担が軽減することはもちろん、運用益や受取時も税務面で優遇されるため、節税効果が高いことも特長。利益が出ているファンドを売却し、他のファンドへ買い直しをしても税金はかかりません。通常は利益に対して20.315%課税されます。
iDeCoを一括で受け取る場合は、退職所得として大きな控除額が適用されるため、非課税になったり、または税負担が軽減し、恩恵を受けることができます(納税者の所得状況によっては異なる場合があります)。退職金制度との兼ね合いで、退職所得として受け取ることがデメリットになる場合もありますが、その際は分割で受け取ることで所得区分が変わり、退職所得ではなく雑所得となります。その結果、税負担が軽減される可能性もあります。
長期的な掛け金の所得控除のみならず、見直し時や受取時などYさんにとって大きな税負担にならないような仕組みがあることは、老後資金準備の強い味方となります。
なお、iDeCoの手数料は国民年金基金連合会へ支払うものや窓口となる金融機関に払うものなどがそれに該当しますが、最近は手数料無料の金融機関が増えるなど、その負担額は軽減されつつあります。
Yさんが現在働いており、一定の所得税・住民税を納めているのであれば、手数料よりも圧倒的に節税効果の方が大きいと思いますので、「さまざまな機能を有したiDeCoに一定の手数料が生じるのはしょうがない」と割り切るのも1つの考え方です。
ドル建て生命保険のメリットや気を付けるポイント
総合点では劣勢の評価としましたが、ドル建て生命保険も決して悪い方法ではありません。日本よりアメリカの金利が高いこともあり、ドル建ての保険は通常の生命保険(円建て)よりもハイスペックな生命保険が多い印象があります。さまざまなタイプのドル建て保険が各保険会社から発売されているため、十把一絡げとはいかないのですが、一般的な「ドル建て終身保険」であれば、生涯の死亡保障を確保し、Yさんのライフプランやドル円の為替レートを確認しながら、適当な時期に全部または一部を解約することも可能です。一定の利率で運用されているため、解約金が支払った保険料を上回る可能性も十分にあります。
よって、Yさんの死亡保障が少ない、または死亡保障を全く持っていないということであれば、ドル建て生命保険で死亡時の保障を確保しながら効率的に老後資金を準備するのも悪くありません。
また、将来ドルで受け取ることができるのも「通貨分散」としての機能を果たします。私たちはやはり日本円を中心に資産を保有しているため、一部の資産が違う通貨で、しかも世界の基軸通貨である米ドルで貯めていけば、将来的に選択肢が広がります。
なお生命保険料は、一定額が「生命保険料控除」として所得税・住民税の計算上控除されますが、Yさんはすでにその枠が上限に達しているようです。ただし、そもそも生命保険料控除の金額は決して大きくありません。生命保険料控除が使えるかどうかという点はそれほど大きな要因にはならないと捉えてもいいでしょう。
むしろ、生命保険であるため「死亡保障が必要かどうか」という点に目を向けて欲しいところです。もし十分に死亡保障があるということであれば、わざわざドル建て生命保険に加入する必要はありません。米ドル資産を保有したいのであれば米ドル預金や米国債などを対象にすることも可能です。
生命保険の場合、やはり「死亡時の保障」に対して掛け金の一定割合が保険会社に払う手数料となっています。その分も考慮する必要があります。iDeCoは月額や年額で〇円とコストが開示されますが、生命保険の場合はいくらコストがかかっているのか分かりにくいという側面があります。その点を留意してください。
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一度家計全体の見直しを
相談内容に対してはiDeCoの方が優位というアドバイスをいたしました。ただし、Yさんの状況次第でもあるため、一度現状の見直しから行うことをおすすめします。
現状で金融資産が少なく、今後住宅費や教育費などがかかるのであれば「60歳まで引き出せない」というiDeCoの特性はデメリットとなるかもしれません。「老後資金の準備どころじゃない」とお金の工面にあくせくする状況になっては意味がありません。
またドル建て生命保険も現在の保険契約、そして今後の死亡保障の必要性次第では効率よい方法ともなりますし、その逆にもなりえます。そういった観点から老後資金準備を視野に入れながら、現状、そして目先のライフイベントなど一通り確認するところからはじめてみてください。
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