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社会人2年目の給料、新卒時より下がってない⁉手取りが時々増減する理由は

ふやす 白浜 仁子

社会人2年目の給料、新卒時より下がってない⁉手取りが時々増減する理由は

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給与口座や明細の履歴を眺めていて「…ん?給料が新卒1年目の時より減ってる!?」と気付いたことはありませんか。そのわけは…。年収や所得、税金など様々な理由で増減する手取りのカラクリを解説します。

社会人2年目で1年目より手取りが減る理由は「住民税」

ピカピカの社会人1年生になると、学生時代と比べて自由になるお金がグンと増えます。コロナ禍で行動の制約はあるものの、ショッピングやレジャーなど生活全般で選択肢が増えて、これまでより少し高価な買い物をしたという人もいるのではないでしょうか。このように社会人1年目でたくさんお金を使ってしまった人は特に2年目は要注意。2年目の給与は、会社からの支給額が同じでも手取りは少なくなります。

2年目に手取りが減る理由は、住民税が天引きされるようになるからです。1年目は、給与明細に書いてある税金は所得税だけですが、2年目からは住民税の欄にも記載されるようになります。

そもそも収入がある人は、原則、所得税と住民税を納める義務があります。ただ、所得税は1年目から給与天引きされますが、住民税は引かれません。
それは、住民税は1年遅れで納めることになっているからです。前年の確定した収入をもとに住民税額が計算され、6月~翌年5月に納めます。つまり、住民税は入社2年目の6月から引かれるようになるので、その分手取りが減ってしまうというわけです。

2年目から手取りはいくら減るのか、年収別に計算

税金
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では、2年目からいくら手取りは減るのでしょうか。
住民税(所得割)の税率は10%です。収入に対してではなく、収入から一定額が控除され、控除後の課税所得に10%をかけます。人ごとに控除額が異なるため大まかな計算になりますが、住民税がどのくらいの負担になるのか見ていくことにしましょう。

前年の年収が、200万円、300万円、400万円のケースです。

➀年収200万円のケース

課税所得は、
(年収200万円)-(各種控除141万円(*))=59万円

よって納める住民税は、
(課税所得59万円)×10%=5.9万円

となり、給与から毎月天引きされる住民税は
(住民税5.9万円)÷12月=4,900円

となります。

*各種控除141万円・・給与所得控除68万円、社会保険料控除30万円、基礎控除43万円

②年収300万円のケース

課税所得は、
(年収300万円)-(各種控除186万円(*))=114万円

よって、納める住民税は、
(課税所得114万円)×10%=11.4万円

となり、給与から天引きされる住民税は
(住民税11.4万円)÷12月=9500円

となります。
*各種控除186万円・・給与所得控除98万円、社会保険料控除45万円、基礎控除43万円

③年収400万円のケース

課税所得は、
(年収400万円)-(各種控除227万円(*))=173万円

よって、納める住民税は、
(課税所得173万円)×10%=17.3万円

となり、給与から天引きされる住民税は
(住民税17.3万円)÷12月=1万4400円

となります。
*各種控除227万円・・給与所得控除124万円、社会保険料控除60万円、基礎控除43万円

社会人2年目でなくても手取りが減る時期とその理由

バリバリ働く若者たち
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➀住民税決定通知書が来る6月

前述のように、住民税は、前年分の収入をもとに計算され6月~翌年5月に納めますが、そもそも住民税の金額はいつ分かるのでしょうか。それは、毎年6月になると職場から受け取る「住民税決定通知書」で確認できます。そこには、前年の収入やそれをもとに計算された住民税について記されています。住民税は、前述した住民税(所得割)の税率10%以外に、実際は、均等割という自治体により年間5000円~7000円程度の負担がありそれも確認することができます。

先ほど、社会人2年目になると住民税の支払いが始まるので1年目より手取りが減ると紹介しましたが、2年目以降も住民税の影響で手取りが減る場合があります。

たとえば、社会人3年目です。
3年目は住民税の負担がさらに増え手取りが減ります。理由は、勤務している月数に違いがあることからです。社会人2年目に納める住民税は、社会人1年目の収入4月~12月の9カ月間に受け取る給与等がもとになりますが、社会人3年目に納める住民税は、社会人2年目の収入1月~12月の12カ月間に受け取る給与等がもとになるため、当然に年収が増えることから住民税も高くなるのです。

他には、役職が上がり収入がアップした翌年の住民税も増えます。
役職が上がったばかりの年は支給額が増え手取りが増えますが、翌年に1年遅れで増えた収入に対して住民税を納めることになるため、その分、使える金額は減ってしまいます。

反対に、役職定年などで給与が下がった場合は要注意です。
そもそも給与が下がったのだから、生活に使えるお金は減るのですが、住民税は、前年の高い収入をもとに計算された金額を納めるため、さらに手取りは減ってしまいダブルパンチを受けてしまいます。

②3~5月は残業しない方がよいといわれるワケは

また、毎月の手取りは、住民税だけでなく厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料の影響も受けます。
社会保険料は、住民税のように1年単位で計算して納めるのではなく、毎月の給与額をもとに計算します。社会保険料は所得全体で14%強の負担となりますが、従業員ごとに社会保険料を計算すると、毎月、莫大な事務量となってしまうため、毎年4月~6月の給与をもとに標準報酬月額という大きく分けた等級に振り分け、毎月、一定の社会保険料を納めるようになっています。

もう少し具体的に説明します。この標準報酬月額は、給与が19.5万円から21万円の人は一律20万円、25万円から27万円の人は一律26万円で計算するという風に切り良くまとめられます。4月~6月の給与をもとに決定し、その標準報酬月額で10月から翌年9月までの1年は、厚生年金保険料や健康保険料が計算され天引きされます。

筆者が、ある企業で従業員研修を担ったときのことです。資産運用や税金などへの関心が高い従業員さんが多いと感じる企業でした。ちょうど春先に訪問したからか、3月~5月はできるだけ残業をしないよう気を付けているという話を耳にしました。これは、1年の標準報酬額が決まる4月~6月の給与額を抑えて、社会保険料の負担が増えないようにするためです。ただ、ある部署の従業員さんは3月~5月が繁忙期なのでどうしても残業代が増えてしまう、他の部署がうらやましいと笑いながら愚痴をこぼしていました。

このように、社会保険料は4月~6月に支給される給与をもとに標準報酬月額が決定し、10月からの社会保険料が決まるため、3月~5月の働き方によっては、負担が増え給与の手取りがこれまでより減る可能性があるというわけです。

標準報酬月額(福岡県)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r2/ippan_3/r20940fukuoka.pdf

➂その他影響するところはある?

他にも手取りに影響することがいくつかあります。

健康保険料の影響
前述の社会保険料のうち健康保険料の負担割合です。健康保険の種類は企業によって異なりますが、保険料率が引き上げられると支払額が増え手取りに影響します。特に大企業が運営している健康保険組合は、高齢化の影響を強く受け負担が大きく増えているようです。せっかく給与がアップしてもそのことで手取りが殆ど増えていないなどもあり、経済を活性化させるという観点からも問題視されています。

所得税の影響
また、手取りには所得税の影響も受けます。たとえば、配偶者の収入が一定以下のときに受けられる配偶者控除は、本人の合計所得が900万円を超えると満額の38万円から26万円に減額され所得税の負担が増えます。さらに950万円を超えると控除は13万円になり、1000万円を超えると配偶者控除は受けられなくなります。これまで所得基準内にぎりぎりおさまっていたのに今年は少し超えてしまったという場合は手取り減を感じるかもしれません。

扶養控除の影響
扶養控除も同様です。子供は16歳になると扶養控除の対象となり63万円控除が受けられるようになりますが、その子供が社会人になり、働くようになると扶養控除が受けられなくなるため手取りはまた減ってしまいます。

このように、給与の手取りは税金や社会保険料の影響を受け変化していくのです。

給料と手取りについてまとめ

今回は、社会人2年目に手取りが減るということを中心に見てきました。簡単にまとめます。

社会人2年目は仕事に少し慣れてきて、この春、新しく後輩を迎える時期でもあります。
コロナ禍で誰も経験したことのない社会人生活を送った2年目の皆さん、後輩の気持ちを一番分かるのもあなた方です。仕事もですが、マネー知識の面でもぜひサポートしてあげてください。

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給料と手取りについてのQ&A

Q. 2020年12月に結婚しました。妻は収入が殆どないのですが、2020年から配偶者控除を受けられますか?それとも来年から対象でしょうか?

A.収入要件等を満たしているなら2020年から配偶者控除を受けられます。配偶者控除や扶養控除などは、その年の12月末時点で対象者かどうか判断します。つまり12月に結婚したのであれば、12月末には配偶者控除の対象となります。年末調整が終わっている場合は、確定申告をすると所得税の還付を受けることができます。

Q.妻が親の介護をするため正社員で働いていた会社を辞めました。退職までの収入が130万円を少し超えているのですが扶養に入れることはできますか?

A.扶養にできます。税金面では夫の所得要件を満たしているなら配偶者特別控除が受けられるため所得税や住民税の負担が減ります。社会保険では健康保険料や厚生年金保険料の負担が増えることなく扶養とできます。ただ、パートなどで少し働くつもりで雇用保険から失業給付を受けるのでしたら、その金額によっては社会保険の扶養に入れず妻自身が国民年金や国民健康保険等に加入しなければならなくなります。