NYの車所有率は?カーシェアやリースの最新利用実態には変化が
広大な国土を持つアメリカは車社会として知られています。この国ではいったいどのくらいの人が車を所有しているのでしょうか。さらに地下鉄やバスなどの公共交通機関に加え、Uberなど各社ライドシェアリングサービスが発達している都市部の所有率は?今回はアメリカの自家用車にまつわる情報を深掘りしてご紹介します。
ガソリン自動車が誕生して138年
自動車の起源は18世紀に遡ります。蒸気自動車が誕生したのは1769年、そしてガソリン自動車が誕生したのは1886年のこと。1908年にはアメリカのフォード社が初めて流れ生産方式で自動車の量産を開始しました。それまで自動車は一部のお金持ちだけの特別な乗り物だったのが、量産によってより多くの人が利用する乗り物になったのです。日本で国産第1号のガソリン自動車が製造されたのは1907年でした。その後、TOYOTA、HONDA、NISSANなど各メーカーが世界に進出していきました。
広大な国土を持つアメリカでは一部の都市を除き公共交通機関は一般的に乏しく、自家用車は人々の生活に欠かせないものとなっています。車社会を前提として街づくりが進められてきたため、スーパーやショッピングモールなど郊外にある商業施設の駐車場は日本では考えられないほどの広さとゆとりがあります。一般的な住宅も敷地面積は広く、それに伴い駐車スペースも広いため、一世帯ごとに車を何台も持つ(持てる)のはこの国では決して特別なことではないのです。
アメリカの自動車所有率は?
アメリカの最新の車所有率を調べてみました。米フォーブスによると91.7%の世帯が少なくとも1台の自動車を所有し、また22.1%の世帯が3台以上の自動車を所有しているということです。一方、自動車を所有していない世帯はわずか8.3%でした。つまりこの国では「ほとんどの世帯が車を所有している」ということになります(すべての数字は2022年当時)。
自動車所有率は増えていて、2018年から22年の間に個人用および商用車用の登録台数は3.5%増加しています。
ちなみにこの国でもっとも好まれる車種はなんだと思いますか?
なんとトラックだそうです。日本ではそれほど多く見るものではないですが、アメリカでは郊外だけでなくニューヨークの街中でもかっこいいピックアップトラックが走っているのをよく見かけます。
またこの国で好まれる車の色は、やはり「白」だそうです。続いて黒、グレー、シルバー、青と続きます。
アメリカではどの州が自家用車が多い?
全米で自動車所有率のもっとも高い州は、州の大部分が山岳地帯のアイダホ、そして同じく内陸の州で山岳地域にあるワイオミングとのこと。これらの州では96.2%の世帯が少なくとも1台の自動車を所有しているそうです。
特にワイオミングは「3台以上の車」を所有している人が多い州で、次いでアイダホ州、ユタ州と続きます。
また都市別だと、フロリダ州パナマシティの都市圏も全米でもっとも高い自動車所有率と言われています(数字やデータはすべて2022年当時)。
車所有率が低い州はどこ?
一方、全米でもっとも車の所有率が低い場所は首都ワシントンD.C.で、所有世帯は全体の64.3%とのこと(それでも所有率は半数を上回っているのですが)。ほかにデラウェア、ニューヨーク、ニュージャージー、アリゾナ、マサチューセッツなども所有率が低い州です。
都市別で見ていくと、トライステートエリアと呼ばれる地域、つまりニューヨーク市と隣のニュージャージー州内の都市圏が挙げられます。
筆者が住むニューヨーク市は全米でもっとも公共交通機関やライドシェアリング・サービスが発達している都市の一つですから、それも納得です。この街では車がなくとも生活をする上で事欠くことは何一つありません。例えば地下鉄、バス、列車、フェリーなどの公共交通機関に加え、イエローキャブ(タクシー)そしてUber、Lyft、 Viaなどのライドシェアリング、Citibikeのシェアリング自転車などのサービスが充実していて、利用者は必要に応じてそれらの手段を選びます。
例えば地下鉄は24時間運行していますが夜間は本数が減り、また治安の面からタクシーやライドシェアを利用したり、天気の良い日はフェリー移動で旅行気分を味わったり、シェアリング自転車に乗ったり...。日本に住んでいた時は自家用車を所有していた筆者も、ニューヨーク移住後は車を持たない生活になりましたが、何ら困ることはありません。
周りの友人の中には自家用車を所有している人もちらほらいます。彼らは都心ではなく中心地から少し離れた地域のアパートや一軒家に暮らし、地下鉄やバス、タクシーやUber、自家用車の中から必要に応じて使い分けた暮らしをしています。
車所有率を統計で見てみると、ニューヨーク州全体では71%の世帯であるのに対して、公共交通機関がより整備されたニューヨーク市内では45.6%に下がります。71%という数字は一見それほど少なくないように見えますが、車社会のアメリカ全体で考えるともっとも所有率が低い州のうちの一つになります。同様に隣のニュージャージー州のニューアーク(59.7%)やジャージーシティ(62.9%)、ワシントンD.C.(62.7%)、マサチューセッツ州のケンブリッジ(63.2%)やボストン(66.2%)なども全米で見ると車所有率の低い地域と言えます。
ちなみに自家用車を所有していない場合、短期間で車が必要な場合や旅先などのオプションとして、日本と同様にレンタカー/カーシェアリング・サービスを利用するのが一般的です。アメリカでは以下のようなレンタカー会社がしのぎを削っています(一例)。
Zipcar
Truqit
Getaround
Heatz
Getaround
Enterprise
Turo
Dollar
Alamo
Ace
Budget
Avis
Thrifty
Fox
など
「カーリース」も一般的な選択肢のひとつ
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカでは昔から新車を(例えば36ヵ月間など)あらかじめ設定した期間にリースする「カーリース」の選択も一般的です。カーリースのメリットとしては、頭金など初期投資なし(もしくは少額)で新車に乗れることです。筆者の周りでもカーリースをしている友人はちらほらいて、フォーブスによると2020年1月の時点で、車関連の全取引におけるリースが占める割合は3分の1でした。
しかしここ数年でリースの需要が減っているといいます。その理由の一つとして、新車の値段がより手頃になったことや、金利の上昇によりコロナ禍以前よりリース費用が高くなっていることなどが挙げられます。
2023年2月付のフォーブスによると、新車の平均取引価格は4万9388ドル(現在の為替相場で約765万円。以下同)。リースは頭金が3000ドル(約46万5000円)以上、平均リース料は月661ドル(約10万2000円)で、2020年春と比べて33%増加しました。(2022年末時点)。
トレンドのEV最新状況は意外にも…
最後に、近年世界中で注目されている電気自動車(EV)について。アメリカでは2020年以来、EVの新車販売の記録が更新されてきました。しかし23年に販売された新車全体の16.7%を占めるに留まり、ブームが減速しています。EV所有率がもっとも高いのはカリフォルニア州ですが、22年の時点でEVは州内の総登録車両のわずか2.5%ということです。
EVの売れ行きが伸び悩む理由として、充電インフラの設置不足、充電速度や充電時間、走行距離、高価格、修理や保険代金の高さ、リセール価格の暴落などがあります。また大寒波で動けなくなることがありそれらも買い控えや選択する際のハードルになっているようです。
代わりに売れ行きが良いのがガソリン車やトヨタをはじめとする日本製のハイブリッド車で、販売台数が前年割れしたEVと好対照であることが伝えられています。
(市場が許す限り)2030年までに新車販売のすべてをEVにする計画だったドイツのMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)グループも、EV計画を早々に撤回しています。このような流れから、引き続き世界で日本車のプレゼンスが期待できそうです。