地震などの災害時、現金がないと困る⁉どれくらい用意が必要?
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、緊急時の現金保有に関する20代男性からの相談です。最近はキャッシュレス決済が中心の人が増えていますが、災害時になるとサービスインフラがダメージを受けて使えなくことも想定されます。災害時の「お金」の備えはどうすれば良いのか、現金は財布にいくらぐらい用意があれば良いのかなど解説していきます。
20代男性Yさんからの相談
いつもはカードや二次元コードでのキャッシュレス決済で生活しており、現金をほとんど持っていませんが、先日の震災を見て、改めて現金の必要性を感じました。もしものために、いわゆるタンス預金のような現金はいくらくらい持っておくのが適切なのでしょうか?また緊急時には、運用している投資信託や株、iDeCoなどはすぐに現金化できるものなのでしょうか。火災や倒壊により、身分証明書・印鑑・通帳を紛失してしまった場合の対応方法についても教えていただきたいです。
小銭にも注意!10日分の生活費が現金であると安心
スマートフォンの普及とともに、キャッシュレス決済が一般的になってきました。非常に便利ですが、電子マネー・二次元コード決済、クレジットカードなどの決済システムは、停電時や通信状態が悪い状況下では利用できなくなる可能性が高いです。そのため万が一に備え、ある程度の現金が手元にあると安心です。
いくらぐらいの現金があると良いかというのは難しいのですが、財布の中に1~2万円程度の現金があると安心だと思います。財布の容量にもよりますが、千円札や小銭などを混ぜた状態が理想的です。
小銭で注意してほしいのは500円玉です。2021年度に新型の硬貨に切り替えられましたが、自動販売機で対応しているものが少なく、残念ながら利用できないケースがまだまだ多いのが現状です。
また、当座の資金として、1週間から10日程度の生活費にあたる金額を自宅においておくと安心ではないでしょうか。
現金以外の金融資産は「緊急時」に現金化できる?
預貯金以外の金融資産はどうでしょうか?
株式や投資信託
売却指示を出すと、通常は1週間程度で現金として引き出せます。ただし売却指示を電話やネットで行う場合、通信環境に左右される恐れもあります。
iDeCo
緊急時でも60歳以前であれば払い出しはできません。60歳になる前に「加入者が死亡した」「障害年金を受け取ることになった」「条件が厳しい脱退一時金を受け取る」など3つの例外的なケースがありますが、それ以外では引き出しはできません。
生命保険の解約返戻金
終身保険や養老保険など、解約すると解約返戻金が戻ってくる生命保険があります。生命保険会社のコールセンターに依頼すると1週間程度で振り込まれます。なお解約返戻金を受け取ると一般的には保険契約が終了します。また早期で解約すると、大部分のケースで解約返戻金が支払い済みの保険料を下回ります。そのため、解約返戻金の範囲内でお金の貸し付けを受ける「契約者貸付」という制度の利用も検討してみてください。
罹災で通帳や身分証明書を紛失した場合の対処法は?
地震や豪雨、土砂災害などで金融機関の印鑑・通帳や本人確認資料をなくしてしまうこともあるかもしれません。そうなった場合、各機関とも柔軟な対応が取られています。
金融機関の印鑑・通帳を紛失してしまった場合
印鑑や通帳をなくしても、身分証明書があれば銀行の預貯金は引き出せます。豪雨や地震などの災害が発生した際に、日本銀行が被災地域の金融機関に対して「災害時における金融上の特別措置」を要請し、キャッシュカードや通帳、印鑑などを紛失した場合でも、預金者本人であることが確認できれば一定の範囲で預金を引き出すことが可能になります。
本人確認資料を紛失した場合
一般的に本人確認資料として取り扱われるのは、運転免許証、マイナンバーカードの2点が多いと思います。運転免許証やマイナンバーカードを紛失した場合、まずは警察に紛失届を出しましょう。紛失届を提出すると受理番号が付与されますので、受理番号を元に再発行の手続きを行います。免許証は運転免許試験場で、マイナンバーカードは自治体で再発行の手続きを行います。
まとめ
2018年に発生した北海道胆振東部地震では北海道全域で停電が発生し、2024年1月の能登半島地震でも停電が長期に亘りました。現金以外の決済方法は全て通信回線や電気を使用しており、停電時には利用できないと考えておいたほうが良いでしょう。
そのため、万一の備えとして、財布には千円札や小銭を1万円程度常に入れておくと安心です。また当座の資金として、生活費の1週間から10日分を現金で用意しておくことをおすすめします。
また、災害などが発生した際、本人確認資料になる免許証やマイナンバーカードを身につけておくこと。もし紛失したら忘れずに警察に届け出を行いましょう。