親名義の実家をリフォームするなら相続前か相続後どちらが節税になる?
Wallet+ユーザー様からいただいた「FPに聞きたいお金のこと」に、白浜がお答えします。今回は、親名義の実家をリフォームして住む場合の税金の取り扱いについての相談です。
30代女性Yさんからの相談
夫と2人暮らしで、もうすぐ子供が産まれます。2人とも30代の会社員で年収は400万程度です。結婚を機に私の実家である築45年の自宅に核家族で住むことにしました。しかし、子どもを育てるには古く、家のリフォームを考えています。親名義の実家をリフォームすると贈与税がかかると聞いたのですが、リフォーム前に相続するのと、リフォームして親が亡くなってから相続するのでは、どちらがお互いにとって、また税金面でもいいでしょうか?
費用をYさんが負担するか、貸すかで税金の取り扱いが異なる
Yさんのご実家をリフォームして、まもなく誕生するお子様と3人で生活を始めるということですね。確かに、税金の取り扱いを知っておくことは大切です。所有者である親御さんの思いや、Yさんのご希望、資産状況などによっても選択が異なると思いますが、まずは下記を参考に検討いただければと思います。
Yさんがおっしゃる通り、リフォーム費用をYさんが負担すると、親御さんにリフォーム資金を贈与したことになり、贈与の非課税枠となる110万円/年を超えた分に贈与税がかかります。
贈与税がかからないようにしたい場合は、リフォームする分だけ、家の所有権の一部をYさんに変更するという方法もあります。しかし、所有権の移転登記には費用がかかりますし、大規模なリフォームでなければ現実的ではありません。
他には、Yさんがリフォーム資金を親御さんに貸してリフォームをするという方法もあります。そうすると贈与税や所有権の移転は関係しません。
「相続時精算課税制度」を活用する方法も
Yさんは他の選択肢として、家の贈与を受けてYさん名義にした後にリフォームをすることも検討されているようですね。その場合も当然に贈与税の対象になります。相続税より贈与税の方が税率は高いので悩ましい所です。もしそうされるのでしたら、「相続時精算課税制度」という2500万円まで非課税で贈与できる特例を活用する方法があります。これは親御さんが60歳以上の場合に対象となります。
文字通りこの制度は、「相続時」に、生前贈与分の資産を「精算」し、他の財産と合わせて「課税」するという制度です。家の評価が2500万円に収まるのでしたら、非課税でYさん名義にできます。仮に2500万円超となるようでしたら、超えた部分に対し、ひとまず20%の贈与税を納税することになります。
ポイントは「ひとまず」納税するという部分です。将来相続する時に、納めるべき相続税から先ほどのひとまず支払った贈与税を差し引き、残額を納めます。また相続税がかからない場合は、先に納めた税金は還付されるので安心してください。
なお、相続時精算課税制度を一度利用すると、その後は親御さんからの110万円の暦年贈与が使えなくなります。ここでは、大まかな説明にとどまりますので、利用時は詳細を確認してください。
相続税について
日本で相続税がかかるケースは全体の8%程度ですので、多くの方には関係しませんが、Yさんの場合はどうか確認しておきましょう。
相続税の計算では「3000万円+600万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。仮に法定相続人がYさんお一人でしたら、非課税枠は3600万円となり、この範囲内の財産を相続する場合なら相続税はかかりません。
財産額は、預貯金など分かりやすいものは良いですが、不動産は少し複雑です。売買価格ではなく相続税を計算するための評価方法となります。もし相続税がかかる場合、リフォーム費用を親御さんが負担することで、資産を減らせるため相続対策にもなります。
まとめ
税金の負担軽減だけではなく、Yさんや親御さんの気持ちが何より大切です。どうしたいか、されたいかということを第一に、納得できる選択をされてください。その他の状況により、別の名案があるかもしれません。気になるようでしたら、身近なFPや税理士など信頼できる専門家に相談することをお勧めします。