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若い人はペアローンでの住宅購入が増えている!?メリットとリスクは

かりる 内山 貴博

若い人はペアローンでの住宅購入が増えている!?メリットとリスクは

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以前は「妻が家計を管理し、夫はお小遣い制」という夫婦が多かった印象がありますが、現在は「夫と妻、それぞれが正社員として働き、財布も別々」というケースが増えているように感じています。住宅も同様で、夫、妻それぞれがローン契約者になるペアローンを選ぶ割合も高まっています。今回はそのペアローンについて、仕組みや注意点などを1つ1つ紹介します。

ペアローンの仕組み

ペアローンとは1つの物件に対して、夫婦や同居している親子など、それぞれが主たる債務者として住宅ローンを組むことです。一般的にお互いが連帯保証人という位置づけになります。

ペアローンは20~30代夫婦の利用率が多い

三井住友トラスト・資産のミライ研究所の「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)によると20代と30代の約2割がペアローンを利用して住宅ローンを組んでいるようです。

ペアローンで購入した場合、住宅は夫婦の共有財産となります。共働きで夫と妻、それぞれ経済力があることはもちろん、夫婦の在り方や価値観など様々な要素があり近年、ペアローンを検討する人が増えているようです。

資材・人件費が高騰…ペアローンが増えている理由

ペアローンが増えている
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現在、様々な物価が高騰していますが住宅も例外ではありません。資材価格や人件費の高騰などもあり住宅の価格は上昇しています。そうなると「家を買いたいけど買えない」、「ローンを組みたいけど希望額を借りることができない」というケースも増えることになります。これは当然、住宅購入希望者のみならず金融機関側にとっても痛手となります。

よって、ペアローンであれば夫婦の収入を合算することになり、住宅の購入額が高くなってもローン審査に通りやすくなるわけです。こういった事情もあり、金融機関側から見ても今の時代のニーズにあった商品だといえます。

ペアローンを組む3つのメリット

夫または妻のどちらかが単独で借りることと比べ、ペアローンはどのようなメリットがあるでしょうか?

住宅ローンは借りたい金額をいくらでも借りられるわけではありません。年収や金融資産の状況等に応じて借入可能額が決まります。よって、単独の場合に比べ、夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となるため、それぞれの収入から借入可能額を算出することになり、より多くの借入が可能となります。

借入金額を増やすことができるということは、つまり、購入できる物件の選択肢が増えることになります。仮に夫だけで住宅ローンを組む場合は諦めなければならなかった新築戸建や人気エリアの高級マンションも候補となるかもしれません。

そして、住宅ローン減税は夫婦どちらにも適用されます。減税対象の残高には上限があるため、1人であれば減税対象外になる借入部分も、2人でローンを組むことで減税対象になる場合もあり、効率的です。

例えば2024年に一般の中古物件を購入した場合、減税のローン上限は2000万円となります。減税率は0.7%であるため、仮に3000万円や4000万円の借入を行っても、2000万円の0.7%にあたる14万円分の減税効果しかありません。それが夫2000万円、妻2000万円というようなペアローンの場合、夫婦どちらも減税措置を受けることができるため、世帯で見た場合の減税効果が非常に大きくなります。

また、団体信用生命保険(通称「団信」)もそれぞれのローンに適用できます。団信は住宅ローンの契約者が死亡した場合、残高を清算するための生命保険です。通常、ローン契約時に加入しており、保険料は金利の中に含まれています。ローン契約後は「残高分の生命保険に加入している」ことと同じことになり、万が一の場合、遺族はローン残高を払う必要がないのです。

ペアローンの場合、仮に夫が死亡すると、団信のおかげで夫のローン残高を妻が代わりに払い続ける必要はありません。ペアローンを組んだ後、その点を考慮し、夫婦それぞれの生命保険の既契約を見直し、保険の解約や保障の減額を行えば家計にとってプラスとなります。
ただし、団信については状況次第ではデメリットとなる場合もあります。以下で詳しく見ていきましょう。

ペアローンを組むデメリット3つ

夫婦それぞれが住宅ローンを組むことになることのデメリットは以下が考えられます。

ペアローンの場合、夫婦それぞれがローン契約を行うことになるため、1本のローン契約と比べると収入印紙代や登記手数料といった手数料が2本分生じるため、初期費用が高くなるのがデメリットの1つです。

現在、ネット銀行の住宅ローンは金利が低いということで大変人気ですが、ネット銀行の場合、融資事務手数料を「借入金額に対して2.20%(税込)」としているところが多く、このように手数料が“率”の場合は単独ローンでもペアローンでも変わりはありません。ただし、「融資事務手数料3万3000円」などローン1本に対して手数料がかかる場合は単純に2倍の費用がかかります。

そして夫婦それぞれが一定の収入を得ながら長期的に返済していくことを前提としているため、病気・出産・失業・倒産などによって働けなくなった場合などはローン返済が難しくなることも考えられます。

先に紹介しましたように20代・30代の夫婦でのペアローン利用が増えています。今後、子供が生まれる可能性も高い世代です。「子供はもうけない」、「子供は1人」と考えていても、その通りにはならないことも考えられます。「2人がフルで働く」ことを前提にしていると返済が厳しくなる局面も考えられます。

契約者の収入が途切れると返済が難しくなるのは、ペアローンに限ったことではありません。しかし、単独でのローンに比べ様々なシナリオが考えられます。事前に入念なライフプランや今後の転職、独立の可能性といったキャリアプランを話し合っておくとよいでしょう。

また、団信についてはそれぞれに適用されるということでメリットとして紹介しました。しかし、仮に夫が亡くなった場合、ペアローンではなく夫のみが住宅ローンの契約者であれば、ローン残高がなくなりますが、ペアローンであれば妻の分は当然残ったままとなります。大切なパートナーを失い大変な状況の中、自分の分のローンを返済しなければならないのです。団信についてはメリット・デメリットどちらの側面も持ち合わせているといえるでしょう。

離婚した場合はどうなる?単独ローンとの違い

険悪な雰囲気のカップル
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ペアローンの場合、購入した住宅は夫婦共有の財産であるため、やはり離婚した場合が単独ローンに比べると面倒なことになることが想定されます。住宅ローンは契約者が居住することが前提になっているため、離婚後、一方が家から出ていくとなった場合、契約の見直しが必要となります。離婚に伴う手続きは何かと大変だと言われていますが、さらにやるべきことが増えることになります。

また細かい点ではありますが火災保険は1つの契約に対して被保険者が夫と妻の両名となるのが一般的です。保険金が支払われる際はどちらかの銀行口座に振り込まれることになるため、もう一方が承諾書を提出するといった手続きも必要となり、単独ローンで火災保険に入る場合と異なり、少し手間となります。

連帯債務や連帯保証との違い

ペアローン以外にも夫婦の場合は「連帯債務」や「連帯保証」といった形態で住宅ローンを組むことがあります。

「連帯債務」とは1つの住宅ローンを2人で協力して一緒に返済していく形態です。住宅ローンは1本であるため、夫または妻がローン契約の主体者となりますが、実態は夫婦それぞれで返済するといった具合です。ローンが1本であるため、例えば夫と妻=7:3というようにそれぞれの割合に応じて返済をしていくことになります。収入額などでその割合を決めることになります。

夫婦それぞれの残高を把握できることもあり、夫婦どちらも住宅ローン控除を利用することができます。そして通常、団体信用生命保険は主たる契約者のみということになるため、夫が契約者の場合で妻が死亡すると、残高は全額残ることになります。この点はペアローンとの大きな違いとなります。

「連帯保証」というケースもありますが、住宅ローンは通常、保証人は不要です。保証料を払い、保証会社を通して住宅ローン契約を行うためです。そんな中、連帯保証にするのは「夫のみの収入では希望借入額に達しない」といったケースです。妻が連帯保証人になることで夫婦2人の収入合算で借入を行うことができるため、借入額を増やすことができます。

この場合、あくまで妻は「2番手として控えている」状況であるため、妻は住宅ローン控除や団信の対象にはなりません。

まとめると以下のようになります。

筆者作成

※連帯債務・連帯保証の契約者は夫とします。
(注)フラット35のペア連生団信加入の場合等を除く

まとめ~ペアローンは今の夫婦のカタチにピッタリ!?~

ペアローンの特徴をまとめると以下のようになります。

日本は民法で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」とあり、いわゆる「夫婦別姓」を認めていません。これは世界に目を向けると日本だけのようです。夫婦別姓について様々な調査が行われていますが、若い人ほど賛成の割合が高く、多くの20代や30代は夫婦別姓を望んでいるということです。

このように現在は夫婦の在り方は大きく変わってきており、そういう点ではペアローンは今後ますます利用される可能性が高いと思います。ペアローンの注意点などを踏まえ、住宅購入の際には1つの方法として検討してください。

ただ、ローンは別々でも夫婦2人、そして家族が一緒に楽しく生活できる住宅であることが一番ですね。

ペアローンに関するQ&A

Q:夫婦連生団信付住宅ローンというのを見つけました。どのような住宅ローンでしょうか?

A:連帯債務の住宅ローンの場合、団体信用生命保険は夫または妻のどちらか一方となりますが、「夫婦連生団信」が付くことによって、夫婦どちらが亡くなっても住宅ローン残高が0円になるというものです。

Q:ペアローンを組む場合、夫と妻は5:5の割合にしなければならないのですか?

A:割合は5:5ではなく、その他の比率でも構いません。夫と妻の収入や今後の働き方などを踏まえ、例えば夫が7割、妻が3割負担するという形でも大丈夫です。