お金

給与のデジタル払いはいつから?社員のメリットやデメリットは

そなえる 中村 賢司

給与のデジタル払いはいつから?社員のメリットやデメリットは

【画像出典元】「A. Solano/Shutterstock.com」

厚生労働省は、給与をデジタルマネーで受け取れるように労働基準法の改正を行い、2023年4月からの施行が決定しました。

これにより企業側がデジタル払いへの体制を整え、労働者側との同意がある場合などは資金移動業者への振り込みが可能となります。

日々の買い物で使っているスマートフォンの決済アプリや電子マネーに、給与を直接振り込んでもらえるようになると便利になりますね。この給与デジタル払いがいよいよ解禁となるのです。

そこで今回は給与のデジタル払いについて、現在の状況や利用する際のイメージ、デジタル払いのメリットやデメリットについて解説します。

給与のデジタル払いについて背景と政府の動き

給与デジタル払いの背景には、外国に後れを取っているキャッシュレスの普及促進と、銀行口座を持てない外国人労働者の人材確保という狙いがあります。 

労働基準法では、給与は通貨(現金)での支払いが原則と定められています。1975年からは銀行口座への振り込みが、1998年からは証券口座への振り込みも認められるようになりました。

今回この法律が25年ぶりに改正され、給与の振込先にデジタルマネーを扱う資金移動業者の口座が加えられたのです。

しかし資金移動業者の倒産リスクなどに備え、政府は保証機関との契約義務や口座残高の上限を100万円にするなど、各資金移動業者へ厳しい要件を課す予定です。

給与のデジタル払いと利用のイメージ

デジタル払い
【画像出典元】「stock.adobe.com/Song_about_summer」

 米国では、ペイロールカード(Payroll Card)と呼ばれるプリペイドカードへの給与デジタル払いが導入されており、2022年時点で推計約840万枚も使われています。このペイロールカードは、銀行が発行するデビットカードのようなもので、お店での支払いに直接使える他、ATMから現金の引き出しもできます。

日本でも給与デジタル払いが導入されれば、労働者が持つ〇〇ペイなどの決済アプリや電子マネーに直接給与が振り込まれ、そのままお店で使える他、コンビニのATMなどで現金を引き出すことも可能になるかもしれません。

また〇〇ペイなどのQRコード決済は、夫婦間や友人同士などで資金移動が簡単に行えるのも魅力です。現金の受け渡しをすることなく、また振込手数料もかかりません。これは会社の経費精算にも応用でき、出張の際の交通費精算などもデジタル払いであればスムーズに行われるかもしれません。

給与のデジタル払い、従業員のメリットは?

給与デジタル払いが導入されると従業員のスマートフォンの決済アプリや電子マネーに直接給与が入ります。銀行やATMで現金を引き出す手間をかけることなく、日常の買い物ができるという点が従業員にとって最大のメリットでしょう。

また、これにより従業員はわざわざ現金を持ち歩かなくてもよくなり、現金の盗難や紛失リスクが軽減します。そればかりでなく、決済アプリや電子マネーであれば利用履歴が残るので家計管理もしやすくなるでしょう。

他にも、銀行口座への振り込みであれば振込手数料が発生しますが、デジタル払いの場合、手数料がかからないか銀行振込よりも安い手数料が想定されます。よって、現在は月に1度の給与支給が一般的ですが、手数料がかからないことで週払いや日払い、プロジェクト単位での給与支払いも可能になるかもしれません。

デジタル払いになると従業員にデメリットはある?

デメリット
【画像出典元】「stock.adobe.com/tomatoko」

デジタル払いにはデメリットもあります。例えば自動引き落としに対応していない点です。よって給与を全額デジタル払いで受け取っても、保険料や公共料金などを自動引き落としにしている方は、その資金をまた銀行口座へ移さなければなりません。

さらに政府は、労働者保護のためデジタル払いの口座残高の上限を100万円と設定し、それ以上の金額は予め登録した銀行口座へ振り込むような指針を出しています。これは労働者保護のためには良い反面、決済アプリや電子マネーの残高を常に100万円未満にしておくよう、従業員側での管理が必要になってきます。

また、資金移動業者が破綻した場合の対応も注意しておかなければいけません。資金移動業者が破綻しても全額が保証される仕組みの確保も義務付けられる予定です。そのため資金移動業者は保証機関との契約が必要です。現在、国内の資金移動業者は2022年10月時点で85社ありますが、これらのコスト面からどれくらいの資金移動業者が給与デジタル払いに参入してくるかはまだ分かりません。よって皆さんが普段使っている決済アプリや電子マネーで必ずしも受け取ることができるとは限りません。

まとめ

普段キャッシュレス決済に慣れている人にとって給与デジタル払いの法改正は朗報です。これを機に給与デジタル払いが進みそうですが、課題もまだまだ山積みです。資金移動業者だけでなく企業側の負担も大きくなるでしょう。

50年前は給与の現金支給が当たり前でしたが、今ではそのような企業の方が少ないでしょう。きっと近い将来、給与デジタル払いが当たり前の時代になっているかもしれませんね。