葬儀費用だけじゃない?今から知っておきたい親の死後に生じるお金
監修・ライター
「親が亡くなった時の話なんて、まだまだ先のこと」
「亡くなってからいろいろ考えればいいよね」
親が元気で若い時ほど、このように考えている人も多いかもしれません。
しかし、人はいつ何が起こるかわからないもの。そのため、予期せぬタイミングで親が亡くなったときに「もっと早く話をしておけばよかった」などと後悔しないよう、今から少しずつ知識を身につけておくことが大切です。
今回の記事では親の死後に生じるお金と、相続税についてまとめてみました。
親の死後にかかるお金とは
親が亡くなってから生じるお金として、以下3つが挙げられます。
- 葬儀費用
- お墓・仏壇費用
- 法要の費用
それぞれの項目について、詳しく解説します。
葬儀費用
鎌倉新書株式会社が運営するサイト「いい葬儀」が実施した「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、葬儀費用の平均価格は110.7万円でした。
また、この費用の内訳は以下の通りです。
- 基本料金:斎場利用料、火葬場利用料、祭壇、棺、遺影、搬送費など、葬儀を行うための一式(固定費)
- 飲食費:通夜にかかる一連の費用、告別料理などの飲食法要の費用
- 返礼品:香典に対するお礼にかかった費用
上記のグラフからもわかるように2022年の平均総額はコロナ禍の影響もあり、過去最少の数値となっています。そのため、基本的には180万円前後かかるものだと考えておく方が安心でしょう。
お墓・仏壇費用
お墓の費用相場は総額で100万円から350万円ほどです 。ただし、お墓を建てる地域や面積、使用する石材の種類によっても異なる点に注意しましょう。お墓を建てるエリアにもよりますが、一般的に墓石を外国産のものにすることで費用を抑えられます。
そして、意外と忘れがちなのが「管理費」です。霊園にお墓がある限りお墓の管理費を支払い続けなければなりません。
管理費は霊園や墓地の種類によって価格が異なりますが、年間で5000円から1万円程度 のところが多く見受けられます。
また、屋外にある墓石は雨風にさらされるため、経年と共に徐々に劣化していきます。お墓のひび割れや欠け、傾きなどが見つかった際は専門業者にメンテナンスを依頼することもあるでしょう。
このように、お墓は建てたらそれで終わりというわけではなく、所有する限りなんらかの費用を支払い続けなければなりません。
法要の費用
法要の費用相場は、1回あたり総額6万円から15万円ほどです。特に、四十九日の法要や納骨法要などを一緒に行う場合は10万円を超えるケースがほとんどでしょう。
各法要で、お布施やお車代でかかる金額の相場は以下の通りになります。
※上記費用には食事代は含んでいません。
法要は亡くなった故人の冥福を祈り、供養をおこなう仏教の儀式です。故人が極楽浄土を往来するために行われる儀式であり、僧侶のお経を通して遺族が故人との思い出を懐かしむ大切な時間でもあります。
四十九日や納骨を終えた後でも、年忌法要として「一回忌」をはじめ、「三回忌」「七回忌」と「三十三回忌」まで行うのが一般的であることを覚えておきましょう。
サブスクや口座の整理も必要
親が亡くなると目先のお金ばかり気にしてしまいがちですが、故人が契約していた継続課金サービスや金融口座の整理も必要です。
サブスクは解約しない限り課金され続ける恐れがあるほか、金融口座も気づかないまま放置してしまうと損をする恐れがあります。(投資中の証券口座、生命保険金の放置など)
また、契約者が亡くなってしまっている以上、どんなサービスを契約していたのか特定するのが困難になってしまう可能性があります。そのため、親がまだ元気なうちに何らかの形で契約しているサービスの一覧と、そのパスワードのメモを残しておいてもらうことをおすすめします。
相続税の仕組みと目安金額
親が亡くなると相続が生じ、親が所有していた財産を配偶者や子が引き継ぐことになります。その財産が一定の金額を超えると相続税が生じますが、どの程度の額が税金として徴収されるのかわからない方も多いですよね。
そこで、ここでは相続税の仕組みと目安金額について解説します。
そもそも相続税とは
相続税とは相続によって財産を取得した人にかかる税金のことです。亡くなった人の財産から非課税となる財産や債務、葬儀費用などを差し引いた金額が相続税の課税対象となります。
ただし、相続税には控除枠があるため、控除枠内であれば相続税が課税されることはありません。
【相続税の基礎控除額】
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
また、控除額の算定に用いるのは「相続人」ではなく「法定相続人」であることにも注意が必要です。
法定相続人になる人は被相続人の配偶者と被相続人の血族であり、血族相続人には相続順位が定められています。
常に相続人となる人:配偶者(正式な婚姻関係がある人)
第一順位:子(養子、非嫡出子、胎児を含む)
第二順位:直系尊属(子がいない場合は父母、父母がいない場合は祖父母)
第三順位:兄弟姉妹(子も父母などもいない場合)
※第一順位から第三順位の相続人は、上位の人が相続した場合において下位の人は相続できない。相続人が死亡している場合にはその人の子が相続人となる。
よって、仮に法定相続人が2人(配偶者と子ども)である場合、基礎控除額は以下のように求められます。
3000万円+(600万円×2人)=4200万円
金額だけ見ると「4000万円を超えるお金があるわけない」と思う方もいるかもしれません。しかし、都心に実家があったり、一人っ子である場合、遺産総額が基礎控除額を大きく上回るケースも珍しくないのです。
相続税の目安金額
相続税の概要について理解できたところで、相続税の目安金額について解説します。
ここでは資産総額から求めた相続税額の目安を表にまとめてみました。
【相続税額の目安:配偶者がいる場合】
※配偶者の税額軽減は配偶者が法定相続分(1/2)どおり取得し、税額軽減を適用したものとして算出。
相続税はそれ相応の金額になるだけでなく、親が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に支払いの手続きを済ませなければなりません。そのため、親が元気なうちに先のことを少しずつ話し合っておくことが大切です。
生前からできる相続税対策
相続税を安く抑えるためには、相続税対策が欠かせません。相続税対策にはいくつかの方法がありますが、ここでは2つの方法について取り上げてみました。
生前贈与は相続税対策の王道
一つ目の対策として、「生前贈与」があります。これは贈与税の非課税制度や相続時精算課税制度を利用し、相続が発生する前に財産を贈与する仕組みのことです。
生前贈与をする人を「贈与者」、受ける人を「受贈者」と呼び、受贈者は生前贈与を受ける前に以下2つの選択肢からどちらかひとつを選択します。
- 暦年課税:1人あたり年間110万円の控除が受けられる(毎年適用可能)
- 相続時精算課税:60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫に贈与する場合に選択可能(受け取った財産の合計額が2500万円を超えるまで相続税がかからない)
このうち、暦年課税は長期に渡って何人かの人に贈与をしたいと考えている場合、高い効果を得られる方法といえます。どちらにもメリット・デメリットがあるので、専門家の意見も聞きつつ判断を下すようにしましょう。
片方の親が亡くなったときは「二次相続」を視野に入れる
片方の親が亡くなった時には「二次相続」まで視野に入れて、家族間で相談をしておくとよいでしょう。
上の図のように、両親のどちらか一方が亡くなった際(今回は父)に「一次相続」が行われ、配偶者である母へ残された資産が相続されます。
やがて父の次に母が亡くなり、子などの残された遺族へと相続されるのが「二次相続」です。
二次相続時には仲裁役となる親が既に他界していないことから、子ども同士で感情的な言い争いに発展してしまい、最悪の場合には絶縁となるケースも少なくありません。
また、二次相続の際には相続人が一人減り、相続税の基礎控除額も減ってしまいます。
そのため、一次相続時から子どもにも相続するよう検討しておけば、納税額の合計が下げられるだけでなく、無用な子ども同士のトラブルも防げるでしょう。
ただし、二次相続では配偶者控除が使えない点に注意が必要です。配偶者控除とは配偶者が相続した財産が1億6000万円と配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額まで相続税が課税されない制度を指します。
相続財産の金額によっては二次相続を選択することで非常に高額な相続税が発生するため、前もって一次相続と二次相続をした場合における相続税額について忘れずに確認しておきましょう。
まとめ
親が元気なうちはまだまだ大丈夫、と考えてしまいがちな相続の話。
しかし、実際には生前の話し合いが十分になされなかったために親族間で大きなトラブルに発展することも少なくありません。
そこで親が元気なうちから少しずつ先のことを話し合っておくことはもちろん、お互いにきちんと話し合いができる関係性を構築しておくことが大切です。
また、税金や相続といった話はなにかと複雑で素人では対処しきれないことも多いため、困ったことがあれば都度専門家を頼ることをおすすめします。