お金

電気・ガス代補助が12月まで延長、喜ぶ声の反面なぜ不満の声が?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

電気・ガス代補助が12月まで延長、喜ぶ声の反面なぜ不満の声が?

【画像出典元】「Tomasz Makowski/Shutterstock.com」

経済産業省は9月20日、電気代や都市ガス代の負担軽減策を来年1月請求分まで延長すると発表しました。この発表を受けて、SNSでは多くのユーザーからさまざまな反応が寄せられました。今回の負担軽減策の延長を歓迎する声も一定数あった一方、不満の声も少なくありません。補助金により、電気代やガス代が安くなるにもかかわらず、なぜ国民の間から不満の声が出てくるのでしょうか。その背景には、「再エネ賦課金」の存在がありました。

再エネ賦課金とは

メガホンを持つ人達
【画像出典元】「stock.adobe.com/Nuthawut」

当初は、この9月までとされていた、電気代や都市ガス代の負担軽減策が、今年12月の使用分まで延長されることが発表されました。電気代は一般的な家庭で月に900円ほど、ガス代は450円ほど安くなる見通しです。この発表を受け、SNSではさまざまな意見がユーザーから寄せられました。好意的な意見で多かったのは、次のような意見。

「電気代高騰は家計に大打撃だから助かる」

「電気代、高すぎるからありがたい」

「電気代が値上げされている中だから本当に良かった」

「補助金は少しでも長く続いた方がいいですね」

こうした声がある一方で、不満の声も多数寄せられました。「焼け石に水」「たった1000円ちょっと安くなっても…」「根本的解決でないから喜べない」などのコメントが目立ちました。そんな中、筆者が最も注目したのは、次の意見です。

「再エネ賦課金をなくす等、根本的に料金を下げて欲しい」

再エネ賦課金がどういうものか知らないという方もいるのではないでしょうか。手元に電気代の明細書がある方は、確認してみてください。「再エネ賦課金」と書かれていて、お金が徴収されていることが分かります。再エネ賦課金の正式名称は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」。「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって、電力会社が買い取りに費やした費用を、電気を使用する人が負担するという制度です。

簡単に言えば、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーによる発電を普及させるための費用を、電気を使う人すべてから徴収するというもの。東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こった翌年の、2012年度から導入されました。再エネ賦課金の金額は、全国一律になるように設計されており、1年に1度見直されます。そして、その年の5月から新たな額の再エネ賦課金が、各家庭の電気使用量に応じた金額で徴収されます。

上がり続ける再エネ賦課金

再エネ
【画像出典元】「Lerbank-bbk22/Shutterstock.com」

2012年度の導入から10年以上が経つ再エネ賦課金ですが、これまで年々上昇を続けてきました。2012年度は1kwhあたり0.22円だった再エネ賦課金の金額は、2015年度には1.58円、2020年度は2.98円、2022年度は3.45円と上昇しつづけています。標準家庭の負担額は、2012年度で年間792円だったのが、2015年度は年間5688円、2020年度は年間1万728円。そして2022年度は制度導入以来、初めてひと月あたりの負担額が1000円を超え、年間1万2420円となりました。

2023年度は1kwhあたり1.4円に下落していますが、これは化石燃料の価格高騰などを理由とした電力市場価格の高騰が原因です。よって来年度以降、化石燃料の価格が落ち着けばまた高騰していく可能性が高いでしょう。再エネ賦課金は、いつまでその制度が続くのか明らかになっていません。何をもって、再生可能エネルギーが普及したと判断するのかの指標も示されていません。また、再エネ賦課金は、再生可能エネルギーでの発電に賛成の人も反対の人も等しく徴収されるもので、電気を使っている以上支払いから逃れることはできません。そのため、昨年来からの電気代高騰の際に、「再エネ賦課金制度をやめるべきだ」との議論がしばしば巻き起こっているのです。

消費税減税も検討すべきでは?

税金
【画像出典元】「stock.adobe.com/Nishihama」

筆者は、少なくとも電気代の高騰が一定水準以上の場合は、再エネ賦課金の徴収を凍結すべきだと考えています。それに加えて、電気代やガス代の消費税の減税、あるいは時限的にでも撤廃すべきです。なぜなら、電気やガスなどのインフラ料金の高騰は、低収入の人ほど影響が大きくなるからです。例えば4人家族の平均電気料金は、月額約1万2000円。2022年度はそのうちの約1000円が再エネ賦課金、そして約1200円が消費税として徴収されている計算になります。多くの収入がある方にとっては、月に2000円程度の負担は問題ないかもしれません。しかし、その2000円を払うのも苦しいという人も実際にいます。

消費税にいたっては、電気代やガス代、水道代などのインフラの料金は軽減税率すら適用されていません。軽減税率が適用されている新聞の消費税は8%なのに、電気やガスの料金の消費税が10%なのは何か間違っていると筆者は思うのですが、読者の皆さんはいかがでしょうか。