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「えっ住宅ローン控除(減税)の金額が減る?」2022年見直しの条件やポイント

かりる 内山 貴博

「えっ住宅ローン控除(減税)の金額が減る?」2022年見直しの条件やポイント

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今回のテーマは住宅ローン控除です。多くの人にとって人生で最も大きな買い物の1つとなる住宅購入と向き合う際に、住宅ローン控除はとてもうれしい減税措置となります。ぜひ制度概要を理解し、活用してください。また今後の動向についてもまとめていますので参考にしてください。

現在の住宅ローン減税制度についておさらい

住宅ローン控除は住宅ローンの残高に応じて所得税・住民税が減税される税額控除です。原則減税期間は10年間ですが、消費税率が2019年10月に8%から10%へアップされたこともあり、増税の影響を受ける購入者への配慮から、原則、2022年(令和4年)末までに入居した場合、10年間+3年間=13年間の減税が適用されます。

既存住宅(中古物件)の場合でも新築住宅同様、床面積の基準を満たし、かつ、耐火建築物であれば25年以内、耐火建築物以外の場合、20年以内に建築されているといった所定の基準を満たしていれば、住宅ローン控除を受けることができます。

住宅ローン控除を適用するための主な要件は以下の通りです。

まず契約の期限があるため注意をしてください。そして、10年以上の住宅ローンが条件となりますが、一般的に30年前後の住宅ローンを組む人が多いため、多くの人がクリアできると思います。

また、所得制限がありますが、こちらは毎年判定されます。一度でも3000万円を超えると住宅ローン控除が使えないというわけではなく、3000万円を超えた年のみ使えなくなります。ただし、収入ベースではなく、事業主の場合は必要経費、会社員の場合は給与所得控除などを控除した後の所得で判断されるため、こちらも多くの場合、範囲内に収まると思います。

床面積は登記簿上の面積で、内法(うちのり)面積となります。マンションの場合、注意が必要ですが、マンションのパンフレットなどでは内法面積ではなく、壁芯面積が用いられるのが一般的です。壁芯とは隣室との境界となる壁の厚みを含めたものです。一方、内法は含めないため、壁芯よりやや面積は小さくなります。1ルームマンションなどの場合、50㎡前後ということも考えられますので、事前に確認をしてください。

2021年より床面積40㎡以上50㎡未満も対象に

なお令和3年度の税制改正により、床面積が40㎡以上50㎡未満の物件も住宅ローン控除の対象となりました。ただし、その場合の所得基準は3000万円ではなく1000万円以下となります。

具体的な減税効果は?

住宅ローン減税
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減税期間13年間の場合、当初10年間と残りの3年間で異なるため、順に紹介します。

<当初10年間>
ローンの年間時点の残高が4000万円の場合、4000万円×1%=40万円が所得税から税額控除となります。40万円分所得税が軽減されるのです。所得税で控除できない場合は残額の一定額が翌年度の住民税額から控除されます。毎年末の残高に応じて、10年間控除を受けることができます。

<11年目~13年目>
以下の2つを比較して小さい方が税額控除額となります。

・年末時点の残高×1%
・住宅取得等の対価または費用額(税抜)×2%÷3
 (土地を除く建物購入額。一般住宅は4000万円、認定住宅は5000万円が上限)

つまり8%から10%への増税分の影響で購入費が増加した分を3年間に均一に分け、税額控除とするという考え方です。土地は消費税非課税のため、この場合は建物の購入額で計算します。

<住宅(建物)購入額が3000万円の場合>
3000万円×2%÷3=20万円

よって、11年目以降に住宅ローン残高が2000万円超であっても、残り3年間各年のローン控除額は20万円となります。

2022年にローン控除率が見直される可能性があり

現在、変動金利をはじめ1%を下回る住宅ローン商品が多く出回っています。例えば、3000万円の住宅ローンを期間30年、金利0.5%の元利均等方式で借りた場合、年間(12回分)の金利支払額はおよそ14万8000円となります。

一方、12回支払い後の残高はまだ2900万円以上あるため、初年度の住宅ローン控除額は約29万円となります。支払った利息以上に減税効果があることが分かります。

そもそも一定の金利を支払いながら住宅を購入した人への税負担軽減という位置づけである住宅ローン控除ですが、現在はむしろ、金利負担よりも税金還付の方が多いという状況になっているのです。

会計検査院が2019年11月に行った報告によりますと、住宅ローン控除適用者のうち78.1%が上記のように支払利息よりも税額控除の方が大きい状況にあるということが分かりました。そこで、ローン控除について見直すという気運が高まっているのです。

住宅ローン控除はいつから見直される?

令和3年度の税制改正では「1%を上限に支払利息額を考慮して控除するなど、 控除額や控除率の在り方を令和 4 年度(2022 年度) 税制改正において見直すものとする」とし、具体的な改正は行われず、先送りされることになりました。

現時点では具体的なことは決まっていませんが、令和4年度の税制改正で見直されるのでは?という見方もあります。その内容は「年末の残高×1%とその年に支払った利息総額の少ない方に改正される」というのが一つの案のようです。

よって、先ほどの例ではローン残高の1%に比べ、年間での支払利息14万8000円の方が小さいため、この額がその年の住宅ローン控除となるのです。

住宅ローン控除が見直されても、慌てず冷静に

慌てる人
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住宅ローン控除の見直しが令和4年以降の購入からなのか、またはもう1~2年先になるのか。現段階では分かりませんが、仮に見直しが行われたとしても慌てて住宅を購入するということはやめたほうがよいです。

確かに現状のような低金利でなおかつ毎年年末ローン残高の1%分の減税が受けられるのは魅力的です。ただし、見直し後も「1%を下回る低金利」が条件になります。言い換えれば、1%を超えるような金利状況または住宅ローン商品については従前どおりと捉えることができます。

仮に見直し後の制度に該当しても、それは「超低金利で住宅ローンを組むことができている」という証でもあります。「新しいローン控除制度が導入される前に」と急いで住宅購入をするのはあまりおすすめしません。「1%と金利」という小さな差にこだわるあまり、何か大きな判断ミスをしかねません。冷静に対応してください。

また、現在住宅ローン控除を適用している人はどうなるのでしょうか?こちらも具体的な案が出ていないため推測の範囲内ですが、おそらくさかのぼって新たな住宅ローン控除が適用されることはないと思われます。

住宅ローン控除は今までローンの上限や控除期間、そして控除率など毎年見直しが行われてきましたが、対象者は“その時点”の住宅ローン控除で毎年控除を受けています。よって、今回の見直しも含め、現在住宅ローン控除を適用している人への影響はないものと思われます。

新しいグリーン住宅ポイント制度とは

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により経済が大きく冷え込みました。その回復を図るべく、住宅の取得やリフォームなどの需要を喚起しながら、また環境にも優しい住環境を整える意味合いも込めて、令和2年度第三次補正予算として「グリーン住宅ポイント制度」が創設されました。従来も「エコポイント」制度など行われており、その一連の流れでの位置づけとなります。

例えば新築住宅の場合は30万~100万ポイントがもらえます。また既存住宅を購入する場合は売買金額が100万円以上で、空き家バンクに登録されている物件を購入した場合や災害リスクの高い地域から移転するために既存住宅を購入するといった一定の条件を満たした場合、15万~45万ポイントをもらえます。現在社会問題となっている空き家を減らし、また、災害リスクも減らしたい。そういった後押しも担っているのです。

ポイントの利用方法は?

グリーン住宅ポイントの利用方法は大きく2つ。1つはポイントで追加工事等を行うことができます。もう1つは商品などへの交換です。気になる交換商品は家具や家電はもちろん、コロナ対策を意識した感染予防用品やテレワークのための事務用品など幅広いものから選ぶことができます。以下のサイトで商品を確認できます。素敵な家具などを見ていると、新しい住環境への期待も膨らみますね。(グリーン住宅ポイント制度は申請締め切り日は2021年10月31日までです)
https://goods.greenpt.mlit.go.jp/apl/public/viewCategoryTop

まとめ

「賃貸VS持ち家」はライフプラン上、大きなテーマの1つです。今までは「夢のマイホーム」という位置づけで住宅購入を憧れの1つに掲げる人達が多かった印象があります。一方、最近では「持たない」、「シェアする」という価値観が若い人達を中心に浸透し、賃貸派の人達も増えてきました。

また、コロナ禍に直面し、都心部から郊外へ移り住む人達も増えたことから「住宅を持ち一か所に留まることはリスク」という意見に触れる機会も増えてきました。ただし、世の中のトレンドや人の意見は参考程度にし、それぞれご自身の価値観を大切にすることが重要だと思います。

そして住宅を購入する際に多くの人が付き合うことになるのが住宅ローンであり、住宅ローン控除でもあります。これから家を買う予定の方は今後の住宅ローン控除の見直しについて税制改正などの動向を注視しておいてください。

なお、中古物件を個人間で取引する場合などは消費税が非課税となるため、住宅ローン控除など今回お伝えした内容と大きく異なります。その点もご注意ください。

住宅ローン控除についてのQ&A

Q.毎年住宅ローン残高はどのように確認すればよいでしょうか?

A.年末にかけて金融機関から残高の案内がハガキで届きます。これを「残高証明書」と言います。確定申告の際に、残高証明書に年末時点の残高が記載されていますので、その額を基に確定申告を行ってください。会社員の人は残高証明書と税務署から届く「控除証明書」を合わせて年末調整時に会社に提出してください。

Q.マンションを売却し、別のマンションを購入することになりました。新たに購入するマンションでも住宅ローン控除を使うことができますか?

A.新たなマンションが面積等、住宅ローン控除の要件を満たせば住宅ローン控除の適用を受けることは可能です。ただし、住んでいたマンションを売却した際に譲渡益が生じると「3000万円特別控除」など売却益に対する課税を軽減する制度がありますが、これらとの併用は不可となっています。売却の際の税負担と、購入後の住宅ローン控除での効果を比較して選ぶことになります。