火災保険料が値上げ!賃貸マンションは管理会社指定の保険じゃないとダメなの?
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賃貸マンションにお住まいの人は、入居時に仲介をしてくれた不動産会社や管理会社から指定された火災保険に入っていることが多いでしょう。でもそれって絶対指定の保険でないとダメなのでしょうか?
そこで今回は、火災保険料が年々上がっている現状と、自分の住まいや生活に合った最適な火災保険選びのポイントをFPの目線から解説します。
火災保険は年々増加傾向。自然災害が多い地域は10%以上も!?
近年、大型台風やゲリラ豪雨などの自然災害が増えたことで、火災保険の保険金支払いも年々増加傾向にあります。
特に2018年の西日本豪雨などの自然災害による保険金支払額は、大手損害保険会社4社の合計額が過去最高の1兆6000億円まで膨らみました。2019年も千葉県など東日本を相次いで襲った大型台風や、2020年に熊本県をはじめとする九州地方を襲った大雨被害も甚大でした。
これを受けて、保険会社は2021年1月に住宅向けの火災保険料を全国平均で6~8%引き上げました。特に災害が多い地域では、10%以上保険料が上がる地域もあります。2019年10月にも火災保険料は6~7%値上げされたばかりなので、年々高くなっていることが分かります。
保険料の値上げはどうやって決まるのか
では実際にどれぐらい値上げされるのかみていきましょう。火災保険は、建物の構造によりその料率が3つに区分されています。
M構造:マンションなど(鉄筋コンクリート造りの共同住宅)
T構造:耐火住宅など(鉄骨造の耐火構造建物)
H構造:非耐火住宅など(M構造とT構造以外の木造等の非耐火構造建物)
損害保険会社が火災保険の保険料を決める際、参考にしている料率があります。損害保険料率算出機構が算出している参考純率というもので、2019年10月に改訂した住宅総合保険の参考純率によると、平均で4.9%引き上げるとされています。
実際には、都道府県や前述した建物の構造により大きく異なってきますが、次に紹介する3つの表のように福岡県では概ね料率は引き下げとなり、熊本県や宮崎県は大幅に上がる見込みです。(前提条件、保険金額:建物2000万円、家財1000万円とした場合)
① すべての築年数の契約を平均した改定率(2019年10月改定)
② 築年数5年未満の例(2019年10月改定)
③ 築年数10年以上の例(2019年10月改定)
※参考資料:損害保険料率算出機構の火災保険参考純率改定のご案内(https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/pdf/201910_announcement.pdf#view=fitV)
賃貸マンションの場合、管理会社指定の火災保険でないとダメ?
賃貸マンションに入居する際、当たり前のように火災保険の申込書が準備されていて、そのまま契約する人が多いようです。また翌年度の更新も自動更新をしていて火災保険の補償内容を確認する人は少ないでしょう。
この時加入する火災保険は、入居者の財産を守るためというよりは、大家さん(家主)の建物を守るためで、多くの場合「借家人賠償特約」といる特約が付加されています。これは、入居者が火事を起こした場合に、大家さんに建物の損害を賠償するという補償です。
この特約が付加されていれば、不動産会社や管理会社も特に保険会社の指定は無いようなので、次回の更新の時には自分で保険会社を選び、補償内容もよく確認して更新するようにしましょう。
自分で火災保険を選ぶ時の選び方ポイントは3つ
火災保険の補償内容には、主に火災、落雷、破裂、爆発、風災、ひょう災、雪災、水濡れ、盗難などがあります。この補償は大体どこの保険会社に加入しても同じで、これに加えオプションとしてさまざまな特約を付けることができます。
賃貸マンションに住んでいる場合、建物に保険をかける必要が無いので、自分の家財道具に保険をかけるわけですが、上記の主な補償に加えて、下記の3つのオプションを付けることをおすすめします。
●持ち出し家財の補償を付ける
自宅内の事故を想定している火災保険ですが、持ち出した家財についても補償してもらうことができます。例えば外出中にバッグをひったくられたなどの盗難にあった場合、そのバッグや中に入っていた財布等の補償を火災保険から受けることができます。
保険会社によりこの特約の文言は異なりますが、「持ち出し家財」や「自宅外家財」という表現を使っているところが多いようです。
●不測かつ突発的な事故の補償を付ける
故意ではなく偶発的な事故で、テレビが倒れる、ビデオカメラを落とすなどで壊した場合、この補償を付けておくと火災保険から保険金が出ます。保険会社によりますが「破汚損特約」という表現を使っているところが多いようです。またオールリスクの火災保険であれば、こういった補償がはじめから付いています。
●賠償保険特約を付ける
他人に損害を与えた場合、その賠償金に対し保険を使って請求することができます。最近話題の自転車保険などは、この特約を付けておくと別途入る必要はありません。「個人賠償責任保険」という名称の特約がそれにあたります。
FPへの相談事例では・・・
●上階の人の不注意による水漏れで家財道具に損害があった賃貸マンションの人
上階の人がお風呂の水を溜めるため水道を出しっぱなしで出かけ、お風呂から水が溢れ出し、下階の住居人の家財道具を濡らしたという事故がたまにあります。こういった場合、上階の人が賠償責任保険に入っていればその保険を使うことができるのですが、もし入っていない場合はご自身の火災保険を使わなければいけません。
実際に弊社のお客様でもこのような被害があり、ご自身の火災保険で保険金がおりたというケースがありました。
●6年前の台風による屋根の損害に保険金は出るの?
過去に起きた自然災害による損害も、火災保険を使って修理することができます。しかしこの場合、保険法で定められている時効は3年なので、3年前までの事故にしか適用されません。
弊社に寄せられた相談は6年も前の事故だったため、補償はされませんでしたが、保険会社によっては、当時の事故状況が分かる写真や業者からの見積もりや領収証等損害額が分かる資料があれば対応してくれるケースも稀にあるようです。
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まとめ
賃貸マンションに住んでいる人の火災保険の保険料は、年間1万円程度ととても安いので、どのような内容か、またどこの保険会社に入っているかを意識している人はあまり多くいません。
しかしせっかく火災保険をかけているわけですから、多少保険料が高くなっても内容を充実させることをおすすめします。
紹介した3つの特約を中心に見直すことがポイントです。
火災保険は火事や地震でしか使えないと思っている人が多いようですが、盗難や偶然な事故による損害も補償されます。次の更新の時は、ご自身でよく調べて、損害保険会社の担当者とよく相談をして見直されることをおすすめします。