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話題の「デジタル遺産」相続時、遺族が困らないように準備すべきこと

そなえる 中村 賢司

話題の「デジタル遺産」相続時、遺族が困らないように準備すべきこと

【画像出典元】「stock.adobe.com/Анна Тощева」

「デジタル遺産」という言葉をご存知でしょうか。デジタル遺産とは、ネット銀行の口座や、電子マネーのチャージ残額、SNSアカウントなど、故人がデジタル形式で保管していた財産のことです。

万一自分が死んだとき、残された家族があなたの遺産を相続しますが、相続人である家族はあなたの財産についてどのように調べるでしょうか。

銀行通帳が残されていれば、すぐに相続の手続きをすることができます。また、証券会社から郵送で届く取引明細などがあれば、こちらもあなたの口座にすぐ気付くことができます。

しかし、ネット銀行やネット証券などWEB上にあるデジタル資産や、SNSの写真やクラウドサービスに残された文章などのデジタル遺品については、調べることが困難です。

そこで今回は、迷子になりやすいデジタル遺産の種類や、相続時にトラブルになりやすい例、そうならないための対処や整理の方法について解説します。

デジタル遺産には「デジタル資産」と「デジタル遺品」がある

まずはデジタル遺産について、どのようなものがあるのか確認しておきましょう。

上記のようにデジタル遺産は、金融資産や決済手段などの「デジタル資産」と、SNSやクラウドサービスなどの「デジタル遺品」に分けられます。

いずれもデジタル遺産は、パソコンやスマホを利用しているサービスのことで、ログインIDやパスワードで管理されているものを指します。

これらのサービスを利用していることを遺書に残すか、予め家族に伝えておかないと、あなたのデジタル資産やデジタル遺品は誰にも気づかれることなく、放置されてしまいます。

デジタル遺産にまつわるトラブルにはどんなものがあるか

スマホのログイン画面
【画像出典元】「stock.adobe.com/Wirestock Creators」

 ではこのようなデジタル遺産について、放置されたままだとどのようなトラブルがあるのかみていきましょう。

まずはネット銀行やネット証券などの金融資産について。これは口座があることを家族に伝えておかないと、その存在が知られることなく永遠に放置されてしまいます。口座の存在さえ知らせておけば、ログインIDやパスワードまで分からなくても相続人がそれぞれ金融機関に問い合わせて、相続手続きを行うことができます。

特に注意が必要なのはFXの口座です。FXはレバレッジ取引といって元本以上の資金を運用する取引なので、為替が大きく動いた場合、元本以上の損失が出る可能性もあります。そのような場合、この損失が借金となり遺族がその借金を負わなければいけません。

続いて最近利用している人が多いスマホ決済のPayPayやSuicaです。僅かな金額かもしれませんが、スマホにしか情報が無いため、その存在に気付かずスマホを初期化すると各サービスへの問い合わせが難しくなるでしょう。

SNSについても、亡くなった人のアカウントがそのまま放置されているケースをたまに見かけます。このSNSも遺族がどのサービスを利用していたか調べてアカウントを削除していくのはとても大変です。Facebookは、追悼アカウント管理人を設定できるので、万一の時は、その管理人が自分と繋がっている人に亡くなったことを知らせることも可能です。

遺族がデジタル遺産で直ぐに対応しておかないといけないのが、月額課金サービス(サブスクリプション)の解約です。動画配信やクラウドサービスなど利用料を支払って使っているサービスは、その存在に遺族が気付かず本人が亡くなった後も数カ月サブスク料金が引き落とされてしまうケースもあるので、注意しましょう。

相続時のトラブルにならないためにやっておきたいこと

終活
【画像出典元】「stock.adobe.com/takasu」

ではどうすればデジタル遺産のトラブルが防げるのか。これについては、デジタル遺産の情報を整理して目録を作っておくことが一番の解決方法です。

エンディングノートのように紙に残す方法が一番分かりやすいでしょう。財産目録を作成して、それぞれのログインIDやパスワードを書き留めておくことで、相続人はその存在に直ぐ気付くことができ対応しやすくなります。併せて、口頭でも資産状況を伝えておくと家族は安心です。

その他にもエクセルなどのシートに一覧表を作り、家族に知らせておく方法も良いでしょう。エンディングノートのように紙で管理すると、パスワードを変更したり資産状況が変わったりする度に書き直さないといけませんが、パソコンで作成しておくことで容易に更新でき、自分でも管理しやすくなります。

ちなみに著者も財産目録をエクセルシートで管理しており、自分に万一のことがあれば、このファイルを見るようにと家族に伝えています。この時注意が必要なのは、そのファイルをクラウドサービスなどのオンライン上で保存せず、パソコン内のオフラインに保存しパスワードをかけておくことです。

その他にもパスワード管理ソフトで管理するという方法もあります。このパスワード管理ソフトには有料サービスと無料サービスがあり、その使い勝手は様々です。情報漏洩の危険性もあるので、自分が信頼できる会社のサービスを選ぶようにしましょう。

ここまで対策しておくのが面倒という方には、全てのサービスを、スマホアプリで利用することをおすすめします。ネット銀行やネット証券、仮想通貨取引所やFX口座を全てスマホ内のアプリで管理しておくことで、相続人はあなたのスマホをみれば、何のアカウントを持っているのか一目瞭然です。

スマホで一元管理するメリットは、SNSアカウントの存在なども直ぐに気付いてもらえることです。スマホでアクセスできるようにしておけば、追悼アカウントなど作らなくても各サービスに問い合わせて対応することができます。

まとめ

今回紹介したデジタル遺産は、20年前にはほとんど無かったものです。遺産といえば不動産や金融機関に預けている資産が多くを占めていましたが、時代と共にさまざまなオンラインサービスが増え、このようなデジタル遺産という言葉も生まれました。

自分が死んだときのことは考えたくないことですが、いつ何があるか分かりません。残された家族のためにも事前準備をし、必ず何かにまとめておくことが大切です。また、最近ではパソコンやスマホを活用する高齢者も増えてきました。自分の親がデジタル遺産を遺して亡くなるかもしれない、という可能性を考え、両親にもデジタル遺産について話す機会を作り、家族で共有しておくことをおすすめします。