ブームが続くテーマ型ファンドには注意が必要?仕組みと問題点を解説
監修・ライター
ファンドとは複数の投資家からお金を集め、そのお金を運用してリターン(利益)を分配する仕組みのことです。たとえば、「投資信託」もファンドの一種です。
そして、テーマ型ファンドとは、世の中で話題になっているテーマに着目し、そのテーマに関連した銘柄に投資するファンド。環境や資源、ITやバイオなど、さまざまなテーマに投資するファンドがあります。
この記事では、テーマ型ファンドの問題点や購入時の注意点について解説します。
テーマ型ファンドの販売が伸びている
金融庁が2021年6月30日に発表した「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(令和2年度)」によると、大手証券などの販売額上位5ファンドを集計すると、2020年度はテーマ型ファンドが68%を占めて最多でした。
2019年度は28%だったので、テーマ型ファンドの設定や販売が急増していることが分かります。とくに人気のあるテーマが、ESG(環境・社会・企業統治)です。ESG投資とは、企業の持続可能性や成長性をEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の点から分析・評価して投資先を決める手法。欧州を中心に広がり、日本でも機関投資家だけでなく個人投資家にも認知度が高まっています。環境問題や女性の活躍などのガバナンスに対する関心が高まっているからです。
QUICK資産研究所の調べでは、ESG関連ファンドは2020年に36本で、前年の19本からほぼ倍増。当初設定額の合計も5000億円を超え、過去最高を更新しました。
テーマ型ファンドはハイリスク・ハイリターン
テーマ型ファンドは、特定の銘柄に集中投資をするため、きちんとリスク管理をする必要があります。
通常、TOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンドの場合、東証1部に上場している約2000銘柄に分散投資するのと同じ効果があり、リスクが分散されています。一方でテーマ型ファンドは、ファンドによって異なりますが、数十~数百銘柄程度に絞って投資します。
投資銘柄数から見ても、テーマ型ファンドはハイリスク・ハイリターンのファンドと言えるでしょう。
銘柄を絞っているので大きなリターンが期待できるものの、投資信託の値段(基準価額)が大きく下がる恐れもあります。そして、いったん基準価額が大きく落ち込むと、回復に時間がかかる場合もあるので、注意が必要です。
テーマ型ファンドは割高な時期に買わないようにする
テーマ型ファンドは、そのテーマが世の中のニーズや関心と一致していれば話題になりやすく、証券会社などの金融機関も販売しやすいので、同じようなテーマ型ファンドが何本も設定される傾向にあります。投資先に環境や社会貢献を重視する傾向は、今回のESG投資が初めてではありません。1990年代には環境問題の高まりを受けて「エコファンドブーム」が起こり、2000年代になると「地球温暖化防止」をテーマにしたファンドの設定が相次ぎました。
ただ、そのテーマの関連株が割高のときにファンドに入っていないほかの株式を自分で選んで購入したり、相場が悪いときに現金比率を高めたりできないので注意が必要です。また、投資家の関心が高いテーマのファンドが募集される時には、すでに関連株が割高になっているという可能性もあります。
テーマ型ファンドは長期投資に向かない
テーマ型ファンドは、時流に乗れば大きなリターンを期待できるのが魅力です。ただ、特定の銘柄に集中投資しているので、リスクも高くなります。過去には、2000年のITバブル時代に多くのインターネット関連のテーマ型ファンドが設定されました。
モーニングスターの集計によると、1999年以降の3年間に設定されたインターネットをテーマにするファンド47本のうち、約9割の42本が運用を停止しています。ブームが過ぎると資金流出が続き、運用を続けられなくなったからです。
テーマ型ファンドは、あくまでも短期的な値上がり益を目的として投資するべきで、10年単位で長期投資するのには向いていません。
また、そのとき旬のテーマ型ファンドに次々と乗り換えるのもよくありません。通常、テーマ型ファンドは購入時手数料(3%程度)がかかるので、手数料によって資産が目減りしてしまうからです。
旬のテーマを見極めるのは難しく、初めて投資をする場合にはテーマ型ファンドはおすすめしません。まずは日経平均株価など指数に連動するインデックスファンドから始めるのが良いでしょう。ニュースなどで目にする機会も多いので値動きがわかりやすく、購入時や運用時の手数料も低い傾向にあるからです。資産運用の基本は、短期的な値上がり益を狙うのではなく、長期での運用を心掛けるようにしてください。