お金

トラブルから身を守る方法は?

泉 正人先生のお金アカデミー 泉 正人

トラブルから身を守る方法は?

「貯金ができない!」「お金に弱い!」という人、大歓迎の、泉先生のお金アカデミー。

ここでは毎回、お金のプロ・泉正人先生が、社会に出て約5年になる20代のA君、Bさんに、お金のことをもっと身近に、楽しく考えてもらえるようなレクチャーを行っています。お金について知ることができた人には、今よりももっと自由な日々が待っている!
みんなで一緒に「人生の貯金額」、どんどん増やしちゃいましょう!

甘い言葉にはウラがある

ふたりは消費者金融で、どうやったらお金を借りられるか知っているかな?

街中の「無人契約機」を利用すれば借りられますよね? 前に友だちが、画面の指示に沿って回答して、運転免許証を読み取らせるなどの簡単な手続きを行えば、30分くらいの待ち時間で審査が終了してお金が借りられたって言ってました。

審査の申し込みはインターネットからでもできると聞いたことがあります。電話も必要ないと聞いてびっくりしました。

そう。消費者金融って手続きが簡単なんだ。

テレビでも頻繁に人気タレントを起用した消費者金融会社のCMが流れているし、あやしい感じがしないんですよね。

そうだね。でも昨今、消費者金融の存在は問題になっているんだ。消費者金融は利息が高く、返済が一度滞ったり収入が減ったりすると、返済が計画どおりにならなくなってしまうという明確なデメリットがあるからね。

「甘い言葉にはウラがある」ってことですか。怖いなぁ…。ところで先生、「ヤミ金融」っていう存在も聞いたことがあるんですが、これは消費者金融と同じですか?

消費者金融などの貸金業を営む業者は、財務省または都道府県への登録を行う必要があって、さらに登録番号を事務所や広告に表示する必要がある。でも中には登録をしていない貸金業者もいて、それらの業者のことを「ヤミ金融」と言うんだ。

他にも特徴はありますか?

「金利が高い」「元金が減らない」「返済期間が短い」「審査不要・即融資・低金利などの甘い言葉で釣る」などがあるね。

ヤミ金融の金利って、どのくらいなんですか?

「トイチ(10日で1割)」、「トヨン(10日で4割)」などと表現されていて、とても法外なんだ。例えば「トヨン」で10万円借りたとすると、40%÷10日間×365日=年利1460%。10万円の借入金が、1年後には156万円に膨れ上がることになる。これは一般的な消費者金融の金利の比ではないよね。さらに返済が滞れば、脅迫まがいの厳しい取り立てを受けることにもなる。

怖い!!

最近では、従来のヤミ金融より金利がやや低く、暴力的な雰囲気のないソフトなヤミ金融も増えているけど、社会人は「危うきに近寄らず」で過ごすべし。仕事でもそう。成功するためには、社会にある落とし穴の存在を認識し、近づかないようにする努力をしよう。

絶対に、近づきません!

トラブルを回避するコツは?

さすがにふたりはまだ、お金のトラブルとかに巻き込まれたことはないよね?

はい。でも先生、僕たちはまだ給料も少ないし、ちょっとオイシそうな儲け話や割引品があると、つい飛びついてしまいそうです…。

とは言え、騙すとか騙されるとか、無縁のもののように感じます。

ふたりとも数年前まで学生だったし、まだあまり実感がないのかもしれないね。学生時代って、例えば小さな湖で手こぎボートに乗っているようなもの。周りには境遇や価値観が似ている人が多かっただろうし、何もせず優雅に漂っていても、湖面にはあまり波風もたたず、問題がなかったんじゃないかな。でも社会人になって大海原に出た今は、交友関係が広がり、さまざまな生き方や考え方を持った人たちと出会うようになったはず。こうなった時点でなんの前知識もないままだと、波が強く潮の流れも速い「外洋」に手こぎボートで挑んでいるようなものだよ。つまり、いつ波に飲まれて溺れてしまってもおかしくないということ。

うわぁ~。溺れたくない!

社会という名の外洋で強く生き抜くためには、どんなあやしい商法やトラブルがあるかを知り、それらにどう対処していったらいいかを学ぶことが大切なんだ。そうすればふたりの手こぎボートも、大きくて安全なエンジン付きの船へと進化するはずだよ。

大きくて安全なエンジン付きの船かぁ。いいですね!

先生、例えばどんなあやしい商法やトラブルがあるか教えてください!

ではまず、「商売の方法」から知っておこうか。通常、商品やサービスを販売する方法には、お店での販売や通信販売のほかに、家庭を訪問して販売する「訪問販売」、電話で勧誘する「電話勧誘販売」など多種な種類があるのだけど、他にも「連鎖販売取引」「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」なんていうのもある。どんな商売の方法かわかるかな?

「連鎖販売取引」? なんですかそれ!?

「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」もよくわかりません…。

「連鎖販売取引」は、マルチ商法やネットワークビジネス、「特定継続的役務提供」は語学教室やエステティックサロン、「業務提供誘引販売取引」は内職商法などを指す。これらの取引は、「特定商取引法」という法律で規制されているんだ。

へえぇ!

先生、質問です。 「マルチ商法」と「ねずみ講」って同じですか?

「マルチ商法」とは、「入会すると3割引で商品が買えて、他人を誘ってその人に売れば儲かる」「他の人を入会させれば紹介料が得られる」などといって勧誘するもの。違法ではないけれど、とてもトラブルが多い販売方法だよね。一方「ねずみ講」は、「マルチ商法」が商品を介在しているのに対して、金銭の配当を基本としているもの。「無限連鎖講の防止に関する法律」によって違法とされていて、明確に禁止されているんだ。

どちらも同じことを指している言葉かと思っていました!違うんですね。

そう。予め知っているのと知らないのとでは、これだけでもトラブルに巻き込まれる可能性が変わってきそうでしょう。ぜひ頭に入れておこう。それから今は、インターネットに関わる商取引にも気をつけておかないとね。インターネットの発展によって、書籍から洋服、自転車や土地まで、あらゆるモノがオンラインで買い物ができるようになったけど、その半面、新たなトラブルも生まれてきているんだ。また特定商取引法以外にも、景品表示法や健康増進法などの法律によって虚偽・誇大な広告などが禁止されているけれど、インターネットショッピングの歴史はまだまだ浅く、法律の整備は完璧とは言いがたい状態なんだよ。

でも先生、イザとなったら法律で守られているんだから大丈夫、ですよね?

海外事業者との取引や個人間での取引には適用されないなど、法律に抜け道があることも事実なので注意が必要だよ。一人ひとりが気をつけることで、あやしいインターネットショッピングから身を守るようにしなければならないんだ。

なんだか、身近なところにも「あやしい商法やトラブル」が起きる可能性がありそうですね。最近は簡単に住所や電話番号なんかの個人情報を入力しちゃう場面もあるし、オークションサイトやフリマアプリなんかでは個人の出品や取引もあるし、20代でも「知りませんでした」は通用しなさそう…。

人間には欲があるので、「儲けたい」という思いが強すぎると話のあやしさに目をつぶってしまうことがあるかもしれない。でもそんな時は自分の欲望をコントロールして、確かな目でものごとを見分けることが肝心だよ。さらに、社会人なのに知っておくべき常識を知らないまま過ごすのはとてもリスクが高いこと。誰かに言われなくても、日頃から自分で勉強するようにしよう!

消費者を守る制度を知っておこう

さて、ふたりもよく利用しているであろう、衣料品メーカーの「ユニクロ」では、店舗で購入した商品の返品や交換について、3ヵ月以内ならば可能だということを知っているかな?

知ってます! しかもひどい汚れや傷がある商品を除けば、開封しても着用していてもOKですよね?

え!? それってすごい消費者思いの制度じゃない?

そうだよね。そして実は、この「ユニクロ」のように、3ヵ月とまではいかないまでも、条件によって8日間、あるいは20日間といった期間であれば、無条件で契約を解除できる制度があることを知っているかな?

クーリングオフ、ですか?

正解! 商品やサービスの契約(購入・申し込み)後、一定期間であれば、違約金などの請求・説明要求を受けることなく、一方的な意思表示のみで、無条件で申し込みの撤回または契約を解除できるこの法制度のことを「クーリングオフ(契約撤回請求権)」という。そしてクーリングオフは、販売方法や契約等の種類ごとに特定商取引法などの法律によって規定されているんだ。

友だちが、エステティックサロンの契約で使ったことがあると言っていました!

そうだったんだね。ちなみに先ほど出てこなかった販売方法で、「割賦(かっぷ)販売」というものがあるのだけど、これがどんなものかわかるかな?

「割賦」って、また難しい言葉が…初めて聞きました。

「割賦」とは、分割(2ヵ月以上の期間かつ3回以上)による支払いを条件にした販売方法のこと。それから「ネガティブオプション」というものもあって、こちらは注文されていない商品を勝手に送りつけて、相手が断らなければ買ったものとみなし、代金を一方的に請求する商法なんだけど、これらにもクーリングオフは適用されているんだ。

通信販売はどうなんですか?

通信販売においては、販売者が独自にキャンセル規定を設けている場合を除いてはクーリングオフは適用されないんだ。ほか、投資信託などのリスクのある金融商品もクーリングオフの対象外であるケースがほとんどだよ。

クーリングオフって、どうやったらいいんですか?

販売者にクーリングオフを通知するには、必ず書面で行う必要があって、クーリングオフ期間中に書面(ハガキや文書)を発送すれば有効となる。販売者に確実な通知をする方法は、内容証明郵便によるものが効果的だ。内容証明郵便とは、日本郵便株式会社が「誰が、いつ、誰宛に、どんな内容の郵便物を出したのか」を公的に証明してくれるものだよ。

これだけで本当にクーリングオフできるんでしょうか?

消費者と販売業者の間には、情報や交渉力などの面で格差がある。だから一定の場合に消費者の契約取り消しや無効などを認めて、消費者の保護を図ってくれる「消費者契約法」という法律があるんだ。これは消費者と事業者の間で交わされる契約全般に適用されるもので、保護される対象となるのは個人のみ。事業者は含まれない。

「消費者契約法」は、どんな時に適用されるんですか?

「誤認させる行為があった場合」「困惑させる行為があった場合」「消費者に一方的に不利となる契約条項がある場合」の3つ。追認できるときから6ヵ月、または消費者契約締結時から5年と、クーリングオフに比べて長期間にわたって適用されるよ。

消費者を守るための制度もいろいろあるんだなぁ。でもいざとなったらどうしたらいいか、わからなくなりそう…。

そんな時は、「消費生活センター」を頼りにしよう。消費生活センターは、消費者庁が管轄し、地方公共団体が設置している行政機関で、消費生活全般に関する苦情や問い合わせなど、消費者からの相談を専門の相談員が受け付け、アドバイスやトラブル処理を行ってくれるんだ。困ったときは、「消費者ホットライン」や、最寄りの消費生活センターに電話をしてみるとよいよ。

わかりました!

まとめ

「知らなかった」ではすまされないのが社会人。自分の行動に責任が持てるよう、「知る努力」を怠らないようにしよう。例えば万一のときに備えて法律を正しく理解するように努め、わからないことは社内の専門部署に確認するクセを持つことも大切です。

次回は、「お金を貯めるなら押さえるべきこと」について勉強します。お楽しみに!