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16歳未満は控除なし?早生まれは不利?「子供の扶養控除」を解説

そなえる 内山 貴博

16歳未満は控除なし?早生まれは不利?「子供の扶養控除」を解説

【画像出典元】「Roman Samborskyi/Shutterstock.com」

私たちが納めている所得税は「担税力」が考慮されています。担税力とは「税を担う力」。所得が多い人ほど担税力が高くなりそうですが、必ずしもそうとは言い切れません。所得が多くても、自分自身や家族が病気がちでものすごく医療費がかかり、貯蓄を取り崩している人もいるかもしれません。そのために「医療費控除」があり、担税力を調整してくれているのです。

家族が多い人ほど何かと生活費がかかるため「扶養控除」で税負担が調整されます。多くの人に関係がありながら意外と知らないことが多い扶養控除。多くのケースでは子供が扶養控除の対象になるのは高校生か大学生までです。なぜ16歳未満は扶養控除の対象とならないのでしょう?早生まれが不利だと言われる理由は?今回は「子供の扶養控除」について解説します。

扶養控除とは?簡単に仕組みと要件をおさらい

「扶養控除」とは納税者と生計を一にしている一定の扶養者がいる場合に受けられる所得控除の1つで、年齢や所得などの制限があります。子供を扶養している場合、その子供の所得が48万円以下の場合が対象となります。

今回は子供が主なテーマですが、例えば納税者が親の面倒を見ているといった場合も同様に親の所得が48万円以下であれば扶養控除の対象となります。控除額は以下のように定まっています。扶養している納税者の所得から一定額控除ができるため、その分、税負担が軽減されます。

例えば一般扶養控除で38万円控除の場合、納税者の所得税率が10%としますと、3万8000円の所得税負担の軽減につながります。

なお、配偶者が専業主婦(主夫)やパート勤務の場合、「扶養の範囲内」を意識しているケースが多いですが、配偶者は別途「配偶者控除」や「配偶者特別控除」があるため扶養控除の対象とはなりません。

所得制限について

「所得が48万円以下の人が扶養控除の対象」と前述しましたが、この「所得」が分かりにくいと思います。日ごろ私たちが意識しているのは「所得」ではなく「収入」だからです。では、この「所得」とはどのように計算できるのでしょうか。

例えば子供が大学生でアルバイトをしていた場合は税務上、「給与所得」となります。「給与収入」から「給与所得控除」を差し引いた額が「給与所得」となります。この給与所得控除額の最低金額は55万円となっています。自営業の方が売り上げから必要経費を差し引くように、会社員やアルバイトの場合も一定の控除を差し引くことができるのです。
よって以下のようになれば扶養控除の対象となります。

(アルバイトなどの年収)-55万円≦48万円

この場合、最も大きな金額は103万円となります。103万円、多くの方にとって一度は聞いたことのある、おなじみの数字ですよね?
所得48万円という基準がやや分かりにくいので一般的に「年収103万円以下」で判断することが多いのです。よってそれ以上アルバイトで稼いでいなければ基本的に扶養控除の対象となります。

年収103万円でもアウト⁉子供の稼ぎ方に注意

動画撮影する女性
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 上で説明したのは一般的に高校生や大学生がアルバイトをしてアルバイト先から給与を受け取っているケースです。しかし最近は、YouTubeやTikTok、Instagramなど様々なSNSで若い人たちが稼いでいると聞きます。こういった場合は給与とはならず、通常「事業所得」または「雑所得」となります。この場合は、実際の収入からかかった必要経費を差し引き、所得を求めます。

あまりないケースだとは思いますが「年収103万円以下」でも必要経費が少ないため「所得48万円」を超えてしまい扶養から外れるということも想定されます。その点、扶養控除を受けたい親は、所得48万円を超えないように、子供にしっかり確認をしてください。

16歳未満は扶養控除0円⁉控除対象は何歳から?

上記表でも分かるように子供の年齢によって扶養控除額は異なります。親は子供を生まれた時から扶養することになりますが、税務上、15歳までは扶養控除額が0円となります。「扶養しているのになぜ扶養控除が適用されないの?」という意見はごもっともです。ではなぜ、そうならないのでしょうか。

16歳未満は控除されない、その理由は

まず16歳未満、つまり中学生までは扶養控除の対象となりません。その理由は「児童手当」です。中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)児童手当が支給されているため扶養控除の対象とはならないのです。

実はもともと児童手当対象の16歳未満も扶養控除の対象となっていました。しかし2009年、当時の政権が政策の目玉として「こども手当2万6000円」を掲げ、少子化対策に乗り出しましたが、財源確保の観点から様々な見直しに迫られ、その結果、現在の児童手当制度となり、そして16歳未満の扶養控除が対象外となった経緯があるのです。

当時は「1人あたり1カ月2万6000円ももらえる」と多くの子育て世代が政権与党に期待していました。残念ながらそこまでは実現しませんでしたが、それ以前の児童手当(5000円~1万円)に比べ、現在は3歳未満が1万5000円受給できるなど児童手当を充実させることにはつながりました。

よって表面的には「手当が増えた」と捉えることができますが、その陰では、16歳未満が扶養控除の対象から外れています。ここまでの一連の流れをきちんと把握していた子育て世代がどれだけいたでしょうか?所得が多い人、つまり所得税率が高い人は固定額の手当をもらい、扶養控除がなくなったことで高い税負担を強いられ、実質損をするという状況にも直面したのです。

今後も少子化対策は政策の重要課題となり、現在も多く議論されています。選挙に無関心な人も多いですが、どの政党・政治家がどういった方針を掲げているのか、子育て世代の人や今後結婚して子供をもうけたい人は、こういった観点から注目するのも大切だと思います。

子供の扶養控除は何歳までできる?

多くのケースでは子供が扶養控除の対象になるのは高校生か大学生までです。それぞれ高校生が通常の38万円、大学生が63万円の特定扶養控除に該当します。ただし、大学院に進学する人もいるでしょうし、しばらく就職をせずにその後も親に養ってもらう人もいるでしょう。この場合は所得の条件などを満たせば一般の38万円控除の対象となります。

つまり「子供が大学を卒業するまで」というような決まりはなく、何歳まででも扶養控除の対象になる可能性はあります。親が子を扶養し、条件を満たしている限り扶養控除の対象となるのです。

子供の扶養控除で気を付けるポイント

注意点
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同居していないと控除できない?

扶養控除の前提は「生計を一にしている」ということですが、これには「同居」という意味が含まれるのでしょうか?

社会保険の場合、扶養する親族によっては同居が前提の場合もありますが、税務上は同居が前提ではありません。高校生や大学生が親元を離れて下宿している場合もあります。さらには海外に留学をしているケースもあるでしょう。このような場合でも、通常は親が仕送りをするなどして子供を扶養していますよね。

同居しているかどうかを問わず、子供が下宿先で経済的に自立しているといった状況でなければ、所得や年齢などの条件に応じて、原則扶養控除の対象となります。

早生まれが不利に?

扶養控除は12月31日時点の年齢で控除されるか否か判断されます。例えば高校1年生の場合、通常4~12月生まれの人はその年の12月31日時点で16歳になっているため扶養控除38万円の対象となりますが、1~3月生まれの場合、まだ15歳で年末を迎えることになるため、扶養控除は0円となります。

大学に進学した際も同様です。早生まれの人は大学1年の年末時点でまだ19歳になっていないため特定扶養控除の63万円には該当せず、通常の38万円の扶養控除となります。

「控除を受けるのが1年ずれるだけでは?」と思うかもしれませんが、ずれた先には就職があります。つまり、早生まれの人が特定扶養親族に該当する年末時点で22歳の時、既に就職をしていると、扶養控除の条件を満たさないことになるのです。進学や浪人・留年という場合もあるので一概には言えませんが、早生まれの人は扶養控除においてやや不利になりそうです。

まとめ

今回は子供の扶養控除について見てきました。親として最も手がかかる幼少期に扶養控除額が0円というのは理由を聞いても納得できないという人もいるかもしれません。

その一方で教育費に目を向けると現在は幼児教育・保育の無償化など比較的小さい頃の教育費負担は抑えられるように各種制度が整備されています。最も教育費がかかるのは一般的には大学です。その大学生の時に扶養控除額が他より多くなっているのはありがたいですね。教育費負担と扶養控除の額が連動していると見ることもでき、まさに担税力に配慮してくれている格好となっています。

会社員の場合、年末調整時に家族構成、所得等を記入することで扶養控除が計算されることになります。子供の成長とともに扶養控除の額が変わっていくので、税金という観点からも子供の成長、子育てのフェーズが変わっていくことも体感することになります。

子供の成長は早く子育てはあっという間です。扶養控除から外れるまでにしっかり親子の時間を大切にしたいですね。そして扶養控除から外れた先には・・・超高齢化社会、今度は子供に面倒を見てもらう側となり、子供の扶養控除対象親族になる可能性もあります。どちらにしても親子で円滑な関係を続けていくことが大切のようです。

子供の扶養控除についてQ&A

Q.年末調整の際、扶養控除申告書に16歳未満も記載するのですが、住民税に影響しますか?

A.住民税も所得税同様、16歳未満の扶養控除額は0円です。よって、16歳未満の子供を扶養していても納税額に変わりはありません。ただし住民税は、一定の所得以下の場合に非課税となる限度額があります。その限度額は扶養人数等により変わり、16歳未満も扶養人数にカウントされます。その計算をする上で扶養親族の人数が必要となるため16歳未満でも記載することになっています。

Q.子供が2人います。子供達をどちらも夫の扶養にする、または1人を妻の扶養にするなどといったことはできますか?

A.税法上、長男は夫の扶養親族、次男は妻の扶養親族とすることも可能です。よって住宅ローン減税やふるさと納税、医療費控除など各種所得控除や税額控除の状況次第では、必ずしも所得の多い人が扶養するというかたちを取らなくても良いことになります。ただし、健康保険上の扶養親族は、全員、夫婦どちらか収入の多いほうの被扶養者となるため、税金上との扱いとは異なります。