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10月から年末調整が電子化に!控除申告で会社員が知っておきたいこと (2ページ目)

ためる 中村 賢司

年末調整ではどんな控除が受けられるのか

さてここでは年末調整について改めておさらいをしたいと思います。そもそも年末調整とはその年の1月から12月までに支払われた給料から仮の計算で天引きされた所得税を精算する手続きのことをいいます。

毎月給与から引かれている所得税はあくまでも概算のため、従業員それぞれの家族構成や生活事情に合わせた控除を申告し、本来その人が納めるべき所得税を再計算する必要があります。この所得控除を加味することにより多くの給与所得者の場合、差し引かれた税金が返金されるようになります。

ではその所得控除にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

年末調整時に受けることのできる控除

「基礎控除」
基礎控除とは、すべての納税者に対して適用される控除のことをいいます。令和元年(2019年)分までは一律38万円でしたが、税制改正により令和2年(2020年)年分以降は、合計所得金額が2400万円以下の場合48万円に引き上げられています。

合計所得金額が高くなるほど、控除額は低くなっていきます。
・2400万円超2450万円以下の場合:32万円
・2450万円超2500万円以下の場合:16万円
・2500万円超の場合:基礎控除はゼロ

「配偶者控除/配偶者特別控除」
配偶者控除とは、配偶者が一定の所得以下であれば、受けられる控除のことをいいます。基礎控除が10万円増額されたことに合わせて、配偶者控除を受ける際の配偶者の一定の所得区分も10万円ずつアップしています。

配偶者の年収103万円以下の場合、70歳未満の配偶者控除は下表の通りです。

また、配偶者の年収が103万円を超えていても、下表の通り、配偶者特別控除を受けることができます。


「扶養控除」

扶養控除の対象となる扶養親族は、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいい、年間の合計所得金額が48万円以下という所得の要件があります。扶養控除の金額は以下の通りです。


※1 「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
※2 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
※3 老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
※4 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者またはその配偶者と普段同居している人をいいます。

「生命保険料控除」
納税者が生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合に一定の金額を所得から控除されることを生命保険料控除といいます。金額については以下の通りです。


なお、この表の計算式に当てはめて計算された控除額は、死亡保険等の生命保険料、介護保険や医療保険等の保険料、個人年金保険の保険料など、それぞれの保険料に対して控除され、最大12万円受けることができます。

「住宅借入金等特別控除」
個人が住宅ローンを利用してマイホームの取得やリフォームをした場合、一定の要件を満たしていれば、年末の住宅ローン残高の金額に応じて所得税から控除を受けることができる制度です。所得税からの控除の他、住民税からも控除されるケースもあります。

具体的な控除額は、年末の住宅ローン残高の1%(限度額40万円、認定長期優良住宅等の場合50万円)です。控除される期間は10年間ですが、令和2年12月31日までに取得した住宅については11年目から13年目まで年末の住宅ローン残高の1%、もしくは住宅取得等対価の額から消費税額を引いた2%÷3の金額が3年間特別に控除されます。

年末調整後に受けられる控除にはどんなものがある?

書類を手にした笑顔の女性
【画像出典元】「stock.adobe.com/baranq」

年末調整後に受けることのできる控除

「ふるさと納税などの寄附金控除」
ふるさと納税とは、納税という言葉が使われていますが実際には都道府県、市区町村への寄付のことをいいます。一般的に自治体に寄付した場合には確定申告を行うことでその寄附金の一部が所得税及び住民税から控除されますが、ふるさと納税では原則として自己負担額の2000円を除いた全額が控除の対象となります。

詳しくはこちらの記事をお読みください (https://mymo-ibank.com/money/3165

「医療費控除」
医療費控除とは、その年に支払った医療費が一定額を超える時に所得控除を受けることができます。支払った医療費とは納税者本人または生計を一にする配偶者やその親族の分も含まれます。医療費控除額は以下の計算式で求められます。

医療費控除額=1年間で実際に支払った医療費の合計額-生命保険などで補填される保険金額-10万円」

医療費控除は支払った医療費が10万円を超えなければいけませんが、10万円を超えない場合でも「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」を選択することで、ドラッグストアなどで支払った医薬品等の購入日の合計額を所得から控除することができます。この場合の控除金額は、年間1万2000円を超えた場合が対象となり、8万8000円が上限となります。

詳しくはこちらの記事をお読みください(https://mymo-ibank.com/money/1661

「雑損控除」
雑損控除とは、災害や盗難もしくは横領等によって資産に損害を受けた場合、一定の金額について所得控除を受けることができる控除のことをいいます。

この雑損控除の対象は、震災や風水害、雪害や落雷などの自然現象による災害や、火災、盗難、横領等になります。なお、詐欺や恐喝は対象となりません。

雑損控除の具体的な金額は次のいずれかの多い方の金額です。
(1) (差引損失額)ー(総所得金額等)×10%
(2) (差引損失額のうち災害関連支出の金額)ー5万円

まとめ

今回は年末調整の電子化について具体的な方法や、そのメリット、準備しておく方法について紹介しました。特に以下の点についてご理解いただければと思います。

・年末調整の電子化により会社側の会社側と従業員の手続きが大幅に軽減される。
・年末調整の電子化には、会社側、従業員それぞれ準備が必要である。
・従業員側は、マイナポータルを利用することでよりその手続きが簡素化される。
・会社側は、なるべく早めに従業員へ周知徹底する必要がある。
・改めて所得控除について理解を深めておく。

年末調整の電子化については、会社側、従業員側にとって双方ともメリットしかありません。今までになかったソフトウェアの導入など多少戸惑うこともあるかもしれませんが、今年それを行うことにより、来年からの年末調整がさらに楽になりますので、今からでも理解を深め、年末調整の電子化を進めていくようにしましょう。

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年末調整についてのQ&A

Q.マイナポータルと連携させるとは具体的にどのようなことですか?

A.マイナポータルとの連携とは、従業員が年末調整申告書データを作成する際、保険料控除などで使用する控除証明書のデータを、マイナポータル経由で一括取得できる機能のことをいいます。このマイナポータル連携を利用するには、マイナンバーカードの取得や読み取り機器の準備が必要となります。

Q.年末調整のソフフトウエアとは、どのようなソフトが必要になるのですか?

A.年末調整控除申告書作成用のソフトウェアについては、国税庁が令和2年10月から利用可能となるソフトウェアを無償提供する予定です。そのソフトウェアを使い従業員がデータの入力や控除証明データの連携を行い、年末調整申告書を作成します。ソフトウェアは、国税庁が無償提供するソフトのほか、会社側が使用している給与計算ソフトなど民間のソフトウェアもあります。どのソフトを使うかは勤務先に確認してください。

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