災害支援しながら節税できる「ふるさと納税効果」秋は絶好のタイミング
目次
自分の出身地域や応援したい自治体に寄付ができる「ふるさと納税制度」。コロナ禍や豪雨災害で被害を受けた事業者への支援や災害支援のプロジェクトがふるさと納税でできるということで、再び同制度に注目が集まっています。
今回は、地域応援をしながら返礼品がもらえるふるさと納税について、FPが分かりやすく解説します。また、どれくらいのメリットや節税効果があるのか、具体的に節税できる額なども実際に計算しながら確認していきます。
えっ本当?共働き夫婦それぞれの名義でふるさと納税すると、寄付の上限も倍?
確定申告が不要!ふるさと納税が初めてなら「ワンストップ制度」から
ふるさと納税の目的と仕組みを分かりやすくおさらい
「納税」という言葉から、税金を納めるイメージを持つ人もいると思いますが、ふるさと納税とは、自分の出身地域や応援したい自治体に寄付する仕組みのことをいいます。
地方で生まれ、そこの自治体で教育や医療などの行政サービスを受けて育っても、やがて進学や就職を機に生活の場を都心部へ移し、納税も都心部で行っている人は多いと思います。しかしその結果、都心部の自治体は税収が増えますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません。
そこで今は都心部に住んでいても、自分を育ててくれた故郷に恩返しをする意味で、自分の意思で故郷に納税ができる制度としてふるさと納税が2008年に創設されました。
一般的には、自治体に寄付を行った場合、確定申告を行うことでその寄付金額の一部が所得税や住民税から控除されます。しかし、このふるさと納税では原則として自己負担2000円を除いた全額が控除の対象となります。全額控除されるとはいっても寄付金額には収入や家族構成などに応じて一定の条件がありますのでご注意ください。
また、ふるさと納税は、生まれ育った故郷だけではなく、自分が応援したい自治体を選びその自治体へ寄付することもできます。寄付を受けた自治体は、お礼の品として地域の特産品などをお返ししてくれるところが多くあります。ふるさと納税が人気の秘訣は、実はこの返礼品にあるのです。
自己負担金額が2000円で、その地域の特産品、お肉や野菜、お米や魚などが送られてきますので、家計にとっても大助かりです。
このお礼の品については、寄付金額の30%程度という国からの指導がありましたが、かつて一部の自治体ではその30%を大幅に上回る金額の返礼品を返したり、地域の特産品とは関係のない商品券などを返礼品に準備したりして、寄付をたくさん集めたことが問題になりました。
こうした問題を受けて、2019年に制度が改正され、今ではどこの自治体もお礼の品は寄付額の30%程度、返礼品はその地域の特産品というルールを守っているようです。
また、ワンストップ特例という制度がスタートしてからは、ふるさと納税後、自分で確定申告をしなくてもよくなりました。詳しくは後述しますが、条件は給与所得者であることと、ふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内である場合に限られます。
何のお金がどのくらい控除されるの? 住民税決定通知書を確認
ふるさと納税をすることで控除されるのは、住民税と所得税です。ここでは住民税がどのくらい控除されるのかについて説明します。
ふるさと納税では、寄付をした合計金額から2000円を差し引いた額が翌年の住民税から控除されます。年収や家族構成により上限額は異なりますのでその上限額も確認しておく必要があります。(ふるさと納税の上限額の計算については後述します。)
例えば、ふるさと納税を3万円行った場合、2000円を差し引いた2万8000円が税額控除となります。ワンストップ特例を使った場合は、翌年の住民税から2万8000円が控除となるので翌年納める住民税は、ふるさと納税をしなかった時よりも少なくなります。
確定申告を行った場合は、所得税から一部還付を受けて、その残りの金額は住民税から控除されるようになります。上限額については、年収と家族構成により変わります。おおよその上限額が分かる早見表は、総務省のホームページに掲載されているので参考にしてください。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
また、実際にふるさと納税を行った翌年、本当に住民税が低くなっているのかは、住民税決定通知書を見ると確認できます。
住民税決定通知書は、会社員であれば、毎年5月から6月になると会社から手渡されます。その用紙の左下にある「適用」という欄に「寄付金税額控除」という欄の金額が、「寄付金額− 2000円」となっていることを確認してください。この金額が確認できれば、控除がきちんと行われていて、前年に行ったふるさと納税が自己負担金2000円で済んだということが確認できます。
控除を受けるには確定申告など面倒な手続きが必要?(ワンストップ特例制度)
ふるさと納税の控除を受けるためには確定申告が必要ですが、下記の条件に当てはまる場合は、ワンストップ特例という制度を使うことができるので面倒な確定申告をする必要はありません。
〇給与所得者で寄付を行った年の所得について確定申告をする必要がない人
(2カ所以上から給与を受け取っている人は確定申告をする必要があります。)
〇1年間でふるさと納税を行った自治体が5つまでの場合
(ふるさと納税を行った回数が6回以上でも自治体が5つまでであれば対象となります。)
このワンストップ特例制度は2015年4月から始まり、面倒な確定申告をする必要がなくなったので、ふるさと納税をする人が一気に増えました。
ワンストップ特例制度の適用を受けるには、ふるさと納税を行う際、寄付先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出する必要があります。個人事業主や、6カ所以上の自治体にふるさと納税を行ったなどは上記の条件に当てはまらないので、確定申告をする必要があります。ワンストップ特例制度を使っても確定申告をしても自己負担の金額が2000円ということには変わりません。
生命保険やiDeCo、住宅ローンなど他の控除を受けている場合は注意
毎年の所得税や住民税を節税する方法として、ふるさと納税は大変有効ですが、税金を節税する所得控除にはその他にも生命保険料控除や個人型確定教室年金(iDeCo/イデコ)の掛金控除や、住宅ローン控除などがあります。
これらの控除を利用している人はふるさと納税の上限額が異なりますので注意が必要です。ふるさと納税のメリットを最大限生かせない可能性もあります。
特に住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用している人は年末の住宅ローン残高の1%が、その年に納めるべき所得税から控除されます。所得税から控除しきれなかった分は翌年の住民税から一定の金額まで控除される仕組みとなっています。
この住宅ローン控除やふるさと納税については税額控除であり、生命保険やイデコ(iDeCo)の掛金は所得控除となりますので、その意味合いは少し異なります。
イデコの所得控除や住宅ローン控除の税額控除を受けているからといってふるさと納税のメリットが全くないというわけではありません。その人の状況に合ったふるさと納税の上限額については、ふるさと納税のポータルサイト内にあるシミュレーション機能を使うと便利です。
控除額のシミュレーション事例
では具体的に控除額の確認をしていきます。前述したように控除額の自己負担金2000円を除いた全額が住民税や所得税から控除されるといってもその上限額は年収や家族構成により異なってきます。
【事例1】夫婦共働き子供1人(小学生)の場合
ふるさと納税を行う本人の給与収入300万円 → ふるさと納税上限額目安1万9000円
ふるさと納税を行う本人の給与収入500万円 → ふるさと納税上限額目安4万9000円
ふるさと納税を行う本人の給与収入700万円 → ふるさと納税上限額目安8万6000円
【事例2】夫婦共働き子供1人(大学生)の場合
ふるさと納税を行う本人の給与収入300万円 → ふるさと納税上限額目安1万5000円
ふるさと納税を行う本人の給与収入500万円 → ふるさと納税上限額目安4万4000円
ふるさと納税を行う本人の給与収入700万円 → ふるさと納税上限額目安8万3000円
子供が1人のケースでも小学生と大学生ではその上限額の目安は異なります。これは高校生や大学生の子供に対しては扶養控除があり、もともと税金が低くなっているからです。では実際に高校生と大学生の子供がいる事例も計算してみます。
【事例3】夫婦共働き子供2人(大学生と高校生)
ふるさと納税を行う本人の給与収入300万円 → ふるさと納税上限額目安7000円
ふるさと納税を行う本人の給与収入500万円 → ふるさと納税上限額目安3万6000円
ふるさと納税を行う本人の給与収入700万円 → ふるさと納税上限額目安7万5000円
いかがですか。もともと所得控除の金額が大きく、納税額が少なくなっているので、ふるさと納税の限度額も低くなるのですね。
この上限額の目安は、総務省のホームページに基づくものですが、生命保険やiDeCoに加入している人や、住宅ローン控除を受けている場合は、ふるさと納税のポータルサイト内にあるシミュレーション機能を使い、ご自身で計算することをおすすめします。
主なふるさと納税サイト紹介
【ふるさとチョイス】
全国で感染が広がる新型コロナウイルスの影響は、地域の事業者にも広がりを見せています。ふるさとチョイスでは全国の自治体と連携して新型コロナウイルスの被害に対し、ふるさと納税の寄付で多角的に支援ができる仕組みがあります。
【さとふる】
令和2年7月豪雨の被害に遭われた熊本県や福岡県、山形県の自治体へのふるさと納税や、新型コロナウイルス感染症の治療・感染拡大防止活動に従事する医療関係者への支援ができるふるさと納税を特集しています。
【楽天ふるさと納税】
地域の課題解決への取り組みを「プロジェクト」とし、今流行りのクラウドファンディングとしてアイディア実現や課題解決の資金を募る仕組みもあります。応援したい地域の取り組みや課題を、直接支援することができる上、手続きは、通常のふるさと納税と変わりません。
まとめ
ふるさと納税の仕組みや具体的な節税額の計算や効果について理解が深まったでしょうか。特にサラリーマンは個人事業主とは違い、節税する手段が限られていますので、ワンストップ特例制度を活用してふるさと納税を始めてみてはいかがでしょうか。
ふるさと納税をするタイミングは1年の中で特に決まってはいませんが、11月から12月の年末に利用される方が多いようです。
また、ポータルサイトからクレジットカードを利用して行っている方が多いようですが、何か大きな買い物をするタイミングなどは限度額が気になるので避けた方が良いでしょう。夏や冬のボーナスを見込んでその1カ月前にクレジットカードを利用するとスムーズかもしれません。
返礼品については、季節によって変わる自治体もあるので、今が旬の野菜や特産品などを狙ってするのも良いでしょう。
年末ギリギリで行う場合は、支払うタイミングに気を付けてください。税額控除となるタイミングはクレジットカードの場合は決済を行った日、銀行振り込みや払込票を使った場合はその金額を振り込んだ日、現金書留の場合は自治体が受け取った日となりますのでご注意ください。
年末は自治体の業務も混雑しがちで、返礼品の送付に時間がかかることがあります。9月から10月は野菜やお米などの収穫時期で、返礼品にもこういった旬の特産物が並びますので、秋にふるさと納税を利用することがおすすめです。
えっ本当?共働き夫婦それぞれの名義でふるさと納税すると、寄付の上限も倍?
確定申告が不要!ふるさと納税が初めてなら「ワンストップ制度」から
ふるさと納税についてのQ&A
Q.ふるさと納税の限度額について、年収と家族構成(特に扶養家族がポイント)ということは分かりました。具体的な控除額は事前に計算できますか。
ふるさと納税にはもちろん限度額などはありません。いくらでも行うことができますが、自己負担が2000円で済む限度額は決まっています。概ね市民税の所得割額の20%が限度額となります。具体的な計算をご自身で行うのはとても複雑なので、ポータルサイトのシミュレーション機能を使うことをおすすめします。
Q.ふるさと納税を行った際、確定申告をすると所得税から還付される金額より市民税から還付をされる額が大きくなるのでしょうか。
ふるさと納税は、実際に寄付をした金額から2000円を引いた額が税額控除となります。しかしキャッシュバックのような制度ではないので、実際にどれくらいの額の税金が低くなったのかは分かりにくいです。具体的には住民税決定通知書で確認してください。