国民年金、60歳で払い終わったら毎月の厚生年金保険料は下がる?
お給料から毎月天引きされている項目に「社会保険料」があります。この社会保険料の中で大きな割合を占めるのが厚生年金と健康保険です。今回は引き落とされている年金について、60歳を超えたときの給料天引きがどう変わるのかに関するご質問です。
50代男性の相談内容
現在会社員で、20才から国民年金を給与天引きされていますが、国民年金は40年の積立と聞いています。ということは40年間毎月納めていれば、61才から国民年金分の給与天引きは無くなり、厚生年金分のみの天引きとなりますか?
年金制度は最大3階建て
社会保険の適応事業所にお勤めであれば、毎月の給与から社会保険料が天引きされています。社会保険料は厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料・介護保険料などが上げられますが、その中で厚生年金保険料と健康保険料は大きな割合を占めます。今回は厚生年金保険料にフォーカスして話を進めていきます。
国が準備している公的年金制度は、20才以上60才未満の全員が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員が加入する厚生年金保険の2階建て構造になっています。
出典:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金 ~年金の仕組みと将来~」
1階部分の国民年金は20才から60才までの人が「全員加入=強制加入」、2階部分の厚生年金については適応事業所で勤務している労働者で一定の条件を満たせば強制加入となります。
なお3階部分として企業が任意で設立し社員が加入する企業年金や、国民年金の第1号被保険者が任意で加入できる国民年金基金、個人型の確定拠出年金であるiDeCoなどが準備されています。
1.国民年金
老後の生活資金を始め、病気やケガなどで障害が残ったときや一家の働き手が亡くなったときに残された家族の生活を支え合うという、相互扶助の考えで作られた仕組みが年金制度です。日本国内に居住している20才以上60才未満の方は、国民年金の被保険者(加入者)となり、保険料を納める義務があります。なお国民年金は職業などにより3つの被保険者に分かれ、加入手続きや保険料の支払い方法が異なります。
上記のように第1号被保険者から第3号被保険者まで3種類に分かれ、ご相談者は国民年金の第2号被保険者にあたります。
なお国民年金を満額受給するには20才から60才までの40年、480カ月の期間中に保険料を欠かさず納める必要があります。
2.厚生年金
厚生年金は、厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、官公庁などの適用事業所に勤めている70才未満の方が対象の公的年金です。厚生年金は報酬比例の仕組みを取っており、給与が高ければ保険料も上がりますが、その分将来受け取る年金も増えます。なお厚生年金保険料を支払うことで国民年金保険料を支払っていることと同じ扱いになり、国民年金の保険料を別途支払う必要はありません。
60歳超でも、給与に応じた厚生年金保険料が天引きされる
ご相談者の方の気になるポイントはここだと思います。厚生年金加入者は国民年金の保険料を支払っていることと同じ扱いになりますが、「国民年金保険料を支払っている」ということにはなりません。60才以降も厚生年金に加入していれば給与の金額に応じた厚生年金保険料を支払いますが、国民年金の保険料分を差し引いたと考えられる金額ではありません。
繰り返しとなりますが、厚生年金の保険料は給与の額に連動する仕組みとなっており、国民年金の保険料を払い終わる60才を迎えても、年齢によって厚生年金の保険料が変わるわけではない点に注意が必要です。
60才以上でも国民年金を払って受給額を増やせることも
第1号被保険者と第3号被保険者は条件を満たせば、60才以上でも国民年金に任意加入できます。任意加入は支払い月数が国民年金の満額受給に必要な480カ月に満たない場合、60才以降も保険料を納めることで、国民年金の受給額を増やす仕組みです。対象期間は60才から65才までの5年間で、国民年金の満額に必要な480カ月間に達した場合は65才未満でも終了します。なお会社に勤めている厚生年金加入者は対象外です。
まとめ
60才以降も厚生年金の加入者として会社勤めをしていれば、給与額に応じた厚生年金保険料の支払いが必要です。注意点としては国民年金の保険料納付の上限である60才を超えたからといって、国民年金保険料相当分が安くなるわけではないことです。
ただ厚生年金は報酬比例ですので、60才以降の給与が再雇用等で下がるようなことになれば厚生年金保険料も下がります。いずれにしても60才以降も厚生年金保険料を納めれば年金額も増えますので、可能であれば厚生年金加入での勤務をお勧めします。