30代でFIREする方法は?そのためには資産いくら必要?
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今回の「FPに聞きたいお金のコト」は、30代ぐらいにセミリタイアしたいと思っているという20代前半の男性からのご相談です。FIREとは早期リタイアやセミリタイアを意味しますが、そもそも30代で実現可能なのか、そのための必要資金はいくらくらいかなど解説していきます。
20代男性Eさんの相談内容
現在ビル清掃で働いてる22歳男性です。 30代ぐらいにセミリタイアしたいと思っているのですが、可能でしょうか?また、いくら必要でしょうか。
20代~30代でのセミリタイア、最近よく聞くFIREの考え方です
Eさん、こんにちは。30代でのセミリタイアを目指しているとのことで、実現可能かどうかを考えていきましょう。詳細が不明な部分もありますので、一般論になる点はご容赦ください。
近年、早期にリタイアする考え方をFIRE(ファイア)と呼ぶようになりました。FIREは「Financial Independence, Retire Early」を略した言葉で、経済的自立と早期リタイアという意味を表します。この場合の経済的自立とは「働かなくても困らないようなまとまった資産を作る」というよりも、「資産運用を行い生活費分の収入を得る」というイメージが近いと思います。
株式投資や動画サイトなどインターネット関係でのビジネスや、株式投資・仮想通貨などで若くして金融資産を得た人たちが資産運用で生活費をまかない、仕事に縛られずに自分のやりたいことをやるという生き方をSNSなどで発表しています。主にリーマンショック以降の2010年代に欧米で提唱され、世界に広がった考え方です。
FIREは資金を切り崩しながら運用するのが重要
FIREを実現するには資産運用を行い、手元にある金融資産の寿命を延ばすことが重要ですが、この資産運用を行うときによくいわれるのが「4%ルール」です。
これはアメリカの大学で発表された、「投資元本をアメリカの株式と債券で運用し、投資元本の4%分を毎年取り崩ししていくことで資産寿命を大きく延ばすことができる」という理論です。また別の言い方では年間支出の25倍の金融資産を用意できればFIREが実現できるともいわれます。
FIREを実現するために重要な点は、運用しながら金融資産を取り崩すことです。ここでの問題点は必要と思われる金額を準備するのに時間を要することと、金融資産を運用することはリスクを伴うことでしょう。
参考までに毎月7万円を取り崩すと仮定した場合、投資元本の金額ごとに資産が0円になるまでの期間を表にしてみました。リターンの大きさの違いで資産がなくなるまでの期間が異なることがわかります。
〈投資元本を7万円/月で取り崩して0円になるまでの期間〉
*運用結果・期待リターンは平均年率4%と2%、リスクはそれぞれ年率10%と設定し筆者作成
*取引コスト、税金は考慮していません
Eさんの必要資金はいくら?どんな資金計画が必要?
さてセミリタイアするにはどれぐらいのお金が必要なのでしょうか?“セミ”ということなので、全く働かないわけではないと思いますが、もし働くとすればどれぐらい働く必要があるのでしょうか?
ここで大事なことは今後の資金計画です。今後の収入と支出を時系列にした一覧表を作成することで金融資産の増減を含め、お金の流れがある程度見えてくるのではないでしょうか。
資金計画の考え方
①セミリタイア後の生活費など必要経費はいくらかかるか?(毎月・平均寿命まで)
②想定する支出に対して収入の不足分はどれぐらいあるのか?
③必要な金額がわかれば金融資産の目処が立つ
相談時にEさんからいただいた、一人暮らしの想定支出部分を見てみましょう。
・家賃3万円/月
・食費3万円/月
・携帯6000円/月
・趣味1万円/月
一般論になりますが、上記に加えて家賃は+1~2万円、食費+1~2万円、水道光熱費1万円、雑費1万円は必要でしょう。なお雑費は被服費や身の回りの消耗品、日常生活に必要とされるさまざまな出費を指します。
また仮に一人暮らし・セミリタイアして企業に属さないということになれば、国民健康保険・国民年金・確定申告をして所得税・住民税などを自分で支払う必要があります。このことを考えると、Eさんの支出予想は残念ながら少し楽観的な印象を受けます。
次にEさんの資産の内訳を見てみましょう。
- 現金(普通預金) 263万円
- 株式 6万円
- 仮想通貨 14万円
現金の他に仮想通貨や株式がありますが、個人的には下記のようなポートフォリオに変更すると良いと考えます。
- 現金(普通預金) 100万円
- 投資信託 163万円
- 株式 6万円
- 仮想通貨 14万円
一人暮らしを開始するまでは、現金100万円を緊急予備資金として残し、今後は余裕資金を米国株式メインの投資信託へ積み立て投資を行いましょう。なお投資信託での投資はセミリタイアしても継続が必要です。
なお、仮想通貨は値段の上がり下がりが激しく、投資ではなく投機・ギャンブルの要素が高いため金融資産を増やす手段としては考えない方が良いでしょう。また株式も含め、信用取引に手を出すことは絶対にやめましょう。(信用取引:自分の手持ち資金以上の売買ができる取引方法。損失が出た場合、追い証という損失金を払う必要がある)
Eさんはセミリタイアできるのか?
筆者はセミリタイアして何をしたいかが重要ではないかと思います。Eさんのセミリタイアへのプランで考えていただきたい点をまとめると
- セミリタイア後の生活スタイルを考える
- 何才でセミリタイアするのかを予想する
- 今後の収入と支出を時系列にして見える化する
- 実家にいる間は今の貯蓄ペースを守る
- 投資信託は米国株式をメインで積み立てる
セミリタイアそのものが目標なのか、もしくはセミリタイアしてやりたいことがあるのかによって必要になる資金の金額が変わってきます。決して不可能ではないと思いますが、まずはセミリタイア後の生活をイメージして、必要な費用を見積もりしましょう。