児童手当、貯金してる?使ってる?FPおすすめの使い道とは
政府や自治体レベルで少子化対策の政策が加速する中、とりわけ子育て世代にとって大変ありがたいのが児童手当です。高校や大学への進学費用として貯金しておきたいところですが、育ち盛りで食費もかかり、習い事も掛け持ちのため、児童手当を使いながら子育てをしているという世帯も多いでしょう。今回は児童手当はどう使うべきか、使い道について一緒に考えてみたいと思います。
児童手当の使い道、「学費用の貯金・学資保険」が多数
以下は内閣府の「児童手当等の使途に関する意識調査」(平成 30~31 年)の結果です。例えば1万円のうち5000円を大学進学費用として貯蓄、残り5000円は今現在の塾代など、複数の使途となっているケースも想定されます。以下は複数回答の結果です。
内閣府の「児童手当等の使途に関する意識調査」(平成 30~31 年)参照、一部筆者編集
多くの方が将来の学費ピークに備えて貯蓄や学資保険の保険料に充てていることが分かりますが、②~④のように今まさに子どもや家庭のために使っている世帯も少なくないことがうかがえます。
児童手当はいくらもらえる?
児童手当の額は以下の表の通りに決まっています。2月、6月、10月の年3回、4カ月分ずつ振り込まれます。毎年6月に役所・役場に現況届を提出することで継続的に受給することができます。
出生後の手続きのタイミングや、生まれたのが年度末の3月なのか年度初めの4月なのかといった要因で総額が異なりますが、中学卒業までおよそ200万円受け取ることになります。
なお、児童手当には所得制限があります。 対象児童が1人の場合、養育している方の年収が875万6000円を超えると月額一律5000円の特例給付となり、同じく年収が1124万円を超えると児童手当の給付はありません。※年収は目安です
なお、2024年10月よりこの所得制限がなくなります。つまり児童手当の給付対象ではなかった世帯も支給の対象になります。加えて、高校生も児童手当の対象となり支給対象が拡充となります。また3歳以上の第3子以降の支給額が3万円となり、子どもの多い世帯へ一段と手厚い制度となります。
FPが考える児童手当の賢い使い道
例えば5歳と2歳のお子さんがいる場合、支給日に4カ月分の児童手当10万円が振り込まれます。これだけの金額、あまり意識することなく「知らず知らずのうちに使ってしまっていた」ということは避けたいところです。FPとして、また1人の親として「児童手当をどう使うべきか」、いくつか紹介したいと思います。
① NISAを活用してコツコツ投資をする
5歳のころと比べて10歳、10歳の時と比べて15歳と、やはり年齢を重ねるほど支出は増えていきます。よって、可能であれば児童手当に今すぐ手をつけるのではなく、将来に回すべきです。もし5歳であれば大学入学まで10年以上ありますので、NISA口座を活用して投資信託をコツコツ積み立てていくのが良いでしょう。
2024年以降の新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できるようになりましたので、「つみたて投資枠」でコツコツ積立をしながら余裕がある際は「成長投資枠」を活用してさらに教育費の準備をするといったことも可能です。毎月の積み立ては時間の分散効果も働きますので、長期で見ればそれほど大きなリスクではないと思います。
② 定期預金
長期的な投資信託の積み立ては、先述した通りそれほどリスクは大きくありませんが、短期的には価格が変動し値下がりする局面も想定されます。 投資に不慣れな人がストレスを感じながら運用をすることを考えれば、堅実に定期預金で貯めておくのも1つの選択肢です。
2024年に入りマイナス金利が解除されたこともあり、定期預金金利も上昇傾向にあります。さらに今後の利上げをはじめ金融政策次第では一段と定期預金の魅力がアップすることも期待できるため候補の1つとしてチェックしておきたいところです。
進学も含めて子どものやりたいことは成長段階で大きく変わっていきます。急にまとまった資金が必要になることもあります。資産運用のように資金が大きく増えることはありませんが、 預貯金で確実に貯めておくのも良いでしょう。
③ 「今」必要な教育資金として使う
児童手当をもらっている間、手当に頼ることなく子育てができれば理想です。ただ、各家庭それぞれ事情があり、必ずしもできるとは限りません。また、子どもの成長は早く、1日1日がかけがえのない時間であり、小学生ぐらいになると「どうしてもこれがやりたい」と夢や希望を口にする機会も増えてきます。
「大学に一番お金がかかるから」と将来ばかりを気にして、子どもがやりたいことをさせてあげられないといった状況が必ずしも良いとは限りません。人それぞれにお金を使うタイミングや価値観は違います。お子様の意見を聞きながら「今」に費やすのも決して悪いことではないと思います。
④ 外貨で積み立て
最後はやや応用編といったところですが、「将来は留学させる」、「海外を視野に入れてほしい」と口にする親御さんは非常に多いです。局面によって違いますが、ここ10~20年でも日本円より米ドルや豪ドルの金利が高く、運用するのに有利といえます。全額ではなく「毎月5000円は米ドル預金をする」とルールを決めて運用すればドル安・円高の時にたくさんドル預金ができるといった「ドルコスト平均法」が働き、効率よく外貨を貯めることもできます。
「数週間のワーキングホリデーの費用が為替レートの関係で当初予定より数十万円高くなり追加料金を支払うことになりました…」といったケースも中にはありました。実際にその外貨を使うかどうかは別にしても、グローバル化が加速する中、日本円以外の通貨で子どもの将来のための備えをするというのも1案になると思います。
1人総額2000万円!?養育・教育費の目安を知ろう
養育費というのは食費や衣服など子どもの成長にかかるお金で、教育費は進学や塾にかかる費用を指します。各統計データや家庭によって大きく異なるため、あくまで参考程度ですが、一般的に1人の養育費と教育費を合わせて2000万円程度はかかるといわれています。1人約230万円の児童手当で全体の1割以上をカバーできることになります。
子どもが2人になると単純に4000万円という見方もできますが、食事や光熱費などすべてが倍になるわけではありません。また、一度にまとめてそれだけの金額が必要になるわけでもありません。学校の授業料や子どもの医療費など負担軽減措置はありますし、各種助成・支援金、そして奨学金制度なども充実しています。それらをしっかり把握し、上手に活用してやりくりしてください。
まとめ~親としてできることとは~
国内外の奨学金に関する調査結果などを調べておりますと、子どもが自分にかかるお金に無関心で親任せであるほど、奨学金の返済を延滞する傾向が高まるといった具合にマイナスに働いてしまうようです。言い換えますと、「奨学金の手続きを学生自ら行った」など、子ども自身が自分にかかるお金のことに関わることは良いことだとうかがえます。
部活の用具1つにしても、親が買ってくれたことに感謝し大切に使う場合と、そうじゃない場合。やはり前者であってほしいですよね。とはいっても、子どもが欲しいというものをすべて買い与えるのも少し違う気もします。何にどれだけお金がかかるのか、どこまでであれば親としてできるのか。子どもの成長に合わせて少しずつ話をしていくことも大切だと思います。
小学生高学年ぐらいから、児童手当の使い方自体を子どもと話し合って決めるのも良いと思います。お金の話は場合によってはタブーであったり神経質なものであったり、積極的に取り上げる話題でないとされることも多いですが、親子間では決してそんなことはありません。親からぜひ一度投げかけてみてください。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。