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実体のないものも取引可能、NFT(ノンファンジブルトークン)とは?

経済とお金のはなし 中新 大地

実体のないものも取引可能、NFT(ノンファンジブルトークン)とは?

【画像出典元】「Cassette Bleue/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

もしも自分のTwitterのツイート(つぶやき)を売ることができたら・・・。
皆さんはどうしますか?そもそも「実体のないものを売ることができるわけがない」、そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、それを実現したのが、Twitter社のCEOジャック・ドーシー氏です。彼は自分のツイートを”NFT=デジタル資産“としてオークションに出品し、290万ドル(約3億1500万円)で売ることに成功しました。

さらに最近ではAIやバーチャルテクノロジーをてがけるワンセックが、NFTを用いて日本初のバーチャルスニーカー「エアスモーク1」の発売を発表しています。価格は5イーサリアム(仮想通貨の単位)で、日本円で約113万円に相当します。

バーチャルなファッションアイテムは、ユニークなコレクションとして自慢できるだけでなく、今後ゲームやSNS内のアバターなどに活用できる可能性もあります。


この「NFT」とは一体何なのでしょうか。
本記事ではその概要やこれからの展望について紹介します。

デジタルに資産価値を持たせられる!NFTとは

NFT
【画像出典元】「stock.adobe.com/elenabsl」

「NFT」は(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)の略で、「非代替性トークン」とも呼ばれるものです。ドーシー氏の最初のツイート『just setting up my twttr(2006年3月22日投稿)』も、このNFTの形をとって販売されました。このNFTはツイートに限らず楽曲やアートの分野にも用いられており、著名なアーティストが関わっているものや希少性の高いものは、高値で取引されています。

NFTを一言で表現すると、「偽造・改ざんができない、鑑定書付のデジタルデータ」です。この特性を持ったNFTのようなトークン(仮想通貨)には「ブロックチェーン」という技術が用いられています。

ブロックチェーンはその名前の通り、単一のコンピュータではなく複数のコンピュータで鎖のように結びついて管理されているため、偽造や改ざんができません。そのおかげで、NFTは、それを所持した人の履歴を遡ることが可能です。つまり、NFTの所有者は、自分が所有していることを対外的にアピールすることができます。

ドーシー氏がデジタル上を漂っているだけのツイートを販売できたのは、このNFT、もといブロックチェーン技術のおかげです。所有者であることを証明できない限り、こうした実体のないものを売ることは非常に難しいのです。

どんなものもNFTとして売ることができる時代へ

ドーシー氏のツイートの例のように、NFTはその対象を選びません。実体のないものにも、資産としての価値を持たせられるという点がNFTの注目すべき特徴です。
今後NFTは、ゲーム、音楽、スポーツ、アートなどへの活用が期待されています。

ゲームを例にとって考えてみましょう。
ゲーム内で動かすことのできるオリジナルのキャラクターを作ってNFTで販売したり、ゲーム内に存在するバーチャルな自分の土地の所有を証明したりといったことも可能になります。また、それをお互いに取引して利益を得たり、コレクションして楽しんだりといったことも可能になります。

音楽やアートの世界では、アーティストが大々的に発表した作品ですら、自分のものにできるようになるでしょう。現に伝説的ロックバンド「ローリングストーンズ」のボーカルであるミック・ジャガー氏は、自身の新曲の音声と30秒のループ動画を組み合わせた作品をNFTで販売。落札価格5万ドル(約540万円)を、コロナウイルスの影響を受けたライブハウスやコンサート会場を支援するために寄付することを表明しています。

NFTで私達の生活は変わる?これからの展望とは

成長
【画像出典元】「stock.adobe.com/takasu」

NFTがあれば、かつて売ることができないとされていたものに価値を持たせ、所有を証明できなかったものでも、自分に紐付いていることを示せるようになります。

これによって「NFT市場」や「NFTマーケットプレイス」と呼ばれるようなサービスが、急成長していくことが期待されています。例にあげたものはどれもかなり高額で希少性が高いものですが、今後は金額もジャンルも幅広いコンテンツが、NFTとして販売されるようになるかもしれません。

ドーシー氏のツイートのように、今まで売ることができないとされていたものを売れるようになるのですから、そこにかける人々の期待感と市場は大きく高まり、NFT市場はどんどん拡大しています。

その規模は2020年に3億3800万ドル(約367億円)にまで膨れ上がり、取引額は2019年比で299%も成長したとされています。(参考:The NFT Yearly Report 2020 is live!

走り出す!国内のNFTマーケットプレイス

日本国内のNFTマーケットプレイスにも、少しずつ動きが見えてきています。

仮想通貨取引所大手のコインチェックは、ゲームで利用できるNFTと、同社で取り扱っている13種類の仮想通貨を交換可能にする「Coincheck NFT(β版)」の提供を開始。そのほかの企業に先駆けて、国内のNFT市場を開拓しようとしています。

NFTとして商品を販売する側も購入する側も、しばらくは探り探りの状況が続くかもしれませんが、閾値を超える瞬間がやってくるのではないでしょうか。

あくまでも自己責任!慎重な品定めが求められるNFT

黒板にチョークで描いた成功と失敗の概念
【画像出典元】「stock.adobe.com/k_yu」

2020~2021年にかけて、NFTは急速な成長を遂げています。
メディアで伝えられる金額が大きいだけに人々の注目度も高まり、ブームに一役買っているといってよいでしょう。

特にコロナ禍の影響を受けて、作品の発表やファンとの交流の機会が限られているアーティストにとっては、新しい収入源となり得ます。また、金融商品を取引するのと同じように、NFTを取引する投資家が増えてくる可能性もあるでしょう。市場を急速に開拓するNFTは、働き方の選択肢も開拓していると言っても過言ではありません。

しかし、ブームの今だからこそ、NFTは慎重に品定めをする必要があります。
NFTで取引されるコンテンツはコレクション要素も強く、人によってはマーケットプレイス上で示された価格ほどの価値を感じないこともあるでしょう。

自分で所有したいがために購入するのであれば、その価格や価値に文句はないのかもしれません。ですが、購入後また別の誰かに販売するといったことを視野に入れているのであれば、そのNFTはあなたが購入したのと同程度、またはそれ以上の価値で販売できるとは限りません。簡単に手を出すことは控えた方がよいでしょう。慎重な判断が必要です。

※本記事はNFTの購入や販売、仮想通貨(暗号資産)への投資を推奨するものではありません。