引っ越しで児童手当がもらえなくなる⁉支給日や変更手続き注意点は
目次
児童手当受給中の人が市や県をまたいで引っ越しをした場合、速やかに申請手続きをしないと児童手当がもらえない月が発生する恐れがあることをご存じですか。
引っ越しといえば、自治体への転出転入届や公共料金の変更、保険やクレジットカードなどの住所変更等、やらないといけない手続きが多いので、つい児童手当の手続きを忘れがちです。
そこで今回は引っ越しに伴う児童手当の申請手続きや申請に必要なもの、支給日についてまとめました。
また、親が単身赴任した場合や海外に転勤となった場合、児童手当対象の子供が海外に留学した場合、児童手当は引き続き受給できるのでしょうか。この点についても解説します。
引っ越ししたら児童手当の手続きが必要
児童手当は国の制度ですが、手続きは居住する市区町村で行います。よって引っ越した場合は、児童手当の変更手続きが必要となるのです。
引っ越し先が同じ市区町村か別の市区町村かにより手続きが異なりますので、それぞれ詳しく見ていきます。
引っ越し先が同じ市区町村の場合
児童手当の手続きは市区町村が行います。よって同じ市区町村内での引っ越しの場合、支給元が変わらないので、児童手当の変更手続きは必要ありません。ただし住所変更届を提出する必要はあります。
引っ越し先が違う市区町村の場合
今お住まいの住所から他の市区町村へ引っ越した場合、旧住所での受給事由消滅の手続きと、新住所での認定請求の手続きがそれぞれ必要となります。
今住んでいる市区町村での手続き
引っ越し先で児童手当を受給するためには、今住んでいる役所に「児童手当受給事由消滅届」を提出しなければなりません。また、引っ越し先の自治体により「所得課税証明書」が必要となる場合があります。この所得課税証明書は、転居前の市区町村で発行するため、引っ越し先の自治体に、この証明書が必要かどうかも併せて確認しておきましょう。
自治体によっては、郵送申請や代理人による申請、マイナンバーカードによるオンライン申請を受け付けているところもあります。詳しくは今お住まいの自治体へお問い合わせください。なお児童手当は転出日が属する月分まで今住んでいる市区町村から受給することができます。
引っ越し先の市区町村での手続き
引っ越した後も引き続き児童手当を受給するためには、引っ越し先の役所へ「児童手当認定請求書」を提出しましょう。この際の注意点は、転入日の15日以内に手続きをするということです。もし手続きが遅れると遅れた月数分の児童手当が支給されませんので、ご注意ください(このことを15日特例といいます。詳しくは後述します)。15日以内に忘れずに申請手続きを行うことで、翌月分の児童手当から受給することができます。
また、転出の際の手続き同様、自治体により郵送申請や代理人による申請、マイナンバーカードによるオンライン申請を受け付けているところもあります。詳しくは引っ越し先の自治体へお問い合わせください。
申請が遅れると、もらえない月が発生してしまう!
児童手当の受給は、原則申請した翌月分からの支給となります。ただし出生日や引っ越しによる転入日が月末に近い場合、異動日の翌日から15日以内の申請であれば、申請が翌月になっても申請月から児童手当を受給できます。
しかし申請日が遅れると、原則遅れた月の分は児童手当を受給することはできませんので、ご注意ください。
例えば3月31日に引っ越しをして新住所へ転入した場合、4月15日までに申請をすれば3月中の申請とみなされ、児童手当は4月から支給開始となります。しかし申請日が4月16日以降となれば4月中の申請とみなされ、児童手当の支給は5月からとなります。
転入の際の手続きに必要なもの
転出の際の手続きは「児童手当受給事由消滅届」と「印鑑」があれば良いのですが、転入の際の手続きには、以下のものが必要となります。
児童手当認定請求書
役所の窓口で入手(自治体によってはホームページからもダウンロードできます)
印鑑
シャチハタは不可です
申請者(児童手当の受給者となる親)名義の普通預金通帳
両親いずれか所得が高い人が受給者となります。キャッシュカードでも可
申請者と子供の健康保険証
裏面の住所も新住所に訂正しておきましょう
申請者の所得課税証明書
引っ越し前の役所にて発行してもらいます
本人確認書類
マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどの顔写真付きの確認書類いずれか1点か、健康保険証と年金手帳などの確認書類2点
親や子が離れたり海外に…こんな時児童手当はどうなる?
親が単身赴任する場合や、単身で海外に転勤となった場合でも、引き続き児童手当を受給することができます。また、児童手当対象の子供が海外に留学した場合などは、条件によって引き続き受給できる場合があります。それぞれ詳しく解説します。
単身赴任で受給者が住所変更する場合
児童手当は子供が受給者ではなく所得の高い方の親が受給者となるので、その受給者が単身赴任により住所変更する場合は、引っ越し先の自治体にて申請の手続きが必要です。
この場合、前述した必要書類の他、子供を養育していることを確認するための書類が必要となる場合もあります。申請方法や必要なものは自治体により扱いが異なりますので、詳しくは単身赴任先の役所へご確認ください。
親が海外に転勤となり、子供は国内に残る場合
例えば仕事の都合で両親が海外に住み、子供を国内の祖父母や親戚などに預ける場合などは引き続き児童手当を受給することができます。ただし今までの受給者が海外で受給することはできず、国内で子供と同居している人を「父母指定者」として指定しなければなりません。この指定された人に児童手当が支給されます。
この父母指定者として児童手当を受給する場合は、子供と同居する父母指定者の市区町村にて手続きが必要です。
子供が一時的に海外に留学した場合
子供が海外に住んでいる場合、原則として児童手当は受給できません。ただし留学が目的で海外に住んでいる場合は、以下の要件をすべて満たしていれば受給することができます。
①日本国内に住所を有しなくなった前日までに日本国内に継続して3年を超えて住所を有していたこと。
②教育を受けることを目的として海外に居住し、父母(未成年後見人がいる場合はその未成年後見人)と同居していないこと。
③日本国内に住所を有しなくなった日から3年以内であること。
その他、短期間留学していて日本に帰国し、再び3年以内に留学する場合などは、上記①の要件を満たしていなくても、手当を受け取れる場合があります。
※内閣府ホームページより抜粋
親も子供も家族全員海外に行く場合
児童手当の受給要件には、国内に住民登録していることが前提とあります。よって海外転勤で家族全員海外へ転出した場合は、児童手当を受給することはできません。
その他にも「児童手当制度」では、以下のルールが適用されますので、よくご確認ください。
①原則として、児童が日本国内に住んでいる場合に支給します(留学のために海外に住んでいて一定の要件を満たす場合は支給対象になります)。
②父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給します。
③父母が海外に住んでいる場合、その父母が、日本国内で児童を養育している方を指定すれば、その方(父母指定者)に支給します。
④児童を養育している未成年後見人がいる場合は、その未成年後見人に支給します。
⑤児童が施設に入所している場合や里親などに委託されている場合は、原則として、その施設の設置者や里親などに支給します。
※内閣府ホームページより抜粋
児童手当の支給条件と日程、金額をおさらい
ここで児童手当についておさらいをします。児童手当は児童一人当たりに対して以下の金額が支給されます。
ただし所得制限がありますので、所得が高い方は上記の金額から減額されるか、支給が停止されます。具体的には、世帯主の年収が960万円程度(子供2人、年収103万円以下の配偶者の場合)を上回ると児童手当の支給額は児童一人あたり一律5000円に減額されます。このことを「特例給付」といいます。
また2022年10月からは、世帯主の年収が1200万円程度(子供2人、年収103万円以下の配偶者の場合)を上回る高所得者については、この特例給付についても支給停止されるようになりました。
具体的な特例給付の所得制限限度額と、給付が停止される所得上限限度額については下表のとおりです。扶養親族等の数により所得金額は異なりますので、よくご確認ください。
年収が所得上限を上回って支給停止されている人も、その後、年収が下がって児童手当を受給できるようになる場合もあるでしょう。その際は、再度申請をしないと受給できませんのでご注意ください。
なお児童手当の支給は毎月ではなく、2月、6月、10月の年3回、それぞれの前月分までの児童手当が口座へ振り込まれます。また、児童手当を受け取るためには年に一度「現況届」を提出する必要がありましたが、2022年6月以降は現況届の提出は原則不要となりました。
まとめ
今回は引っ越しに伴う児童手当の手続きの注意点について解説しました。特に以下の点について理解を深めていただければと思います。
・同じ市区町村内での引っ越しであれば児童手当の変更手続きは不要
・児童手当の変更手続きは引っ越し前後の自治体にてそれぞれ手続きが必要
・転入後15日以内に手続きしないと、遅れた月数分の児童手当は受給できない
・受給者が単身赴任で引っ越した場合も手続きが必要
・子供が留学していても児童手当を受給できるケースがある
引っ越しの際は、いろいろな手続きが必要なので、つい児童手当の変更手続きを後回しにして忘れがちです。引っ越したら2週間以内に忘れず手続きを行いましょう。
毎月の児童手当を中学卒業まで使わずに貯めておくと約200万円にもなります(所得制限等に抵触しない場合)。この国から支給される児童手当は、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的としていますので、引っ越しの際の手続きを忘れることなく子供のために大切に使わせていただきましょう。
児童手当についてのQ&A
Q.離婚して養育費を毎月もらっています。児童手当の所得制限に引っ掛かりますか。
A.離婚した相手方からもらう養育費は課税対象ではないので、児童手当の判定となる所得には考慮されません。ただし、かつての母子手当といわれる児童扶養手当の所得判定には、養育費の8割相当額を加えた額が所得とみなされます。
Q.里帰り出産をした先の自治体に出生届を出す予定です。児童手当の手続きも同時にできますか。
A.里帰り出産などで、お住まいの市区町村以外で出生届を提出された場合には、別途お住まいの市区町村で児童手当の申請手続きを行う必要があります。また、児童手当を受け取る人が公務員の場合は勤務先(所属庁)で児童手当の申請手続きを行うことになります。