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亡くなった親の株、相続に必要な手続きは?名義変更、分け方は?

そなえる 白浜 仁子

亡くなった親の株、相続に必要な手続きは?名義変更、分け方は?

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亡くなった親が株取引をしていた場合は、株式の名義書き換えなど相続の手続きが必要になります。これまで証券会社と取引をしたことがない人は、どうしたらよいのか戸惑ってしまうことでしょう。また、自身が株取引をしている人でも、相続で引き継ぐ手続きは普段とは勝手が違います。ここでは、親から株式を相続する際の方法や手続き、注意点を見ていきましょう。 

株の種類と相続の方法

株式は、誰もが売買できる上場株式と、上場していない非上場の株式があります。非上場株は、親戚や知り合いの会社に出資して株主になっているということが多いでしょう。また、亡くなった人自身が経営者で会社の株を保有しているという場合もあります。

いずれにしても、株式は財産であるため、相続時には預貯金や不動産などの他の資産と合わせて相続の手続きが必要です。上場株式を相続する場合は証券会社に、非上場株式は、株式の発行会社に連絡して手続きを進めます。ここでは、上場株式の相続について見ていきましょう。

株式を相続する場合の手続き

相続手続き
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株式投資をしていたかどうか調査する

相続が起こったら、まずは亡くなった方(親など)の保有財産を調べることから始めます。株式に投資をしていることを聞いたことがあるのなら、どこの証券会社だったか記憶をたどってみましょう。

保有の有無が分からない場合でも、証券会社からのお知らせや、株主総会の招集通知、配当金支払いのお知らせなどの郵便物がないか、また、未使用の株主優待券が残っていないか探してみましょう。

もし分からない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に連絡して調べてもらうこともできます。証券保管振替機構とは、株式を一元管理している機関です。戸籍謄本や本人確認資料などで相続人であることの確認が取れると開示してくれます。

なお、もし未受領の配当金がある場合は、相続人が受け取ることができます。配当金の受領は企業ごとに3年、5年などと期限が設けられているため確認しましょう。未受領配当金があるかどうかは、株主名簿管理人(株主の管理を代行している信託銀行等)に問い合わせます。

株主名簿管理人は、取引のある証券会社に確認するか、「会社四季報」の証券欄で調べることができます。また、東京証券取引所に上場している場合は、webサイト「東証上場会社情報サービス」で検索し、各企業の「基本情報」欄で確認することもできます。

東京証券取引所「東証上場会社情報サービス

では、そもそも相続人になるのはいったい誰でしょうか。次の項目で簡単に整理しましょう。

相続人となるのは誰?法定相続人の優先順位は?

基本的に、遺言書がある場合は、そこに書かれている人が相続人です。遺言書がない場合は、民法で定められている「法定相続人」が相続します。法定相続人となるのは、故人(被相続人)の配偶者と、故人の血族です。配偶者は必ず相続人になります。では、血族の中で相続人になるのは誰でしょうか。次のように優先順位が定められています。

故人に子がいる場合の法定相続人は「配偶者と子」が第1順位です。もし子が亡くなっているという場合は、配偶者と子の子(故人の孫)」となります。該当者がないときは、第2順位の「配偶者と直系尊属」が法定相続人です。

直系尊属である父母が既に亡くなっているのなら、祖父母が法定相続人になります。更に、第2順位に当たる者がない場合は、第3順位「配偶者と兄弟姉妹」が相続人というわけです。同じく、兄弟姉妹が既に亡くなっているときはその子(故人の甥姪)が対象になります。このように、家族の状況によって法定相続人は異なるのです。

なお、第3順位までの該当者がいない場合は「配偶者のみ」が相続します。配偶者とは戸籍上の配偶者でなければならないため、籍は入れずとも長く内縁関係にあったという配偶者は法律上認められません。

また、法定相続分といって、相続人の分割割合も民法で次のように定められています。

相続人の分割割合

ただし、必ずしもその法定相続分通りに分けなければならないという訳ではありません。法定相続分をもとに相続人の間で話し合って決めることができるのです。配偶者がいない場合は、順位の高い人が全ての財産を相続すると覚えておきましょう。

相続の手続きは、相続人が行います。親が亡くなったら、その配偶者や子が第1順位です。相続人となることを証明するための必要書類をそろえて証券会社に出向きます。ここからは、具体的に株式を相続する時の手続きを見ていきましょう。

株式(上場株)の相続の手続き

まずは、親が取引をしていた証券会社に出向きますが、その時の必要書類は、概ね以下のようなものです。

親の戸籍謄本が出生時から必要な理由は、他に婚姻歴があるか、前妻との間に子がいるか、また、婚姻外の子や養子の有無などを時系列で確認して法定相続人を確定するためです。

遺産分割協議書とは、財産の分け方を記した書類で、相続人が話し合って決めます。遺産分割協議書は相続人が同意したことを示す重要な書類のため、全ての相続人の自署と実印の押印が必要です。そのため印鑑証明書も提出します。

なお、遺言書があるときは、遺産分割協議書は必要ありません。遺言書は、自宅などで一人で作成する「自筆証書遺言」と、公証役場で証人の立ち合いのもと手続きをする「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言は、自宅などで簡単に作成できますが、家庭裁判所で検認(確認)をうけたものでなければ手続きが進められないので注意が必要です(自筆証書遺言書保管制度を利用する場合を除く)。

証券会社は、相続人や分割方法が確認できると、それに沿って手続きを進め、株式の名義を相続人に書き換えます。

なお、株式を相続する際、相続人は、自分名義の証券口座を持っていなければなりません。他の証券会社の口座で相続することはできないため、親が取引していた証券会社に口座がない場合は開設をします。

相続人が複数いる場合の株式分割方法

株式は資産としての価値のほか、株主総会で経営に対して意見できる議決権を持ちます。中には、なんらかの理由で、一人の相続人が議決権を多く持っておくために株式全てを相続したいというケースがあるかも知れません。そんな時、もし財産が株式しかなかった場合はどうしたらよいでしょうか。実は、遺産を分割する方法は、いくつかあります。以下で、株式を相続する場合の選択肢を見ていきましょう。

現物分割

最もシンプルなのは、現物分割です。相続財産として、A社の株式5000株があったとします。配偶者と子1人で半分ずつ相続するなら、2500株ずつ分けることになるでしょう。複数社の株式がある場合は、A社株は配偶者、B社株は子という分け方もあります。

代償分割

代償分割は、一人で全ての株式を相続するなどの場合で検討される方法です。例えば、長男と次男の2人が相続人で、長男が全ての株式を相続するケースです。長男がすべての株式(1000万円相当)を相続するとしましょう。次男は何ももらえません。そういった場合には、長男は、自身の預貯金等から500万円の現金を準備して次男に渡すことによって、結果として平等に親の財産を相続することができます。

この方法を代償分割といい、次男に渡した500万円は代償金です。代償分割をする場合は、遺産分割協議書にその旨を記載します。そうすることによって、平等に相続したことを残せるほか、長男から次男に渡した資金が贈与ではなく代償金であることが明確にできます。贈与とみなされると贈与税の申告などにも影響してしまいます。

換価分割

株式を売却し現金に換えて分割する方法です。実家などの不動産が代表的な例として挙げられますが、分割が難しいものは換価分割が選択肢になります。例えば、相続する株式がA社、B社、C社と複数銘柄あり価値に大きな乖離がある場合は、売却した資金を分割すると分けやすくなります。

故人の株式を相続する際の注意点 

資産の振り分け
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親の株式を相続する際には、いくつかの注意点があります。まず知っておきたいのは、「相続を知った時から〇カ月以内」というように、手続きに期限が設けられていることです。主なものを見ていきましょう。

手続き期限が3カ月以内

相続を知ってから3カ月以内にできる手続きは、「相続放棄」と「限定承認」です。限定承認というのは、相続財産の中に負債(借金)がある場合に、財産の範囲内で負債を相続することの意思表示をするものです。相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産となる借金や連帯保証人としての立場も相続することになります。親の借金がどのくらいあるか分からない場合に手続きしておくと安心です。

手続き期限が4カ月以内

4カ月以内に手続きが必要なのは、「順確定申告」です。確定申告は、通常1~12月までの所得を翌年に申告するものですが、相続が起こった時には、故人の所得について4カ月以内に申告する必要があります。年金や家賃収入、株式の売買や配当金の受け取りなどが挙げられます。

手続き期限が10カ月以内

10カ月以内にしなければならないのが、「相続税の申告」です。基礎控除という相続時に差し引ける控除等があり、それを超える場合に申告が必要です。基礎控除は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。相続税の納付は現金の一括払いが原則で、期限が過ぎると、延滞税や加算税、悪質な場合は重加算税の対象となるため気を付けましょう。

相続した株式は売るべきか保有すべきか?

株式を相続した場合、売却の時期をどうするかは誰しも考えることでしょう。

当然に相続後は、自身の資産ですので自由に売買が可能です。売却時に利益が出ている場合は、譲渡所得として20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金が課せられます。

利益は、「売却価格-取得価格-売却手数料」で計算されます。取得価格とは、相続で引き継いだ時の株価ではなく、親が株式を購入した時の価格です。もし、購入時の価格がいくらか分からない場合は、売却価格の5%を取得費とみなします。

そこで、相続税を払うことになった相続人なら、こんな風に思う人もいるのではないでしょうか。「株式を相続する時に相続税を払ったのに、売却時も税金を納めるなんて、負担が大きすぎる」と。このように短期間で同じ資産に2回も税金がかかるケースもあるため、相続から3年10カ月以内に株式を売却する場合は、相続税の一部を取得費とすることができるという取得費加算の特例が設けられています。気になる人は税理士などの専門家に聞くなどして調べてみましょう。

まとめ

ここまで、親の株式を相続する時の手続きや注意点について見てきました。
ポイントをまとめます。

親から引き継いだ株式を大切に持っている相続人や、大事な節目に使わせてもらうという相続人にお会いする機会がしばしばあります。株式という特徴的な資産ですので、なぜこの株を買ったのか、理由を想像すると亡き親の人柄が見え隠れして思いを馳せることもあるようです。この記事が少しでもお役に立てましたら幸いです。

株式の相続に関するQ&A

Q:父がずいぶん昔に購入したタンス株があります。相続処理は必要でしょうか。

A:タンス株は、株主名簿管理人となる信託銀行の特別口座で管理されています。問い合わせて相続の手続きをしましょう。

Q:父の遺産は誰が相続できますか?兄弟は弟がいます。

A:法定相続人は子となるため、あなたと弟が相続します。配偶者である母が存命なら母も相続人です。