金利が高い方がお得!?住宅ローン減税改正後の選び方とは
目次
30代男性Wさんからの相談内容
最近、金融機関に住宅ローンの見積もり依頼をしたのですが、控除額が残債の1%から、年間支払利息額に変更されると聞きました。これでは、金利の高い金融機関を選んだ方が、手厚さなども考えると得するのでは?と思いましたが、実際はどちらを選ぶべきでしょうか。
上手に利用したい住宅ローン控除
住宅ローン控除はとても効果の大きい税額控除のため、住宅を購入する際は上手に付き合っていきたいものです。一方で制度の改正や減税の延長など、その時々で細かくルールが変わり、形を変えてきました。今後も制度変更が見込まれますので、Wさんは「どうすべきか?」と悩まれているのだと思います。
現状の住宅ローン控除は?今後は?
現在の住宅ローン控除について確認しましょう。住宅を購入して住み始めた場合、原則10年間、年末時支払残高の1%が控除の対象となります。(消費税10%で住宅を購入し、2019年10月~2022年12月末日までに入居した場合は控除期間が13年という延長措置があります)
つまり年末時点で3000万円の残高があれば、その1%、30万円が所得税・住民税から差し引かれるようになります。現在この「残高の1%」について見直すべきでは?という意見があるのです。理由は金利の低さです。
超低金利が長引いていることもあり、現在は変動金利で0.5%程度の住宅ローンも少なくありません。単純計算で3000万円の0.5%は15万円です。ローンで支払う年間の金利が約15万円なのに対し、残高の1%、約30万円が税額控除となれば「ローンを借りたことで得をする」という状況になってしまうのです。
※税額・支払利息額は概算です。実際の額とはやや異なります。
住宅ローン控除は本来、住宅購入で大きなローンを抱えた家計の負担を軽減する目的の制度であり、「得をする」というのはやや趣旨に反しています。しかしこの「得をする」状況があるため、控除額を増やそうとして頭金を控え、予定より多く住宅ローンを借りる人や、残高を減らさないように繰り上げ返済を行わないケースがあります。
しかし、このことでかえって金融資産に対して住宅ローンの割合が高くなり、資産と債務のバランスが悪化している家計も増えているようです。そこで、控除額を残高の1%ではなく、「年間支払利息額」にすべきでは?という税制改正案が浮上しているのです。
先ほどの例でいうと、金利0.5%、3000万円のローン残高ならば、1%である30万円を控除するのではなく、年間の支払利息額15万円(3000万円×0.5%)をその年のローン控除の上限にするという案です。執筆時点で2022年の税制大綱が発表されていないため、実際に上限が設けられるかは未定です。
金利の高いローンの方が、控除の手厚さを考えると得するのでは?
こういった制度改正案の流れもあり、Wさんは「金利の高いローン」を選んだ方がローン控除を効率よく受けられるとお考えのようです。ただ、「金利が増えると支払利息額が増える」、ということを忘れないでください。
今後の改正で支払利息額がローン控除の上限になったとしても、あくまで金利の低いローンを選ぶ発想が大切です。「支払総額を抑えながら、受けられる範囲で減税措置の恩恵にあずかる」というスタンスで考えてください。
現在の改正案は、あくまで「得する」といういびつな部分を解消しようという動きです。また、住宅ローン控除は購入年や居住年によって制度の内容が変わることも多くあります。ぜひ今後住宅を購入予定の方は、金利の低さ、返済額などまずは住宅ローンそのものにしっかりと目を向け、その次の位置づけとして上手に住宅ローン控除と付き合ってください。
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