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共働き夫婦の住宅ローン、どういう考え方で選べばいい?気を付けるポイントは?

かりる 中村 賢司

共働き夫婦の住宅ローン、どういう考え方で選べばいい?気を付けるポイントは?

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一生に一度のお買い物、マイホーム。
住宅の購入を考えるときに重要なのが住宅ローン選びです。今回は夫婦で住宅ローンを選ぶ際の考え方や契約形態の種類、注意した方が良い点などについて考えていきましょう。

住宅ローンの金利タイプは大きく3つ

住宅ローンとはその名の通り、契約者が住宅を取得する際に利用できる金融商品です。自宅として住むことを前提にしているため、他の金融商品と比較すると、住宅ローンの貸出金利は低く抑えられています。国の金融緩和政策の恩恵を受け、2021年4月現在、固定金利型のフラット35が1.37%、大手のネット銀行の変動金利型は0.4~0.5%と住宅ローン金利は史上最低の水準を維持しています。 

融資を受ける際に注意してほしい金利タイプですが、住宅ローンの金利タイプは大きく三つの方式に分けられます。

①    固定金利型
返済開始から返済終了まで貸出金利が固定されている。金利が変わらないため総返済額があらかじめ確定すること、返済額が変わらないため返済計画が立てやすいことがメリット。一方で返済開始時の毎月の返済額は変動金利型などと比較すると高くなる。

②    変動金利型
半年ごとに金利が見直される。返済開始時の返済額は固定金利型などと比較すると低く、返済額に占める利息の割合が大きいので元金が減りやすい。一方で返済の途中で毎月の返済額が変わる可能性があり、返済が終了するまで総返済額が確定しない。

③    固定金利期間選択型
返済開始時の金利が一定の期間中は固定されており、(固定金利期間は、「2年、3年、5年、7年、10年、15年、20年」があり、この中からローンを借りる人が固定金利期間を選択することができる。)固定期間終了時に改めて固定金利型や変動金利型などを選択。当初の固定期間中に金利が変わったとしても返済額は変わらない。

夫婦で住宅ローンを組む時の考え方のポイント

住宅の購入計画を考える際に外せないポイントとして世帯収入と総予算があげられます。世帯収入に対して毎月の返済額がどれくらいを占めるのか?夫や妻の給与単独で毎月の返済が可能かどうか?で契約形態を考える必要があります。契約の方法は夫婦どちらかが単独で契約するか、もしくは夫婦共同で契約するかです。後述しますが離婚時のリスクを考えると、筆者は単独契約をオススメします。 

共働き夫婦での住宅ローンの組み方

近年、「夫婦ともにフルタイムで勤務している」夫婦共働きの家庭が一般的になってきました。そのようなご家庭で住宅購入する際に話題になるのが住宅ローンをどのような契約にするかです。

①夫婦どちらかが単独で住宅ローンの契約をする

夫もしくは妻名義で、単独で住宅ローンの契約を行います。妻が専業主婦・パート勤務、夫が会社員という場合が多く、これまでは夫単独で住宅ローンを組むことが多かったのですが近年では妻単独名義で住宅ローンを契約することも増えてきました。いずれにしても金融機関との契約は単独で行い、住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)の適応も契約者のみです。

②夫婦共同で住宅ローンを契約する

夫婦共同で住宅ローンを組む場合、三つの契約形態があります。

・ペアローン
夫婦それぞれで住宅ローンを契約します。住宅ローン控除や団信もそれぞれに対応しています。ローンの契約を二つ行いますので事務手数料なども二つ分が必要です。

・連帯債務型
どちらかが主債務者になり、もう一人は連帯債務者です。連帯債務者は主債務者と同じ返済義務を負います。また連帯債務者は主債務者と同様に住宅ローン控除を利用できますが、団信は金融機関によって取り扱いが異なります。

・連帯保証型
夫婦のどちらかが債務者として返済義務を負い、もう一人が連帯保証人となり債務者が住宅ローンを返済できなくなった場合は代わりに返済する義務があります。連帯債務型と異なり、住宅ローン控除も団信も適応されません。

それぞれの特徴を図にしてみましょう。

夫婦共同で住宅ローンを契約する最大のメリットは収入合算を活用できる点です。収入合算とは夫婦の収入を合算し世帯年収として住宅ローンを借りることを言います。収入合算することで、単独では借り入れできない金額を借り入れできる可能性が高くなり、住宅選択の幅が広がります。

共働きでローンを組む際に気を付けたいこと

夫婦で住宅購入する際に注意しておきたい点がいくつかあります。

①    世帯年収の見込みはどうか?

住宅購入から返済終了までの期間中、大きな世帯年収の変動があるかどうかを確認しましょう。仮に世帯年収に変動があったとしても無理なく返済ができるかどうかが重要です。特に奥さまが出産で仕事をお休みし、収入が減っている期間が重要です。

②    団体信用生命保険はどうか?

団体信用生命保険(団信)は返済期間中に債務者が死亡した場合、残債を清算し遺族に住宅ローンの債務が残らないようにするための保険です。連帯債務型や連帯保証型を契約し、連帯債務者の妻が死亡したり、癌が発見されたりしても主債務者にしか団信が適応されません(連帯債務型の場合、金融機関により団信が適応されるケースがあります)。

そのため夫婦のどちらかが単独債務の場合も含め、団信が適応されない方が死亡した際の死亡保障をよく考える必要があります。特に現在の社会保障制度では、正社員・パート勤務など働き方の違いがあったとしても妻が亡くなった際の公的保障は夫が亡くなった場合と比較して少なくなっています。

●夫婦ともに35才、子供0才、夫婦で厚生年金加入、収入も同程度と仮定した場合
・夫婦で遺族年金の受給額に差はないが、妻が受け取るケースの方が受給期間は長くなる
・妻は遺族年金に加えて、子供が18才を過ぎても高齢寡婦加算がある
・妻死亡時の遺族厚生年金は、夫ではなく、子どものみが受給する(夫死亡時は妻と子が受給)

住宅ローン返済やお子さんがいる場合の教育費などを考えると妻の死亡保障もきちんと考えておく必要があります。

住宅ローン減税の面から契約の種類を見ると

住宅ローン
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住宅ローン減税とは、簡単に表現すると返済開始から10年間、所得税と住民税からその年の住宅ローン残高の1%を還付してくれる制度です。特徴をまとめます。

なお住宅ローン減税で適応される最大控除額は10年間で400万円、11~13年目は最大80万円までです。ペアローンや連帯債務型であれば、それぞれの所有割合に応じて住宅ローン控除は適応されます。ただし連帯保証型は住宅ローン控除が主債務者のみに限定されているため、連帯保証人の収入には適応されません。

このことから「一人で契約してもローンの審査に通るけれど、住宅ローン控除を枠一杯まで使いたいため、ペアローンにする」という方も見受けられます。

住宅ローンは最初に頭金が多い方がいい?途中で繰り上げ返済の方がいい?

心情の面ではいろいろな考え方があると思いますが、ここでは経済的な面で考えてみます。

頭金を多く入れるメリットは借入金額を少なくできる=毎月の返済額や総返済額を少なくすることです。

例えば必要な費用が全部で4000万円のケースで試算してみます。

前提条件:返済期間35年 金利1%(途中での変動はなし) 

 
*筆者作成

頭金の多い・少ないで毎月の返済額が異なっているのがおわかりいただけるでしょうか?

表から見てみると、頭金なし・フルローン時の総返済額は約4742万円です。一方、頭金500万円と、その場合の総返済額約4150万円を合わせるとおよそ4650万円になります。そうすると頭金なしのフルローンと頭金500万円の場合で比較しても差額は100万円程度です。

この100万円を「頭金を貯めるまでに必要な時間のコスト」と考えると、「賃貸物件に住んでいる人が頭金を貯めるまでは住宅を買わない=家賃を払い続けること」との兼ね合いになってくるのではないでしょうか?

また家を購入した際は引っ越し代、家具・家電の買い替えなど思いがけない費用が想像以上にかかります。これらの費用は住宅ローンに組み込むことはできませんから必然的に現金が必要になってくるでしょう。

返済期間に関しては短いほうが総返済額は少なくなりますが、毎月の返済額は多くなります。一方、返済期間が長いほうが総返済額は多くなりますが毎月の返済額は少なくなります。なお繰り上げ返済をして返済期間を短くすることは可能ですが、延ばすことは基本的にできません。総支払額が少ないor毎月のやりくりが楽、自分たちの場合はどちらがよいかを検討してください。

繰り上げ返済に関しては「期間短縮型」と「返済額削減型」があります。以前は期間短縮型を選択する人が多かったのですが近年は内容の充実もあり、生命保険の代わりに団信を活用することも目的に返済額削減型を選ぶ人が増えています。ただし総返済額は期間短縮型を選択するほうが少なくなります。

このことから筆者は住宅ローンの頭金に関して下記のように考えます。

なお金利水準が今よりも上昇した場合は、頭金を多めに準備することで金利のインパクトを減らすことも選択肢になるでしょう。

離婚したら住宅ローンはどうなる?

口論する夫婦
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単独債務以外の形態で住宅ローンを借り、残念ながら離婚になった場合にどうなるか?
結論から申し上げると100%の確率と言ってよいほどトラブルになるでしょう。離婚して婚姻関係が解消されたとしても、住宅ローン契約上の連帯債務者や連帯保証人としての役割は解消されません。

例えば夫が主債務者、妻が連帯保証人となっている住宅ローンの契約があったとします。離婚後も元夫が住宅ローンを継続して返済する約束でしたが、残念ながら返済が滞ってしまったとすると、金融機関は連帯保証人である別れた元妻へ住宅ローンの返済を求めます。仮に元妻が再婚していたとしても変わりません。

このケースを回避する方法としては、離婚時に夫の単独名義になるように住宅ローンを借り換え、連帯債務・連帯保証を外すことが必要でしょう。ただし収入や物件の担保評価などの結果、残念ながら借り換えができないこともあります。その場合は連帯債務や連帯保証を外すことができません。この点が夫婦共同で住宅ローンを組む場合、最大のリスクといえるでしょう。

まずはライフプランを考え、将来の世帯支出を考えることから

住宅購入の資金計画を作成する際は住宅だけではなく、教育費・老後資金を含め世帯で想定される支出をトータルで考えましょう。

住宅購入は多くの人にとって、一生に一度の買い物です。実際に住宅購入の契約をすると、諸々の手続きなどを含め時間がいくらあっても足りなくなってきます。その中で「今まで買ったことがない、一番大きな買い物、金額も他とは比べ物にならない」という商品の支払い方法を考えなければなりません。そうなると他との比較する十分な時間もなく、冷静な判断も難しくなります。

一戸建て・マンションを問わず、予算と住宅ローン選びは住宅購入の大きな要素を占めるテーマです。住宅の予算を考える場合、今後の世帯収入の推移や家族構成、お子さんの進学計画などを元にしたライフプランを作ることから始めましょう。

ライフプランを作成することで支出の見込みがわかります。その上で想定している毎月の返済額や支払い終了時の年齢を組み込むことで、住宅関連の予算が家計に対して過大ではないか?ということのおおよその判断がつくと思われます。

その計画の中で住宅ローンを単独で契約することが難しそうであれば、収入合算という手段を考えることになるでしょう。夫婦共同で住宅ローンを組むことはメリットもありますが、離婚時のデメリットもあります。

あらためて夫婦で住宅ローンを組むことについて要点をまとめます。

いずれにしても、FPとしてはまずライフプランを作成して資金計画を考え、住宅に関する総予算を把握して進めることが重要であると考えます。その資金計画の中で夫婦共同の住宅ローンを利用する可能性が出てくれば、メリットとデメリットを慎重に考えた上で決めましょう。

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夫婦の住宅ローンについてのQ&A

Q.住宅ローン審査ではどんな項目が審査されるのですか?

A.金融機関によって細かい部分は異なりますが、一般的には年齢・収入・勤務先・勤続年数・家族構成・これまでの借り入れの履歴・返済事故などが発生していないかなどを審査されるようです。近年では携帯電話の割賦代金の支払い漏れが原因で審査が通らないことがあるようです。携帯電話は気軽に契約できますが要注意です。

Q.住宅ローン審査の申込みは一つの銀行だけですか?

A.申込みを複数の銀行に行っても問題ありません。近年はネット専業銀行だけではなく、銀行のインターネット支店も増えてきており、地銀で二つ・都市銀行(インターネット支店)に二つなどのケースも目立ちます。最終的には審査でOKになった銀行の中から一つだけ選択して最終申込みを行います。