インフルエンザの予防接種費用、医療費控除の対象になる?
すでに流行期入りのニュースも入っているインフルエンザ。少しでも感染や悪化の可能性を軽減するための予防接種をしておきたいものですが、接種は自己負担。1回あたりの金額も安くなく、小さい子供は複数回の摂取が必要です。果たしてこの費用は医療費控除の対象なのでしょうか。今回は、医療費控除やセルフメディケーション制度についても解説します。
インフルエンザ予防接種は医療費控除できない
結論から言うと、インフルエンザの予防接種は医療費控除の対象にはなりません。予防接種はあくまで「予防」のために行うのであり、医療費控除の対象となる「医療行為」ではないからです。
しかし、自分だけでなく家族分もとなると費用負担は大きくなります。医療費控除以外に少しでもお得にインフルエンザの予防接種を受けることはできないのでしょうか。まずは、医療費控除の基本から学んでみましょう。
医療費控除とは
医療費控除は、1年間の医療費の合計が一定額を超えた際に所得控除を受けられる制度です。税金を計算する際の基準となる課税所得から医療費にかかった金額の一部を引くことができるので、その結果税金を安くできます。
対象となるのは生計を一にしている家族分全てで、支払った金額から保険金などで補填された金額と10万円を引いた金額が控除額になります。総所得が200万円未満の場合は、総所得の5%が課税所得から差し引かれます。
しかし、医療費控除には対象になるものとならないものがあります。対象になるのは病気やケガを「治療する」目的で支払われたものです。予防や美容目的のものや、治療に直接関係しないものは対象外となります。
【医療費控除の対象になるものの例】
・病院で払った診療費や治療費
・治療を目的にしたマッサージや鍼灸、柔道整復の施術費
・医師の治療を受けるための通院費、交通費、送迎費
・入院時の部屋代、食事代
・義手や義歯、松葉杖、補聴器などの購入費
・治療のための薬代
・出産のための検査や通院費用
【医療費控除の対象にならないものの例】
・予防のための通院、予防接種
・治療に直接関係しないマッサージや鍼灸、柔道整復の費用
・予防や健康増進、美容目的のビタミン剤、サプリメントの購入費
・美容目的の歯列矯正や外科手術の費用
医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。医療費を証明する領収書などを揃えて確定申告をすることで、支払った税金の一部が還付されます。
予防接種はセルフメディケーション税制も適用外
前述したように、病気にならないための予防にかかる費用は医療費控除の適用外です。けれど2017年以降、予防のために一定の取組みを行っている場合、その費用の一部を控除対象にできるようになりました。これが「セルフメディケーション税制」です。
セルフメディケーション税制は予防のための費用を適用対象としていますが、インフルエンザの予防接種は適用外です。
セルフメディケーションとは
セルフメディケーション税制を受けると、生計を一にする家族が使った1万2000円を超える対象医療品を購入した際、超えた金額が課税所得から控除されます。
セルフメディケーションの対象は、指定された医薬品の購入費用です。対象となる医薬品はスイッチOTC医薬品と呼ばれるもので、対象医薬品は厚生労働省のホームページで確認できます。
セルフメディケーション税制を受ける場合は、医療費控除を受けることはできません。支払った医薬品代と医療費を比較して、どちらかを選択して確定申告をすることになります。
セルフメディケーション税制の適用条件等
さらに、セルフメディケーション税制を受けるためには、健康の保持増進や疾病予防のために「一定の取組」を行っていることを領収書や結果通知書などで証明する必要があります。
セルフメディケーション税制を受けるために必要な「一定の取組」には以下のようなものがあります。
- 健康保険組合や市区町村国保、市区町村等が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
- 予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先が実施する定期健康診断
- 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
- 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
インフルエンザの予防接種はセルフメディケーション税制を受けるための条件には入っていますが、その費用は対象外となっています。
予防接種は健保などの補助金をチェック
医療費控除でもセルフメディケーション税制でも対象外になっているインフルエンザの予防接種。全て自己負担しなければならないのでしょうか。
一部の自治体や健康保険組合などでは、補助金や助成金を出している場合があります。
自治体によって助成金制度があり、予防接種した医療機関への接種費用の支払いが免除されたり、後日申請することで接種費用が戻ってきたりします。高齢者や子どもなど、対象者を限定しているケースや、2回までなど回数を限定している場合もあります。
また、企業の組合健保や会社の福利厚生として補助金を支給するケースも増えています。インフルエンザの予防接種を考えている方は、まずは自治体のHPで調べたり、組合や会社に問い合わせてみましょう。
インフルエンザの予防接種は医療費控除やセルフメディケーション税制の対象外です。それでも、自治体や会社の制度を活用すれば、負担を軽減できる可能性もあります。また、予防接種を受けることでセルフメディケーション税制を受ける条件を満たすことにもなり、総じて支払う税金の額を抑えることもできるかもしれません。あきらめずに、いろいろな情報を確認してみるようにしてください。